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報道少ない人類へ貢献する事柄に一定の関心を

 「極度の貧困で生活する人は、この200年間で世界人口の90%から10%に減った」という事実がある。貧困が少なくなったのは事実なのに、なぜか報道されることはめったにない。「社会が進歩したのだから、貧困が減るのは当然」というのが報道する側の論理だと米国の進化心理学者は指摘する(『コロナ後の世界』文春新書/近刊)。

 メディアは「最悪」を選んで報道するとも彼は言う。「平和に暮らしている地域はニュースにならない」とも言うが、指摘されてみればその通りだ。

 「平和な光景」は退屈だ。むしろ「悲惨な光景」に関心を持ってしまうのが人間だ。その点では、報道する側も報道に接する側も共通だ。幸福は味わえばいいので、強い関心を持つ必要はないということのようだ。

 事故による死者も大幅に減っている。だが、それも「当たり前」とされる。科学が進歩するのだから「安全」になるのは自明のこと、で終わってしまう。

 こうした傾向をこの心理学者は「ニヒリズム」と呼ぶ。メディアのニヒリズムは、米国も日本も、世界全体も同じようだ。それはそれで、人間の本性を物語るのだろう。

 半面、貧困の克服、安全対策による事故の減少、加えて医学の進歩といった事柄が人類に恩恵をもたらしていることも事実だ。報道される悲惨事を無視してはいけないのと同じ程度に、報道されることが少ない人類への貢献に対しても一定の関心は必要だ。

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