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「金亀子(こがねむし)擲(なげう)つ闇の深さかな」(高浜虚子)

 「金亀子(こがねむし)擲(なげう)つ闇の深さかな」(高浜虚子)。雨の夜、隣の部屋から何か物を投げるような鈍い音がした。テレビの音かと思ったが、それにしてはかなり高い。

 見に行くと、蛍光灯の周りをコガネムシが飛び回っていた。壁にぶつかっては落ちる音だった。気流子が上京してから数十年もたつのに、コガネムシが部屋に飛び込んできたのは初めてだった。

 子供時代は、昆虫採集が好きだったので懐かしくなった。捕まえて窓から外に出したが、その時に上記の有名な俳句を思い出した。虚子は花鳥諷詠(ふうえい)を旨としたが、こうした句を読むと、自然を超えた象徴的な世界を感じさせる。

 花鳥諷詠は、自然を詠む伝統的な花鳥風月と似ていても、同じではないらしい。詳細について虚子はほとんど語っていないので、実作を見よということかもしれない。

 コガネムシの連想で、故郷のことがふと気になり、ユーチューブで地名を検索してみた。地方都市なので、発信はそれほどないだろうと思ったが、それが裏切られるほど多いのに驚いた。しかし、一部を除いてカウント数が少ないのが気になった。有名な観光地ではないことや、ありふれた自然の風景を紹介していることなどが原因かもしれない。

 そういえば、野口雨情作詞の童謡「黄金虫」はよく知られているが、このコガネムシは実はゴキブリを指すという話がある。雨情の故郷ではゴキブリをコガネムシと呼ぶそうだが、真相は分からない。

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