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天佑(てんゆう)か――思わずつぶやいた…

 天佑(てんゆう)か――思わずつぶやいた。東京の西、武蔵野の住まいから窓外の雪模様を眺めた日曜日の午後である。天のたすけの意である「天佑」は吉川英治の『宮本武蔵』の巌流島の決闘のあと、武蔵と小次郎の勝敗を著者が語る件(くだり)で出てくる。「技か。天佑か。」と。

 新型コロナウイルスの拡大阻止のため、週末は花見や繁華街などへの外出自粛要請が出ている。メディアなどで感染症の専門医が、この病気の怖さを語り、慎重な行動を訴えていた。

 新型コロナは8割の人が軽症で済む。感染しても自覚症状がない人もいるからコワいのだ。そういう人がウイルスをまき散らして感染を一気に拡大させるからだ。すさまじい感染力を持ち、重態化する人は数時間のうちに酸素吸入、人工呼吸器を必要とするただならぬ事態に陥る。

 東京都は週末を前に、上野公園や井の頭公園など桜の名所を封印した。「桜は来年も咲く。来年は皆様を歓迎します」。封印が無理な目黒川沿いは、目黒区長がネットで懇々と説いて外出控えを求めた。

 それでも構わず桜見物をする人は、ここに集中するのを止められない。そうした懸念を季節外れの雪が消したのだ。今年の東京の桜開花は1953年からの観測史上最も早い14日。ホワイトデーの都心の午後2時は2・5度と真冬並みの寒さで、雪やみぞれが降る中、前日までの暖かさによる開花となった。雪と桜と新型コロナ。<さまざまの 事おもひだす 桜かな> 芭蕉。

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