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「湖の空ある限り鰯雲」(戸田静子)。この…

 「湖の空ある限り鰯雲」(戸田静子)。このところ台風が次々にやって来るという印象を受けるが、台風一過の空を見上げた時、鱗(うろこ)のように広がる雲の群れを見掛けた。「鰯雲(いわしぐも)」あるいは「鯖雲(さばぐも)」「鱗雲」とも呼ばれている。

 青空は、どこか海の広がる風景と似ているので、そこに浮かぶ雲から魚を連想することは不思議ではない。稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』には「昔からこの雲が現れると鰯の大漁があるというので鰯雲といった」と書かれている。

 その意味では、漁とも関わりがあるのだろうか。科学的な根拠があるかどうかは分からないが、死と隣り合わせの仕事だった漁師は、イワシの大漁が特別な気象現象と結び付いていると思えたのかも。

 鰯雲の出る気温や気象の変化とイワシの群れの移動とが関わっている可能性もある。いずれにしても、鰯雲を見ると久しぶりに空を見上げた気がした。それほど都会生活の中では、空をじっくりと見ることがない。

 「雲は天才である」という名の小説を書いたのは、歌人の石川啄木。このタイトルについては、解釈がいろいろあるが、雲に何を仮託したのかははっきりしていない。ただ、時代の空気や環境に縛られていた啄木の精神が、雲のような自由を欲していたのかもしれない。

 雲には地上にある地形の変化や国境線も関係ない。青空の中で、魚の群れのように自由気ままに見える。そういえば、もうすぐ食欲の秋でもある。

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