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作家の島田雅彦氏(1961年生)は、現代…

 作家の島田雅彦氏(1961年生)は、現代文学の重要な担い手の一人だ。氏がこのほど、自伝的小説を刊行した。題して『君が異端だった頃』(集英社/8月刊)。「君」と呼ばれる作中人物が作者本人だ。

 小説だからフィクションが含まれるのは当然だが、氏の経歴と符合するところが多い。文壇への登場、人気作家村上春樹氏との距離の取り方。これは、作家としてやっていくための戦略としてもポイントだ。

 島田氏を世に出す上で大きな役割を果たした名編集者の寺田博氏、村上氏とは別な意味で無視できない先輩作家の中上健次氏(故人)、柄谷行人、三浦雅士両氏ら批評家たちとの交流も描かれる。

 中でも興味深いのは芥川賞の一件だ。島田氏は芥川賞6回落選の記録を持つ。この本で明らかにされた話。落選が続いた当時、選考委員だった安岡章太郎、開高健の両氏(共に故人)が、島田氏を含む何人かの作家らの授賞に強く反対し続け、それが選考の流れをつくっていたという話が書かれている。

 安岡氏の体調不良、それに伴う鬱屈(うっくつ)、開高氏の安岡氏への追随が原因だったという。何十年もたった段階での記述だから、恨みがましさは全くないが、文学史の一つのエピソードには違いない。

 島田氏は現在、芥川賞選考委員を務めている。同賞を受賞して花開く作家もいる半面、低迷が続くケースも多い。中には消えてしまった作家もいる。受賞しないで活躍する作家は、島田氏以外にも数多い。

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