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世界に広がる 中国の都市監視システム

yamada

 

 中国・新疆ウイグル自治区や香港にあふれる監視カメラ。そんなAI都市監視システムが、中国からどんどん輸出されている。強権政治拡大につながるとの懸念も増している。

 英調査会社コンパリテックの昨年夏の報告では、世界の150の大都市に設置されている公的CCTV(閉回路テレビ)監視カメラは、中国製とその他を合わせ約7億7000万台に達した。うち約4億2000万台が中国国内。人口1000人当たりの台数で上位10市のうち3位のロンドン(67台)以外はみな中国だ(東京は1・06台で最少クラス)。今年末には世界で10億台を超えると見られている。

 それはカメラだけでなく、顔や自動車番号の認証その他の監視から情報の分析・管理までのシステム。ファーウェイ(華為)社はそれを「安全城市」プログラムとして各国に広げてきた。

 同社の18年年次報告は、100以上の国・地域(15年報告の3倍)の700以上の都市にシステムを入れたと謳(うた)っている。米NGOフリーダムハウスは18年の段階で18カ国、豪戦略政策研究所は19年4月に43カ国、米戦略国際研究所(CSIS)は19年11月に52カ国と報告している。数字は様々だが、導入国が加速度的に増えてきたことがわかる。

 例えばフィリピンは18年の習近平・中国国家主席来訪時に、約4億㌦の借款でカメラ1万2000台の公安システムを導入する協定に調印した。19年に中央アジアのウズベキスタンが結んだ交通監視の契約は10億㌦。パキスタンでは約1億㌦で8都市に導入されたが、パンジャブ州の監視装置に、外部接続可能のWiFiカードが事前説明なしに取りつけられていたこともあった。

 アフリカのウガンダ警察は、19年に1億2600万㌦で顔認証カメラを購入したが、ファーウェイは大統領・国会選挙前に、野党やデモへの弾圧に支援協力したと批判されている。

 国や都市は、主に治安維持、交通安全対策として導入するが、中国にとって中国型の社会・政治統制モデルを広げる意味は大きい。

 CSISによれば、「安全城市」導入国の内訳は、「自由な国」が29%、「部分的に自由な国」が44%、「自由でない国」が27%となっている。「自由」と「自由でない」の間にいて、どちらの方に近づくかわからない「部分的」グループこそ、中国の重要なねらい目だろう。

 今特に気になるのは旧ソ連・東欧共産主義圏諸国だ。冷戦終結後30年、多くの国で民主主義が後退している。フリーダムハウスの昨年の報告は、その一要因が中国で、監視システムと科学技術を通じての反民主的影響力拡大が著しいと指摘している。「一帯一路」計画沿いの地帯で中国が力を入れ、全29カ国中10カ国が「安全城市」を導入した。セルビアなどは、警察将校が中国式「テロリスト無力化方法」を学ぶため、中国との合同訓練までしている。

 導入国の一部では、中国による情報利用を懸念する声も出た。当局側は「運用にあたるのは全て我が国民だから」と答える。だがパンジャブの様な例もある。何しろ中国の企業も個人も、国の情報活動への協力を義務付けられているのだ。

 トランプ米政権の強硬な制裁で傷を負ったファーウェイだが、デジタル監視システムでは断トツだし、一度それを導入した側はコスト的にも変換は難しい。「安全城市」輸出は安全でゆるがない。

 だがその導入後も犯罪は減らず、権力者の安全=政治的市民監視、強権化だけ進む―そんな国が少なくない。民主主義陣営は別の分野の援助協力で、「ストップ強権国家増大」に努めるべきだろう。

(元嘉悦大学教授)

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