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世界のメディアの自由低落、中国の影響力拡大に要警戒

yamada

 

 今月15日~21日は新聞週間だった。長年新聞で生きてきたので特にこの時期、メディアの現状や報道の自由の問題などが気にかかる。

 NGO[国境なき記者団]によると、今年、今月25日現在でジャーナリスト、取材協力者など39人が殺され、392人が投獄されている。殺害の最多は麻薬・犯罪組織が怖いメキシコで10人。投獄の最多は中国の120人。断トツだ。

 その中国が世界でのメディア影響力拡大に力を注いでいる。NGO「フリーダムハウス」は先ごろ「自由とメディア」最新報告をまとめ、「世界のメディアの自由は過去10年来下降し続け、危機的状況」と強調したが、特に報告の中の小論で、中国の影響に強い警鐘を鳴らしている。

 それによると、習近平・国家主席は16年、国営メディアに「読者、視聴者がいる所はどこでも、宣伝報道の触手を伸ばすよう」命じた。中国の主張を広げ、中国批判を抑え、情報配信を管理する戦略で、次の通り多様な戦術を実行している。

 ・(国営メディア配信拡大)中国中央テレビ(CCTV)は1700もの外国報道機関に無料コンテンツを配信、新華社通信などと合わせ、国営メディア配信は海外の数億人に届けられている。

 ・(記事広告)・国営英字紙チャイナデイリーの増補「チャイナウォッチ」は、ワシントンポストや毎日新聞など30か国の有力紙に、広告らしくない別刷りで掲載されている。

 ・(中国IT企業のメッセンジャーアプリ「ウィーチャット」)今や中国外の1億~2億人が利用。中国政府基準に沿い、その通信へのチェックが強まっている。

 ・(海外中国語メディアの支配)20年前は、独立系紙や香港や台湾の放送が優勢だったが、圧力や買収もあり、中国国営や親中メディアが支配的になった。

 ・(メディアの選挙干渉)まだ限定的だが、昨年末の台湾地方選挙、米中間選挙の前などに見られた。台湾では反民進党政権フェイクニュースがSNSで広められ、影響を与えた。

 ・(アフリカのテレビ視聴に大影響)ケニア、ナイジェリア初め多くの国のテレビのデジタル化を支援した中国のテレビ配信企業は、アクセス可能放送の選択で、中国放送を優先させた。

 ・(中国批判メディアへの広告妨害)以前ニューヨークタイムズの株価を一夜で20%も下落させた。最近、香港の蘋果日報も広告主への中国からの圧力で、巨額の不動産広告や英投資銀行の広告を失った。特定メディアへのサイバー攻撃も行われている。

 ・(氣功集団「法輪功」放送関連事件)タイ警察は最近中国の要求に応じ、米国に本拠をおく「希望の声」放送を中国内に流した台湾人協力者を拘束。同様事件はインドネシア、ベトナムでもあった。

 ・(中国外交官の圧力)今年、スウェーデン、ロシア駐在外交官らが、中国批判や台湾支持の報道をした記者たちを脅した。

 ・(代理人活用)親中国で利害関係を持つ有力外国人に代弁させる。シュレーダー元独首相は昨年、インタビューで「ウイグル人強制収容所などゴシップ」と断言した。

 小論はこうした戦術例を20以上もあげ、①各国が中国の影響について情報を公開②中国外交官らの報道不当介入に厳しく対処③ウィーチャットの検閲や監視の状況を調査④海外の独立的中国語メディアを支援――するよう勧告している。米プロバスケットボールNBAチーム責任者のツイートもティファニーの広告も、中国内からの猛非難で謝罪や削除に追い込まれた。中国の影響拡大、世界のメディアの自由の低下に、ブレーキがかけられるだろうか。

(元嘉悦大学教授)

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