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国民との近い距離 新天皇・皇后両陛下へのご期待

yamada

 

 令和初日。私も新天皇・皇后両陛下へのご期待の気持ちを記したい。アジアの代表的王国、今週末に新国王の戴冠式を挙行するタイと15年前に現国王が即位したカンボジアを引き合いにして論じたい。

 平成の天皇・皇后両陛下について最も印象的だったのは、2011年の東日本大震災を初め相次いだ災害の現地を訪れ、被災者と同じ目線で慰め励ましておられた姿だろう。大震災の時は7週連続で被災地と避難所を巡り、被災者と国民全体を勇気づけられた。

 加えて、①01年に新大久保駅で線路に転落した乗客を救おうとして死亡した韓国人青年の両親に、繰り返し御礼や労(いたわ)りの言葉をかけられたこと、②05年、サイパン島のバンザイクリフ(第2次大戦中、多数の日本兵、民間人が断崖から飛び降りて自決した)で、海に向かい深々と黙礼された後ろ姿、③17年、ベトナムご訪問中、大戦時の残留日本兵の家族と懇談され、93歳の元妻を優しくねぎらわれた場面――なども私たちの心に温かく焼き付いた。

 実際、両陛下はかつてないほど多くの地を訪れ、民衆に寄り添われた。その点、タイのプミポン前国王もカンボジアのシアヌーク前国王も同様だった。プミポン前国王は、国内の貧困地域を主対象に農業、保健など3000もの王室プログラムを実施し、その推進のため野戦服やラフな姿で辺境や山奥まで歩き回り、住民と接した。2女のシリントーン王女もよく同行したから父娘の人気は絶大だった。

 シアヌーク前国王は、内戦やポル・ポト暗黒革命を含む激動の中、呼称も国王、殿下、議長などと変わったが、農民を愛し農民から愛され続けた。ポル・ポト時代、王宮に軟禁された殿下の回想録によれば、ごく稀(まれ)に車での地方旅行に連れ出された時、路上で車の殿下に気付いた農婦が「殿下様だ、殿下様だ」と後を追って走ったり、大声で喜びを爆発させたりした。それだけで彼女らは処刑される恐れがあったのに。

 プミポン前国王が亡くなりワチラロンコン新国王が即位して2年半。新国王は軍事政権の用意した新憲法案を修正させ、王権を強化した。王が摂政を置かずに長期間外国(ドイツにある邸宅)に居住できるようにし、前国王の傍で権限を膨らませた枢密院を抑え、王室資産を増やし、姉のウボンラット王女がタクシン元首相派の政党の次期首相候補に推されると、断固阻んだ。

 シアヌーク前国王から王位を譲られた息子のシハモニ現国王は、元舞踊家で権力や政治に執着せず、フン・セン首相は安心して強権政治を強めている。こうして対照的な両国王だが、どちらも民衆との距離は前国王時代より遠くなってしまった。

 そこで新天皇・皇后両陛下にご期待したいのは、前天皇・皇后ご夫妻の国民、特に苦境に置かれた人々との交流の絆を、できる限り継いでいただくことだ。

 個人的な話で恐縮だが、35年前、パリ駐在記者の私は、英国留学中に欧州を回られた浩宮さま(新天皇)に、パリ郊外の名勝地でお目にかかった。他の記者はおらず、厚かましくも、同伴した当時中学生の娘とのツーショット写真まで撮らせていただいた。

 そのフィルムを仕事の写真と一緒に東京本社に送ってしまい、紛失。娘から今も文句を言われている。それほど国民には重大な思い出となる。

 まして苦境の人々には。SNS時代でネット活用も重要になるが、直接交流が最重要なのは変わらない。

 両陛下、特に皇后陛下のご体調に十分配慮された上で、可能な限りで内外の民衆に会い、感動を広げ続けていただきたいと思うのだ。

(元嘉悦大学教授)

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