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居住可能性と生命存在可能性との大きな違い

廣井3

 最近の惑星科学での傾向として、従来通りの、我々の太陽系内の惑星を研究する惑星科学者たちと、他の恒星系にある惑星(系外惑星)を観測・研究している天文学者たちとが共同して、地球のような居住可能な惑星を探していることである。一般の人々も、そのような惑星があれば生命を宿しているのではないかと期待して、税金などを通して支援したいと思う傾向があり、それを科学者たちが利用している感が否めない。

 しかしながら、よく知られていない大きな落とし穴がこの仕組みに潜んでいる。それはまず、「居住可能」(Habitable)という言葉の意味に問題がある。現在の大多数の天文学者がHabitableというときには、基本的に水が液体として存在できるような温度範囲だけを指して言っているのである。我々に知られている生命には液体の水が不可欠だからである。

 ところが、科学者ならば誰でもその不十分さは良く知っている。水が液体であるかどうかは圧力にも関係し、その惑星上に重力が十分あって大気があり、地表温度がある範囲に保たれていなければ、そこに液体の水は存在できない。この時点で、天文観測による証拠は不十分となって破綻している。何故なら、大気の存在がまだ確かではなく、地表の液体の水の存在はもっと未知であることが大部分であるからだ。

 私の所属するブラウン大学の惑星地質や物理天文のセミナーで、2件ほどこれに関するセミナーがあったが、大気中に水の吸収が初めて見えたかもしれないという段階である。それだけでは、大気全体の組成が生命に適するかどうか、圧力がどうであるか、地表に液体の水があるか、など、何も分からない。もちろん、様々なモデル計算をして推測することはできるであろうが。

 そして最も大きな問題は、水が液体として存在できるような環境を四苦八苦して見つけたとしても、一般の人々にとって居住可能という環境からはほど遠いことである。空気と水の存在は言うまでもなく絶対必要であるが、それだけではそこに住むことはできない。まずは太陽光と放射線環境である。地球は可視領域で透明な大気を持ち、赤外では不透明なので熱を保存する力があり、中心核にある液体の鉄の対流(ダイナモ)のおかげで地磁気があるので太陽からの有害な粒子線(太陽風)から傘でよけるように保護してくれている。それが居住可能条件として絶対必要である。

 この段階で既に天文観測で見つかっているHabitableな惑星は全て失格している可能性が大きい。何故ならば、極端に惑星が大きくて、木星のようなメタンとかのガスを取り込んでしまった大気になっていたり、小さいが中心星に近すぎて放射線環境が強すぎたり、自転と公転が同期してしまって、惑星表面の半分は灼熱地獄で残りの半分は永久凍結していたりする可能性が大きい。そういう問題をあまり強調しないのは、もちろん上記のように科学者たちが一般の人々の支援を受けたいからではないかとさえ思えてしまう。

 さらに、磁場の存在などは、現在では全くモデル計算で何段階も仮説を立てていかなければ分からないような領域にある。地球のように、中心星である太陽から適度に離れた場所にあり、重力が大気を留める程度に十分強いが、原始太陽系星雲のガスを取り込まないように適度に弱く、鉄を適度に含んで放射性熱源を持つがゆえに、中心核にダイナモをもって磁場を生成している惑星を天文観測で見つけるのは、現在はほぼ不可能である。

 それだけではない、地球のようにマントル対流によって大陸移動を起こすプレートテクトニクスがあることによって、地球上の大気や生命環境が現在のように進化できたという研究がある。金星など、他の惑星にはそのような現象は存在しない。6500万年前のK/T境界というイリジウムを含む地層の時代に落ちた巨大隕石が、少しタイミングがずれて別の場所に落ちていたら恐竜たちは絶滅せず、哺乳類や人類の世界にはならなかったという研究もある。

 また、以前にも解説した通り、地球の4分の1という異常に大きな衛星である月の存在が、地球の自転軸の傾きを安定させることによって気候変動を防ぎ、潮汐力によって特に海洋生命の発生・進化に寄与し、地球の自転を遅くすることで地表の風速を制限して地上生命を守り、また知的生命体の科学活動を大いに助けているのである。温度環境だけの居住可能性を超えて、生命存在可能性を言うならば、こういう点も考慮・言及しなくてはならない。

 科学者というのは、一般の人々が好むかどうかにかかわらず真実を伝える使命がある。そして、この系外惑星に関して言えば、人々が居住可能な惑星が見つかることを望んでいると妄信するのは大きな間違いであると思う。地球のような惑星が簡単には見つからない・存在しないとなれば、人々はこの地球をより大切にし、人類の存在が宇宙でここだけかもしれないという特殊な使命感を持ち、世界平和により尽力するかもしれないのだ。私は真実を語る正しい科学者でいたいと思う。

(2017年10月15日記)

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