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日食・月食・恒星食と地球人類存在意義

廣井3

 今週の月曜日8月21日は、久しぶりに全米各地で日食が見られる珍しい日であった。よく知られているように日食は月が太陽を隠す現象で、頻繁に起こってはいるが、今回のように、皆既日食が見られる地点が米国の西海岸から東海岸まで斜めに横切るように動いていくのは珍しく、おかげで非常に多くのアメリカ人がこの現象を観測できた。私の働くブラウン大学はその中心軌道から外れているものの、太陽の約70%が隠れる部分日食が見られた。以下にNASAによるコンピュータアニメーションによる解説がある。(最後に自国の月ミッションであるLROを宣伝しているところがちょっと余計だが)
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2017/the-moon-is-front-and-center-during-a-total-solar-eclipse

 この日食は月食とともに太古の昔から人類に観察されてきた現象だが、これらにはどういう意義があるのだろうか。まず、今回のような皆既日食は、少なくとも太陽系では地球上でしか見られない。なぜなら、地球の月は、それを回る地球の4分の1という異常な大きさを持ち、地球からは太陽とほぼ同じ大きさに見えるからである。火星の2つの月フォボス、ダイモスも、その他外惑星のどの衛星も、あまりにその親惑星と比べて小さく、皆既日食は起こりえない。

 さらに、月は地球から毎年4cm程度離れつつあるので、それを逆算すれば、昔は月はずっと地球の近くにあったはずであり、月ができた原因として現在最も信じられている巨大衝突説によると、形成直後は月は現在の15倍ほどの大きさに見えるような至近距離にいたらしい。ということは、太陽系と地球のほぼ46億年の歴史の中で、地球上で皆既日食が見られるのは現在がほぼ最後の時期であり、それにちょうど間に合って人類が誕生し生存しているということになる。

 天文学が未発達で日食の原因も分かっていない太古の時代には、日食は神秘的現象として、革命がおこったりして、人類文明に大きな影響を与えてきた。ギリシャ時代からの天文学の発展により、日食および月食の場所と時間に基づいて、地球・月・太陽の大きさや位置関係を計算できるようになった。近代においては、一般相対性理論によって光も曲がるという予言を、皆既日食において太陽近傍に見える星群の位置の観測によって証明したり、太陽の大気の分光観測によって、ヘリウム元素の存在を発見したりと、食現象は人類の科学的知識の拡大に大きく貢献してきた。

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8月21日に米国で日食が見られる場所と時間の地図(GreatAmericanEclipse.comより)

 月食は、日食とは逆に、太陽光を地球が隠すためにおこる現象で、月の上にいる人にとっては「日食」になるわけだが、地球が月の4倍の大きさなので、太陽の4倍の大きさに見えるわけで、月の住人にとっては日食は、地球人にとってよりも頻繁に起きる現象である。その際には、地球大気を通してくる太陽光が赤くなり、地球からは橙色の暗い月が見えることになる。科学者がそこにいたならば、地球大気の元素組成を測定することもできるであろう。

 それと同じことを、太陽系以外の恒星の周りにある惑星の大気に対して行おうという試みがなされている。その惑星上の大気に含まれる様々な気体分子が光をいろんな波長で吸収するので、その鋭く数多い吸収帯をもつ惑星からの光が、中心にある恒星からの光と混じりあう割合が時々刻々と変化する現象を多く観測して、数学的に惑星大気の組成を導き出そうというものである。

 また、私の専門分野である小惑星の科学においても、恒星の光を小惑星が隠す掩蔽という現象を使い、地球上の各地で掩蔽の始まりと終わりの時間を正確に測定して、その小惑星の大きさと形を正確に求める手法がある。これは、天文観測と計算で掩蔽現象の時期と場所が予測できれば、非常に単純な測定によって、普通は探査機を送らないと分からないような情報を得られる非常に経済的な手法である。

 以上のように、日食・月食・恒星食など、天体同士の光による相互作用の観測によって、地球に現在いる知的生命体である人類が地球と太陽系と宇宙の仕組みを科学で理解できる絶好の環境とタイミングにある。そのような環境とタイミングが実現された背後には、月形成の時に地球に衝突してきたとされる火星程度の大きさの天体の衝突速度と角度が大きく影響している。

 その、奇跡ともいえる絶妙な正確さで地球・月系が形成され、このような特別な地球と月ができ、科学のできる知的生命体が、皆既日食が起こる最後の時期に出現したのは偶然であろうか? それが偶然ではなく、何者かによって人類は観測者として、または別の特別使命者として、お膳立てされた場所と時間に置かれたのだと考えるのが、人間原理やID(インテリジェント・デザイン)理論的な考え方である。

(2017年8月24日記)

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