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はやぶさ2ミッション前半達成と今後の課題

 12月6日未明、小惑星探査機はやぶさ2はオーストラリアのウーメラ砂漠にカプセルを投下し、自身は次の延長ミッションに出発した。2014年12月3日にH-IIAロケットで相乗り衛星と共に打ち上げられてから6年間、C型小惑星リュウグウにランデヴーして近接探査をし、人工クレータ作成による内部物質を含めて2度のタッチダウンと試料採取をした、世界初の快挙を目白押しで成し遂げたミッションとなった。特に、その着地地点の正確さは、日本独自のターゲットマーカーの有効活用をして米航空宇宙局(NASA)を含む世界中をあっと言わせる離れ業を成し遂げたといってよい。

オーストラリアのウーメラ砂漠に無事着地してパラシュート共に発見された、はやぶさ2カプセル(JAXA提供)

オーストラリアのウーメラ砂漠に無事着地してパラシュート共に発見された、はやぶさ2カプセル(JAXA提供)

 10年半前の2010年6月13日には、はやぶさ初号機が命辛々帰還してカプセルを投下して昇華していった、あの劇的な成功があった。回収されたカプセルの写真を見ながら、その時の気持ちを思い出した。私は米国にもう30年いるので、日本側科学チーム員とはいえ、なかなか実体でひざを突き合わせて参加する機会は多くないが、初号機がS型小惑星イトカワにランデヴーした2005年の秋は、宇宙科学研究所(JAXA)にかなり行き詰めてデータ解析と議論に明け暮れた。

 今回やっと、はやぶさ本来のシナリオである、カプセルを地球に届けて延長ミッションに向かうという形になった。そしてまずはカプセル内の試料回収と分析である。初号機においては、複雑な経緯でAチームとBチームという2つの体制があり、確執があったと思う。今回は、計画段階から周到に準備された一貫した体制で、試料もより豊富であることから、その粒度に応じて分配する配慮もあり、米国のOSIRIS-RExミッションチームとの協力体制もある。

 探査機を打ち上げて運用するチームと、機上の観測機器による科学観測からデータ解析をする科学チームと、回収された試料を分析するチームは、重なりはあるものの基本的には別個である。初号機の際は、試料があまりにも小さかったために、非常に限られた分析しかできなかったが、今回は数百倍から数千倍の量が取れているのではと推測する。これはリュウグウのような太陽系における始原的な天体物質を研究する際には非常に重要である。

 初号機が試料回収した小惑星イトカワは、S型小惑星といわれ、太陽系で最初にできたと考えられる普通コンドライト(隕石中に最も豊富で、㎜程度の大きさの球状のコンドリュールを含む)が600℃程度の加熱と表面の宇宙風化以外は変化していないものであった。隕石の分析経験から、かなり少ない測定結果からその物質がどの隕石に対応するかわかるものであった。

 今回の2号機が持ち帰ってきたはずのC型小惑星リュウグウの試料は、同様にコンドライトかもしれないが、ランデヴー時になされた近接観測やESAのローバーMASCOTによる観測からは断定的な情報は得られていない。さらに、ところどころに見られる明るい岩がどのような物質であるかもまだ明らかではないが、外から降ってきて積もった物質である可能性が高い。

 回収した試料にそれらの断片でもあれば答えが出てくる可能性があり、そのような外来物質を含む少量の混入物質や、小惑星表面だけで宇宙風化した物質や、母天体から分離した際の衝突時に混ざった物質など、回収試料が多いほど発見できる情報も増えると期待される。だから、OSIRIS-RExは窒素ガスを注入して吸い取るような方式を採用したと思われる。もちろん、彼らの目標天体であるベンヌがリュウグウのように岩だらけではなく細かい砂に覆われた部分があると期待したのは大きくて、期待外れで驚いた要素はあったが。

 私が所属するブラウン大学にあるNASA実験室RELABは、リュウグウの試料のうちで粒子が大きめのものと、2023年にOSIRIS-RExが帰還して回収されるはずのベンヌの試料の両方を分析する予定である。RELABは過去40年近くも月試料や隕石試料を含む多くの固体惑星物質の光の反射を波長や角度を変えて測定してきた世界唯一の実験施設であり、私は過去25年間、その測定を担当してきた。

 日本にはまだそのような伝統ある施設がないが、はやぶさ・はやぶさ2の成功と、今後のMMXミッション(火星衛星探査計画)による火星衛星フォボス試料回収を含め、地球圏外試料に特化したキュレーション設備はできており、それらを含む科学データを系統的に一貫して管理していける体制が必要である。国民や世界に対して公開していく体制も然りである。

 一方、はやぶさ2本体はこれから11年間の延長ミッションにおいて、フライバイとランデヴーによって2つの小惑星の探査をする。失敗の多かった日本の宇宙探査において、これほど成功したミッションはないのではなかろうか。はやぶさ初号機が目指したが完遂できなかった使命を、こうして2号機が達成しつつあるのは感動的だ。

 今後は、近地球小天体の試料回収は当たり前の日本になり、月や火星や小惑星帯や木星軌道の探査や試料回収に向けて大きく夢をもって前進していってほしい。私はもう人生折り返し点を過ぎたが、命ある限り、それらに貢献し、若者たちと共に体験していきたい。

 そのためにも、過去の民主党政権時代を含む失敗の教訓を忘れず、最近の日本学術会議が左翼的で売国的である問題を解決し、国家の根幹を支える科学技術は守り育てていく政権が続いていってほしい。中共を含む悪性政権にノウハウを盗まれないことも重要であり、私のように専門家が頭脳流出しない国にしてほしい。日本ファーストであり、強い日本であってこそ世界平和に貢献できることを忘れないでほしい。

(2020年12月6日記)

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