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はやぶさ2がリュウグウを離脱した今思う「はやぶさ3」はないのか?

 小惑星探査機はやぶさ2は、小惑星リュウグウ近傍運用において、再び“世界初の奇跡的成功”を収め、表面と内部の試料を別々のコンテナに収めて、1年後に地球に届ける旅路に出た。

はやぶさ2の着陸予想図(JAXA)

はやぶさ2の着陸予想図(JAXA)

 2020年の末にそれがなされた後は、延長ミッションとして別の小惑星にランデヴーするべく検討がすでに始まっている。これが本来の、はやぶさ初号機でも想定されたシナリオであった。初号機の困難を乗り越え、予想を上回る多くの成功を収めた上でのおまけのミッションとなる。

 しかし、その後にJAXA(宇宙航空研究開発機構)が計画しているミッションには、私、小惑星・隕石分光科学者としてはがっかりするものがある。なぜこんなに成功した「はやぶさシリーズ」を続けないのか。はやぶさシリーズは小惑星と隕石の科学史上、初の画期的な発見をし続けてきた。はやぶさ初号機は、隕石の大部分を占める「普通コンドライト」がS型小惑星から来ていることを証明し、それを望遠鏡で確かめることを妨げていた「宇宙風化」がS型小惑星上で起こっていることを完全に証明した。はやぶさ2は、世界で初めてC型小惑星の物質を持ち帰る。S型との違いは、含水鉱物や有機物といった生命環境を作るために必要な物質が太陽系初期の状態に近いまま残っている可能性があることだ。

 しかしながら、小惑星にはもっと多くの種類があり、少なくとも10数種類が望遠鏡観測による「反射スペクトル」という可視光以外をも含む色の違いで見つかっており、隕石との対応がはっきりしていないものが多い。だから、1種類の小惑星に行くのに10年のミッションが必要だとして、あと100年はすべき仕事があるのだ。既に往復飛行と試料採取やカプセル投下の技術を確立した日本がやらなくて誰がやるのか。非常にもったいない話である。

小惑星の「反射スペクトル」分類の主要なもの。DeMeo氏がBus氏の可視光での分類を近赤外光に拡張したものの1部だけをここでは掲載した。

小惑星の「反射スペクトル」分類の主要なもの。DeMeo氏がBus氏の可視光での分類を近赤外光に拡張したものの1部だけをここでは掲載した。

 もちろん、ただ同じことを繰り返すのは工学上、面白くないといわれるかもしれない。そこで強調したいのは、はやぶさに搭載されてきた多色カメラ(AMICA、ONC-T)と分光器(NIRS、NIRS3)は世界の物質探査の機器としては前時代的な遅れたものと言わざるを得ないことである。それらの問題点を歯に衣を着せず述べてみたい。

 初号機はイトカワというS型小惑星に行ったので、表面は明るくほぼ均一で、暗い岩がいくつかあったくらいだったから割と簡単で、NIRSの波長帯もギリギリ物質同定と宇宙風化を見つけるのに十分だった。しかし、はやぶさ2では、含水鉱物を見ているはずのNIRS3が十分な波長範囲と分解能がないために解析に苦労している。リュウグウが暗く、水が少ないこともその困難さを増している。

 また、NIRSもNIRS3も同時に1点しか測定できず、2次元的な画像をとれるAMICAやONC-Tと同時観測したり計算をして、やっと測定点を同定できるという始末である。画像分光器が主流になっている世界では考えられないことである。これによって、非常に限られた運用しかできない。

 このような、前時代的な搭載機器を毎回改良していけば、少なくとも100年後にはどのような小惑星でもその物質同定に役立つ分光や元素分析のできるセンサーを衛星本体か着陸機に載せられるのではないだろうか。X線やガンマ線やレーザーやアルファ線源などを使った分光など、いろいろな方法があるはずなのに開発されていない。挑戦する気もないといってもよい。

 はやぶさ2やMMX(火星衛星探査)におけるように、ESA(欧州宇宙機関)やNASA(米航空宇宙局)といった欧米の機器を載せれば予算節約になるだろうが、日本が自前でセンサーを開発する能力や、そのための人材は一切できてこない。こんな状態で皆様、本当に良いのでしょうか?
(2019年11月14日記)

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