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  • 青木 節子
    青木 節子
    内閣府 宇宙政策委員

    はやぶさ2の2度のリュウグウ試料採取成功の意義と今後の課題

     7月11日に、小惑星探査機はやぶさ2は、小惑星リュウグウに作った人工クレーターから出てきたと思われる物質を多く含む地点から試料採取に成功した。これで2度目の成功である。今回の試料は前回とどう違って、その採取はどのような意義を持つのかを詳細に考えてみたい。

     まずは単純かつ常識的に考えて、宇宙空間に長期間露出していて太陽からの光や高速陽イオンや隕石衝突にさらされてきた表面の物質よりも、内部から掘り起こしたばかりの物質の方が新鮮であろうと思われる。しかし、本当にそうなのかは実はわからないと思う。

     まず、磁場や大気を持たない小天体上の岩石やレゴリス(粉)が色変化する宇宙風化であるが、当然、内部物質はそれを受けにくいのは確かである。はやぶさ初号機が2005年に訪れた小惑星イトカワでは、多色カメラAMICAの色で見ただけでも、その宇宙風化の分布(暗くなったところ)は明確であった。

     一方、はやぶさ2に積んだ多色カメラONC-Tと近赤外分光計NIRS3が見たリュウグウはどうだったのか?どちらの結果も、あらゆる隕石中で最も暗い物質らしいことと、際立った特長はNIRS3データが波長2.72ミクロン付近に示している鋭い吸収だけであった。それに近い特長を持つ隕石はあるが、リュウグウはそれに対して暗すぎるという問題があった。

     私は科学チームでは何度も指摘したが、記者会見とかではっきり説明されていないことがある。それは、このように暗い物質は、粉になると一層暗くなる可能性が大きいことである。実際、私が1つの候補物質と考えているMET 00639という米国が南極から回収したCMコンドライトと分類される隕石がある。

     この隕石はリュウグウに割と似ていて、粉にするとかなり暗くなり、宇宙風化実験をすると明るくなる。なので、もしリュウグウがこのような物質でできているならば、人工クレーターから出てきた物質は、細かい粉だから暗いのか、宇宙風化を受けていないから暗いのかは分からない。

     その他の候補としては、適度に加熱されたCIコンドライトや、隕石としては生き延びれず星間塵(IDP)となったモノの材料であるというものだが、これらの粒度や宇宙風化による変化は実験がないので分からない。

     乙姫岩のある一面を含め、平らにきれいに割れている面を持つ岩が多いという事実は、劈開性を持つMET 00639と整合的であり、その意味でも一層気になる隕石である。

     しかしながら、内部が暗いのは、暗い有機物がより多く残っているからとか、他の暗色鉱物が豊富だからという可能性もある。もちろん、表面は宇宙風化でそれらが減っているという理由も付けられる。

     内部の物質は、表面と違ってより細かい粉がたまっているから暗いのだという理由の場合は、今回の2度目の試料採取で本質的に違う物質が取れたわけではないであろうが、表面と内部の粒度分布の比較によって微小重力天体での浅い部分での分別効果を知る手掛かりになるであろう。

     同じ物質で粒度も同じようであるが宇宙風化度が違う場合は、1度目の物質の粒を割ってみて内部を調べた結果と、2度目の物質の細粒とを比べたら一致するはずである。

     はやぶさの後継機ミッションを考えていた時に、含水鉱物を含むと考えられるC型やD型で試料採取する際には、円筒形の物体を打ち込んでボーリングして、深さ方向の物質分布がわかるような方式にしたいという意見があった。

     それはHayabusa Mark IIというミッションで、ヨーロッパのMarco-Poloミッションと協力するということで、実現しなかったが、基本的に、紐をつけて抜こうとするときに抜けなくなったら大惨事になるという工学的制約が問題だった。はやぶさ2は、試料採取機構など仕様は基本そのままですぐ行けるC型群の小惑星リュウグウに行ったということである。

     まあ過去の話は別として、未来の話をすれば、2020年の暮れに無事に地球に帰ってきてカプセルをオーストラリアに落とした後はどうするか?は、やぶさ初号機の場合には不可能であったが、はやぶさ2は多少の問題はあっても、もう1つ別の小惑星を訪れることはできる。着陸や試料採取はできなくともイオンエンジンが生きている限りフライバイはできるのでは?

     そしてもちろん回収試料の分析だが、これは初号機でより単純な物質の0.1ミリメートル程度の大きさの粒子がほとんどだった場合とは量も質も大きくアップしたものとなるであろう。含水鉱物や有機物を含むであろう物質がミリ以上の大きさの粒子で多数入手でき、表面と内部の2カ所からのグループを比較できるのである。

     運用のドラマばかり注目された初号機でなく、運用は延長ミッションの方で頑張ってもらって、そこからは科学者たちのドラマである。その機会に、私が各地で講演しているように、はやぶさ初号機の背後に如何なる科学者たちのドラマがあったかを知ってほしい。

     我々科学者は各分野でベストを尽くして頑張るので、広報やマスコミの方々には、高度ではあるがより深いドラマがある科学者たちの格闘を国民や世界の人々に伝える努力をもっともっとしてもらいたい。我々もわかりやすく情報を提供できるよう尽力するので。

    (2019年7月13日記)

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