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はやぶさ・はやぶさ2で“二の位置”を勝利した吉川氏

 世界トップレベルの英国科学誌 Nature は2018年の重要な10人の人物の一人として、JAXA宇宙科学研究所の吉川真氏を選んだ。以下にその元記事と、JAXAの日本語による解説ページがある。
https://www.nature.com/immersive/d41586-018-07683-5/index.html
http://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20181228_Nature/

吉川真准教授

英国科学誌Natureによって2018年の重要人物10人のうちの1人に選ばれたJAXA宇宙科学研究所の吉川真准教授(ISAS/JAXA提供)。

 吉川氏は、はやぶさ2のミッションマネジャーという肩書を持ってはいるが、トップはプロジェクトマネジャー(PM)の津田雄一氏であり、吉川氏は“二の位置”に当たる。吉川氏と私は、はやぶさミッションの際に出会ったが、当時のPMの川口淳一郎氏と科学チームのトップであった藤原顕先生を補佐しながら、藤原先生の退官後はより大きな責任を持ち、はやぶさ2につなげる際に大きな役割を果たしたと思う。

 特に、私がかかわってきたミッションにおいて、トップの人物たちが英語が堪能でないケースがあり、英語力を含むコミュニケーション能力にたけた吉川氏は重要な存在である。とはいえ、実際多くの雑用をこなしながらも、成果の発表などでマスコミに顔を出すのは主にPMであり、その陰に隠れて損な役割であるともいえる。吉川氏は、はやぶさミッションから陰の立役者としての役割をはたし、はやぶさ2ミッションにおいてはタイトルと共に現場の主役としてマスコミにも多く登場できるようになった。

 歴史的に見ても、そういう“二の位置”を勝利的に果たすのは難しかったと思う。日本の戦国時代の下克上は世界史では当然のようにあるし、宗教の世界でも有名な話が多くあると思う。釈迦や孔子の教えに従って善王になったものは少ないし、2000年前に奇跡と共に誕生して「来るべきメシアに侍るべし」と予言された洗礼ヨハネも、結局はイエスキリストの弟子にはならなかった。

 しかし、日本の歴史を見てみると、主君のために自らの位置を離れずに一生をささげた人物が多いように思える。それは天皇皇后両陛下が国父母または神道大神官としておられるからかもしれない。実際にトップに立てば重い責任がかかってくるので、精神的に強い人間でないと務まらない。勤勉で過分の欲望を持たないことを美徳とする日本人には““二の位置””は適しているのかもしれない。

 国際連合にも多大の援助をしているにもかかわらず敗戦国であるがゆえに常任理事国になっていない日本も“二の位置”である。私も日本で本来大学の研究室を構えてトップの位置で率いていける未来はあったはずだが、外国の研究室で技官に近いような仕事をして教官たちを支えている。

 決してそれで満足しているわけではないが、その位置でも最大限の貢献をできるのが日本人であると思う。それは美徳であるが、実績のないものがトップを牛耳っているのもよくない。宇宙研でこのように実績を上げている吉川氏は未だ准教授であるし、かぐやミッションで世界的実績を上げた春山純一氏や大竹真紀子氏も未だ助教である。日本の大学や研究機関における人事の不透明性は日本が抱える大きな課題であり、人材流出の大きな原因となっているに違いない。

 それでは、世界における日本、私を含む国内外で冷遇されている日本人もトップに上がる日が来るのであろうか? 私はあると信じている。世界が日本人として当たり前に思われる価値観を共有できるとき、つまり世界や国や機関が日本のように仁徳のある中心存在を持ち、より平等で、平和で、安全で、もったいない精神を持ち、自然と調和していけることをより希求する時、彼らはそのリーダーとなるであろう。

 日本が世界を驚愕させた初号機はやぶさの奇跡的成功の背後に、科学チームトップの藤原先生の謙虚な人格のゆえに、技術者たちと科学者たちがうまく一体化できたことがあると聞いたことがある。常にチーム内部の一体化は外的成果を挙げるのに必要であると思う。はやぶさ2チームも今月22日に予定されたタッチダウン運用という山場に向けて一丸となっていきたい。

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