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はやぶさ2のリュウグウと、OSIRIS-RExのベンヌ

はやぶさ2がランデヴー中の小惑星リュウグウと、OSIRIS-RExが接近中の小惑星ベンヌ(JAXA/NASA)

はやぶさ2がランデヴー中の小惑星リュウグウと、OSIRIS-RExが接近中の小惑星ベンヌ(JAXA/NASA)

 10月から、小惑星探査機はやぶさ2の科学成果がアメリカで世界的に発表され始めた。アメリカ天文学会の惑星科学部門(DPS)では科学チームの代表者たちが日本から参加し、学会の場としては最初の成果を発表した。特に多色カメラONC-Tの画像から分かったリュウグウのコマ型の形、平たい面を持つ岩、赤道を通る明るい帯状の峰、東西の違い、そして明るさと色の相関など、初めて間近に見る炭素質コンドライト隕石の母天体と思われるこの物体には予想を超えた発見があった。

 しかし問題はその組成である。近赤外光を調べる分光器であるNIRS3によって2.7ミクロン帯の吸収が見られ、水が鉱物中に水酸基として固定されていることが示されたが、上記のONC-Tの情報と合わせてみて、明らかにこれだという特定できる隕石種が見つかっていない。もちろん試料を回収するのだから、はやぶさ2が2020年の12月に地球にカプセルを持って帰ってくれるのを待てばよいのだが、やはり遠隔探知(リモセン)を専門とする科学者として物質組成を特定したいものである。

 そうしている間に、対抗馬ともいえるNASAのOSIRIS-RExがその目標小惑星ベンヌに近づいて映像を送ってきた。それは何とリュウグウそっくりであった! もちろん、ベンヌの方は詳細な天文観測によってその形状は予想されていたのだが、リュウグウがこのような形であるとは6月の接近まで分からなかった。

 上述の炭素質コンドライトという隕石は、過去の水の存在によって内部に含水鉱物を持ち、また炭素や有機物も他の隕石と比べて豊富な物質である。それゆえ、岩石としての力学強度は弱く、隕石の8~9割を占める普通コンドライト隕石と比べたら、桁違いに脆い。なので、はやぶさ初号機が試料を回収してきた小惑星イトカワがいびつな形でいられたのは、S型小惑星は強い普通コンドライトでできていたからで、リュウグウやベンヌといった弱い炭素質コンドライトでできた小惑星は重力的に安定な球形もしくはコマ型になるのだという仮説も立てられる。

 リュウグウの試料が帰ってくる前に、OSIRIS-RExによるベンヌの表面物質組成のリモセンによって、それがどの隕石に対応するかなどの情報が得られるかもしれない。これがリュウグウと違う組成であれば、人類としては異なる2種類の炭素質コンドライト母天体の試料を手にすることになる。もし似たものであったとしても、宇宙風化など、表面で異なる変化を起こしたものが回収できれば素晴らしい。

 この11~12月の期間は、はやぶさ2が太陽に隠れるので運用はできず、日本で科学チーム会議などを開いてデータの解釈や今後の運用計画を話し合う場が持たれる。その一方、初期科学成果を論文として発表する努力が現在行われている。なかなか解釈が難しい天体であるが、与えられたデータから客観的に可能性を見出していく必要がある。科学者が活躍せねばならない時である。

 NASAとしては、ひょっとしてベンヌがリュウグウと同じものであったら、日本より2~3年もあとに試料を回収してきて何が良かったのかと批判されるかもしれない。それだからこそ、はやぶさ・はやぶさ2のように、世界で初めてのことに挑戦し続ける必要があるのだ。その過程で、世界に存在しない日本だけの技術・科学・人材が生み出されていくであろう。

(2018年11月1日記)

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