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はやぶさミッションの最大の科学成果を誰に伝えるべきか

 小惑星探査機はやぶさ2は、小惑星リュウグウに向けて降下訓練をしながら、タッチダウンによる試料採取の実現に向けて準備している。はやぶさ2は6月27日にリュウグウに到着して以来、数々の科学的発見をなし、その初期論文を準備中である。この状況は、2005年当時、はやぶさ初号機が小惑星イトカワ上空で得たデータを米サイエンス誌に特集号として発表する準備段階に似ている。

 その違いは、はやぶさ2はまだタッチダウンも事故も起こしておらず、はやぶさの帰還が不確定かつ5年もかかったのに対し、はやぶさ2はこのまま調子よくいけば、2年3カ月後には地球に試料を持ち帰ってくれることである。その際に、はやぶさ2科学チームがこれから論文に発表する内容の正誤が裁かれることになろう。

益田高校で講演をする著者

益田高校で講演をする著者

 私は次回の11月から12月にかけた1カ月間の帰国に向けて、約1週間くらいは全国の高校などを回って、はやぶさの科学成果と未来の科学について講演する予定である。このような広報・教育活動は、振り返れば2006年ころから始めていたが、活発化したのはカプセル内の回収試料の解析結果が発表された2011年である。

 やはり、はやぶさが深刻な事故にもかかわらず奇跡の復旧を成し遂げ、身を粉にしながらもそのミッションであるカプセルを地球に送り届け、その中に試料が入っていたという、感動の物語が日本中に知られるようになったことが私の講演が増えた原因かと思う。

 これまで、特にSSH(スーパーサイエンスハイスクール)やSGH(スーパーグローバルハイスクール)といった政府の予算支援を受けた高校にアプローチしてきたが、全国47都道府県のうち、まだ行っていない青森・秋田・福島・栃木県のSSH/SGH高校にコンタクトしても反応が最初は乏しかったこともあり、それ以外の高校や、他県の高校にもコンタクトした結果、秋田・福島・栃木・長野・富山県でSSH予算を受けていないような高校からも反応があった。

 そこで考えてみた。SSHやSGHでは多大の予算が海外研修などにも使われる。だから、国内から一研究者を講演に呼ぶことも難しくないであろう。一方、そのような政府予算を受けていない地方の高校では、国内もしくは世界的に一流の科学者を呼ぶ予算はないことが多いであろう。しかしそのような高校や中学校にも将来偉大な科学者・技術者になる生徒がいるかもしれない。

 だから、私が今回気づいたのは、全国制覇をした後は、そのような「恵まれない」高校に無償で出向くことではないかということだ。問題は交通費や宿泊費といった経費である。例えば、補助金で旅費が出る高校に行かせてもらい、同じ日に近隣でそれ以外の学校を訪問させてもらうという手がある。

 もちろん、学校には年間の行事予定があり、なかなか柔軟に対応できない場合があり、今回の旅程作りでも、午前中に授業を入れることの難しさを感じた。そのあたりは、私が講演・授業に行く価値と、それに時間を割く犠牲との釣り合いに依存するであろう。前者が大きくなるような科学者・教育者に私がなる必要があると思う。

 全国を回ったと言っても、都会だけであったり、会員制の閉ざされた講演会の場合も多かった。たとえ僻地かつ財源が乏しい場所であっても、中学校・高校での授業や一般の人が来れるような会で、日本の惑星探査の偉大な科学成果を教え、未来を担う生徒たちを啓蒙し、学術・教育の方針を決めていく人たちに宣伝していきたい。また、地方であまり知名人が来ない場所の方が歓迎されるかもしれないし。上記のように、どれだけ日程的・経済的にそれが可能かわからないが、今後それを意識していきたい。

(2018年9月12日記)

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