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はやぶさ2のリュウグウ到着における科学の最大関心事

Ryugu@920km:はやぶさ2が920㎞の距離から見た小惑星リュウグウ(JAXA提供)

[email protected]:はやぶさ2が920㎞の距離から見た小惑星リュウグウ(JAXA提供)

 はやぶさ2がとうとうその目標小惑星リュウグウに間近に迫ってきた! 望遠カメラであるONC-Tでリュウグウの形が見えてきたが、私の最大関心事はその多色画像にある。ONC-Tは6色のフィルターを持っており、1024ピクセル四方のCCDの前でそれらフィルターを交換することで多色画像をとり、かつ各地点の反射スペクトル(波長と反射率をグラフにした曲線)を得ることができる。

 それら6つのフィルターのうちの3つ、550 nm、700 nm、860 nmの反射率を使うと、700 nmに窪んだ吸収があるかどうかが分かる。それがあることが炭素質コンドライト隕石で最も多いCM型であることの証明になる。そうなったら、後のONC-Tデータや1.8-3.2ミクロンの波長帯を測って水を含む岩石を調べるNIRS3データの解釈にも道筋がたちやすい。地上からの望遠鏡観測などではそれがやや不明確であった。

 私個人としては、地上観測で最も信頼できると思っている Faith Vilas 博士の観測データの1つに明確に700 nm吸収帯が見えていて、解析した結果もCMコンドライトに近かったので、その存在を信じている。因みに、Faith は私が1991-1994年にNASAジョンソン宇宙センターにいた時にアドバイザーとして私を受け入れてくれた恩師である。

 13年前の2005年の秋には、はやぶさ初号機が小惑星イトカワに到着して世界を驚かせた。8年前のちょうど今頃には、はやぶさがイトカワの試料を携えて地球大気に昇華し、世界に感動を与えた。今回は日本にとっては2度目の経験であるが、水や有機物を含む天体から進化した小惑星に着陸して試料を回収してくるというミッションは再び世界初の快挙となる。

 はやぶさ初号機の苦難に満ちた航海は史上初のブームを起こして有名になったが、その科学成果も世界を驚愕させたことを知る日本人はそれほど多くない。私が各地で講演して強調しているのはその点であるが、はやぶさ2では初号機のようなドラマはなくても、その科学成果と、限られた資源と人材で成果を出していく科学者の姿にドラマがあることを知ってほしい。それは初号機でも同じであったが、今回の挑戦はもっと大きなものになる可能性がある。

 私のような初号機からのベテランの科学者たちの他に、大学院生や博士号をとって間もない研究者たちも参加している。特に、表面形状を求めたり、そこから重力を計算するとか、私の専門の分光から組成や粒度や宇宙風化度を導くとかいう分野は、特にアメリカの最先端の研究者たちのところに短期に留学して学ばせている。

 今回も今日までJAXAから若い研究者が2週間私のところに来て、ONC-TおよびNIRS3データから何を得られるかという点に関して最後の詰めを行った。それは、はやぶさ2の着陸試料採取地点を選ぶ際に、工学側が安全と判断した地点の中で、どこに降りれば科学的成果を最大にできるかという考察にきわめて重要である。そしてもちろん、小惑星近傍でしか得られない、組成・粒径・宇宙風化の分布の情報を得るのに必要である。

 はやぶさ初号機の2005年の小惑星イトカワへのランデヴーの際のNIRS機器のデータから、史上初めて小惑星表面の粒度と宇宙風化度の分布地図が書かれたことは意外と知られていない。イトカワは普通コンドライトという明るくて透明な鉱物に富む物質でできていて、表面が非常に均一な組成をしていたので、粒径や宇宙風化度を見るのに最適であった。今回はそんなに甘くないが、既に一度経験したJAXA宇宙研の2度目の挑戦としては、きっとやりがいがあり、科学的成果がより大きなものになるであろう。
(2018年6月14日記)

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