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  • 普天間基地移設 経緯の検証と提言
  • 「援護法」に隠された沖縄戦の真実
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  • JAXA宇宙探査計画
  • 2015/12/24
  • 青木 節子
    青木 節子
    内閣府 宇宙政策委員

    人使いの荒い日本の官僚政治で冷遇される在外日本人研究者

    廣井孝弘

     私は末端の科学者ではありながら、安倍首相が常々語っていた、財務省などの官僚政治を打開すべきということを実体験したことがある。それは国家プロジェクトに在外日本人研究者として携わってきたことにも大きく起因している。学校での授業や一般講演会で、そのような質問に答えると、みなその意外な実態に驚くようである。

     私の研究テーマは日本の月や小惑星の探査ミッションに深くかかわっているので、自然と日本の大学の研究者たちと共同研究をし、日本での会議にネットや実体で参加する必要が多くある。また、実験装置も、日本の各地に分散して存在していることが多いために、個別に協力したり、共同利用の施設を利用する必要が出てくる。日本政府から見たら、給料も旅費も自前(NASA研究費)で出して、研究成果を上げ、国家ミッションの科学成果を大きくしてくれる人は歓迎すべきだが、現実には私は信じがたい扱いを受けている。

     だいぶん前、はやぶさ・かぐやなどの科学チーム員として日本まで出張した際に、私が日本チームであるがゆえに、「旅費は国内しか出せず、成田空港からなら出ますよ」という、まるで冗談のようなことを言われた。大学の研究者の時間をボランティアとして無料で利用しておいて、旅費まで自腹を切って払いなさいというのは政府の方針なのか、それとも、宇宙研やJAXAの上層部が無能だから予算をとってきていないのか? 「それは規則だから」と言われたが、目的を達成するために規則があるはずだから、それが逆に目的を阻害し始めたら、規則を変更すればよいのである。しかし、事務員などはそんなことをして面倒を起こす気はなく、彼らの価値観に従っていたら研究者は目的を達成できないのである。

    800

    Moon Mineralogy Mapper(M3)とそれを見つめる技術者たち(NASA JPL)

     また、2010年に特任教授として夏の間だけ滞在した某国立研究所では、その後も外来研究員として科研費を取得して共同研究を進めていたが、その後、科研費を申請できなくなり、外来研究員として復帰することも難しいといわれた。外部資金をもっと取りましょうと推奨しているにもかかわらず、科研費を獲得した実績のある研究者を切り捨てるというのはどういうことか?真相はわからないが、日本人だが海外在住でNASA研究費から給料をもらっている人の立場は難しいとかいろいろ事務的な事柄があるに違いない。もちろん、それ以上の、より実績を上げていない研究者からの嫉妬などもあるかもしれない。いずれにせよ、事務員が望むのは、自分たちが規則違反をしたとして処分されないことであり、研究者たちの偉大な目的達成を助けるという気概は感じられない。

     また、全国に共同利用施設といういろんな実験機器などがあり、その利用を申請して、時には旅費が出たりもするが、日本に所属がないと、旅費をもらえないだけでなく、利用申請さえできない場合もある。日本市民権を持ちながらも海外で世界トップレベルの研究をしている者が日本に研究活動に来るという場合を想定していないのか、そのような研究者であれば、外来研究員・客員教授などの肩書を当然もらっているだろうと仮定しているのか分からないが、規則上できないといわれることがある。

     もっと卑近な例を挙げれば、飛行機で海外出張するときに、エコノミークラスしか使えないと規定して、高齢になった研究者を例えば20時間以上もそのように疲れさせ、成田空港に着いたら、成田エクスプレスや京成スカイライナーなどの特急料金は払えないといって、下手すると混雑して座れないような列車に2時間以上立たせて、頭脳と健康が第一の研究者を殺すつもりであろうか? そういう規則を作ったり適用している人たちは自分で体験してみるとよい。せいぜいマイルをためてアップグレードすればビジネスクラスになるかもしれないが、多くの旅を重ねないといけないし、それも取り上げようとする動きもあるような。目的を忘れた官僚政治の弊害だ。

     数百億円もかけた惑星探査ミッションにおいて、それが科学ミッションであれば、最終的に Science や Nature 級の学術誌に論文が出ることが重要である。そういうレベルの科学成果を出せる研究者に1万分の1程度の費用で実験機器や旅費などの待遇をつけられないはずがない。現状がそうでないならば、そのミッションは計画段階から、またはその運用において既に失敗しているといえる。

     元寇の際に、鎌倉幕府の抵抗と神風の両方があって初めて国を守れたのに、朝廷は、祈りのおかげで神風が吹いたのだから、勝手に余計なことをしてくれたと幕府を叱ったことを思い出す。そういう官僚政治のルールを超えて目的を達するために協働することで、はやぶさ初号機のデータから宇宙風化の論文が2本出たし、かぐやのマルチバンド・イメジャーの設計も変更されて有意義なデータが取れた経験がある。

     はやぶさ2の科学チームでも打破すべき多くの壁がある。はやぶさの奇跡の生還や、かぐやと競合したM3の失脚といった、日本のミッションにとっての幸運が起こるとは限らない。競合するOSIRIS-RExに負けない世界一・世界初の科学成果をあげたいものである。

    (2017年12月27日記)

    M3(エム・キューブドと読む) Moon Mineralogy Mapperの略で、2008-2009年にNASAがインドの月探査衛星チャンドラヤーン1号に載せたセンサー。かぐや以上の鉱物分布データを月全球にわたって測定するはずであったが、衛星本体の設計の問題などから徐々に加熱し、データの質が劣化しながらミッション半ばで終了した。

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