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東京五輪選手の健康管理に万全を

 サッカー欧州選手権が11日、イタリアとトルコ戦を皮切りに1次リーグ戦が始まった。新型コロナウイルスの感染に悩まされてきた欧州にとって1年半ぶりの大規模なスポーツイベントである。それだけに選手もファンも大喜びだ。選手たちの活躍と共に大会の無事成功を祈るばかりだ。

サッカー欧州選手権が11日、ローマで開幕(オーストリア国営放送の中継から、2021年6月11日)

サッカー欧州選手権が11日、ローマで開幕(オーストリア国営放送の中継から、2021年6月11日)

 欧州選手権は今回、24チームが11都市で1次リーグ戦を戦い、決勝は7月11日、ロンドンで開催される。欧州選手権は本来、2020年に開催されることになっていたが、新型コロナウイルスの感染拡大があって、開催が1年延期された。

 ところで、12日夜、デンマークとフィンランド戦をテレビ観戦していた時だ、前半43分、デンマークのスター選手、MFのクリスチャン・エリクセン選手(29)が敵陣で味方からスローインを受ける直前、意識を失い、倒れたのだ。エリクセン選手は動かない。事態の急変を感じた選手たちが直ぐに医者を呼んだ。ピッチに駆け付けた医療救援チームは約20分余り、心臓マッサージなど心肺蘇生(CPR)に努めた。デンマークチームの選手たちは治療を受けている状況が外から見えなくするために壁を作った。

 デンマーク選手もフィンランド選手も最初は何が起きたのか理解できなかったが、どうやら心臓発作という事が分かって、祈り出す選手もいた。1万5000人余りのコペンハーゲンのパルケン競技場のファンの中には涙を流す人の姿がTVで映し出された。

 その後、エリクセン選手は病院に搬送された。デンマーク選手たちはストレッチャーで運ばれるエリクセンに付き添いながら、見送った。エリクソン選手の奥さんもピッチに姿を見せ、デンマークの選手たちから慰められていた。幸い、エリクソン選手は意識を取り戻したという情報が流れてきた。

 試合は1時間半後、再開された。試合が続行されるという知らせを受けた時、当方は正直言って驚いた。エリクセン選手の状況を目撃した選手たちは、同僚の突然の状況にショックを受けているはずだ。そのような状況下で試合を続行できるだろうか、考えたからだ。

 試合続行は欧州サッカー連盟(UEFA)ら主催者側の決定だろう。試合を延期した場合、その後の日程に狂いが生じる。それだけではない。サッカー欧州選手権のスポンサーとの関係、放送権の問題もある。幸い、エリクセン選手は最悪状況から脱した。だから試合を続行しようと決めたのだろう。試合は結果はフィンランドが1-0で勝利した(情報では、エリクセン選手が病院からデンマークの選手たちに試合続行を願ったという)。

 スポーツ選手はサッカー選手だけではない。通常の人より強靭な体力を有しているが、そのスポーツ選手が今回のエリクセン選手のように突然心臓発作に見舞われるケースは過去、皆無ではない。スポーツ専門医によれば、選手たちは毎日、過酷な訓練を受けている。一流のスポーツ選手は記録を追及し、成績を求めるから、体力の限界まで酷使して試合に臨む。だから今回のエリクセン選手のような状況も生じるわけだ。

 その上、プロの選手となれば、スポンサーとの契約がある。女子テニスの大坂なおみ選手の記者会見ボイコットでも明らかになったが、スターとなれば、記者会見も義務となる。個人の事情は後回しだ。そのような中でスポーツ選手は戦っていくわけだ。スペインの名GK、イケル・カシージャス選手は2019年5月、練習中に心臓発作を起こし、病院には搬送されている。一流選手であればあるほど、多くのストレスに悩まされる。若い時からデンマークのホープと見られて、現在はイタリア・セリエAのインテルに所属するエリクセン選手もそのよう選手の1人だ。

 東京夏季五輪大会の開催も間近に迫ってきた。五輪に参加する選手たちに突発的な健康問題が生じる危険性は排除できない。サッカー欧州選手権での出来事は決して他人事ではない。新型コロナ感染が完全に終息したわけではない。通常のトレーニングができない状況下にあった選手も少なくないだろう。だから、五輪大会に参加する選手の健康管理に万全を期すべきだ。エリクセン選手の出来事は東京夏季五輪大会運営関係者に改めて警鐘を鳴らしている。

 夏季五輪大会の場合、競技の種類も多いうえ、世界から選手が集まるから、サッカー欧州選手権よりも課題は多い。それらを一つ一つ克服して、東京夏季五輪大会が成功すれば、新型コロナウイルスの感染で苦しんできた世界の人々に希望を与えることが出来るはずだ。

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