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  • 新閣僚に聞く
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    安東 幹
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    坂東 忠信
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    古川 光輝
    古川 光輝
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    細川 珠生
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    井上 政典
    井上 政典
    歴史ナビゲーター
    伊勢 雅臣
    伊勢 雅臣
    「国際派日本人養成講座」編集長
    宮本 惇夫
    宮本 惇夫
    企業・経営
    中村 仁
    中村 仁
    元全国紙経済記者
    石平
    石平
    評論家

    「新型コロナ」は独裁者を生み出す?

     どの時代、どの世界でも、自身の野望を実現するためならば死体の山も踏み越えて突進していこうとする政治家はいるものだ。彼らは利用できるものならば、なんでも巧みに操ろうとする。中国湖北省武漢市で発生し、世界的流行(パンデミック)となった新型コロナウイルス(covid-19)の場合でも同じだ。多くの犠牲者が出ているが、野望を心に秘める政治家はその新型コロナがもたらすカオス状況を自身の政治的野望を実現するチャンスにしてしまう。

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    新型コロナウイルス(covid-19)=WHO公式情報特設ページの公式サイトから

     ロシアのプーチン大統領は1月15日、年次教書演説の中で同国憲法を改正する意向を表明した。プーチン氏が提案した改憲案では、①国家評議会の強化と権限拡大、②大統領任期を「2期」制限案が目を引いた。そのため、プーチン氏は2回目の「連続2期」の任期が終わる2024年には国家評議会に移動し、そこで「院政」を敷くのではないかと予想された。

     プーチン氏は過去、「24年後は大統領ポストにしがみつくことはない」と述べてきたが、野心家で戦略家の同氏があっさりとクレムリン宮殿を去るとは考えられないから、24年後もモスクワの主人の座に座り続ける意向を示唆したとしてもサプライズではない。

     問題は「なぜここにきてプーチン氏は前言を翻して独裁者の道を歩むことを決意したか」だ。答えは案外、簡単かもしれない。新型コロナがプーチン氏の心底に隠れていた野望を目覚めさせたのではないか。同氏は10日、5選出馬を可能とする改憲法案を出すと、同案は上下両院をあっさりと通過。プーチン氏は新憲法のもと新たな2期12年間の大統領ポストを目指す考えを示唆しているのだ。

     世界は新型肺炎対策で明け暮れている。新型肺炎をインフルエンザと変わらないと軽く見てきたトランプ大統領ですら、ここにきて国家の危機と受け取ってきた。欧州は既に感染者数、死者数で中国本土のそれを大きく上回っている。そんな時、プーチン氏が24年以降も大統領職を継続する憲法改正を実施したとしてもあまり関心を呼ばないだろう……、これこそプーチン氏自身の読みではないか。

     ロシア国民は欧米社会の新型コロナ感染状況を目撃し、新型肺炎を恐れだした。プーチン氏の政治的野望を表立って批判する余裕がなくなってきた。プーチン氏はこの絶好の機会を逃さず、自身の5選を可能とする改憲案を出した。プーチン氏は国内外で大きな批判や抵抗に直面することなく、終身大統領の道を歩きだすことができる、という計算だ(「プーチン氏『習近平主席の道を行く』」2020年1月25日参考)。

     新型コロナ旋風が吹き上げているこの時、ハンガリーのオルバン首相もロシアのプーチン氏に倣って、独裁者の道を歩みだしてきた。

     オルバン首相はハンガリー国民議会で過半数を占める与党「フィデス・ハンガリー市民同盟」を土台に、野党を骨抜きにし、批判的なメディアを撲滅し、司法、言論を支配下に置いてきた。ブリュッセル(欧州連合=EU)からの批判をものともせず、難民対策ではハンガリー・ファーストを実行。その一方、習近平中国国家主席が提唱した「一帯一路」には積極的に参加し、ロシアにも急接近、EUの対ロシア制裁の解除を要求するなど、独自の外交路線を走ってきた。

     オルバン首相は11日、新型コロナ感染の危機に対し「非常事態宣言」を表明、必要ならば国民の人権や自由を議会の承認なしに制限できる改正案を模索。23日に実施された議会では同改正案の審議は暗礁に乗り上げたが、今月末には再び提出し、採択できる道を探っている。

     ハンガリー国内では一部の学者、知識人、人権擁護グループ、「国際新聞編集者協会」(IPI)がオルバン政権の横暴を批判しているが、その声は大きくない。多くの国民はオルバン首相の強権政治を批判することより、身近に迫ってきた新型コロナウイルスの感染拡大防止に大きな関心があるからだ。

     参考までに、プーチン氏やオルバン氏が夢見ている独裁者の道を既に歩み出した中国の習近平氏は武漢肺炎が発生した直後、対策の遅れなどで共産党内の批判に直面し、一時危機説も流れたが、世界保健機関(WHO)に武漢肺炎をパンデミックと表明させ、新型肺炎が「中国ウイルス」ではないことをプロパガンダする戦略を進める一方、イタリアなどの感染国に医療物資を支援し、大国・中国の威信挽回に乗り出している。

     独裁国・北朝鮮では21日、今年3回目の短距離弾道ミサイルが発射されたが、トランプ大統領をはじめ世界は目下、新型肺炎対策に没頭中で、北側の挑発行為に対しあまり関心を払っていない。一部の北朝鮮ウォッチャーだけが、①この時のミサイル発射の狙いはどこか、②金正恩氏の実妹・与正氏の政治動向、③金正恩氏の健康悪化説などで憶測を流している。短距離弾道ミサイルの発射と新型コロナの感染拡大の関係は不明だが、北朝鮮では国民ばかりか人民軍兵士の中にも感染が広がってきた。食糧不足は依然、深刻だ。同国の情勢は、新型コロナの感染拡大で一層危機的とみて間違いないだろう。

     イランのハメネイ師にも言及せざるを得ない。同師はイランのシーア派の精神的指導者だが、支配スタイルは独裁者と余り変わらない。ローハ二大統領もハメネイ師の意向を無視できない。

     そのハメネイ師は新型コロナ問題で大きなミスを犯している。イランが新型コロナ感染で苦境に陥っていることを受け、米国は医療支援を申し出たが、ハメネイ師はその申し出を拒否したのだ。

     イランは目下、イタリアに次いで新型コロナの死者が多い(21日時点、感染者数2万610人、死者1556人)。核問題で国際制裁下のイランではマスク、消毒液、人工呼吸器の不足が深刻だ。多くの患者が命を失っている。国民の苦境を理解していたならば、ハメネイ師は宿敵・米国からとはいえ、支援申し出を受け入れただろう。

     イラン国民は、ハメネイ師が国の威信、政治的計算などを優先し、国民の健康を犠牲にしたという事実を忘れないだろう。精神的指導者のハメネイ師は自身の権威、影響力を大きく損なったことになる。ハメネイ師が「国民の健康のため」と判断し、米国の支援の申し出を潔く受け取っていれば、イラン国民の間で同師の権威は一層高まったに違いない。その意味で、同師は新型肺炎に絡む国内情勢を読み違えたわけだ。

    (ウィーン在住)

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