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    坂東 忠信
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    古川 光輝
    古川 光輝
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    細川 珠生
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    井上 政典
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    伊勢 雅臣
    「国際派日本人養成講座」編集長
    河添 恵子
    河添 恵子
    ノンフィクション作家
    宮本 惇夫
    宮本 惇夫
    企業・経営
    中村 仁
    中村 仁
    元全国紙経済記者
    石平
    石平
    評論家

    「宗教の中国化推進5カ年計画」とは

     トランプ米大統領は目下、2020年の次期大統領選のために様々な戦略を考え、そのために腐心している。一方、第2次冷戦時代のもう一方の雄、中国共産党の習近平国家主席も同じように様々な戦略を考えている。9000億ドルを投入した新マルコポーロ構想「一帯一路」を旗印に、「中国製品2025」で先端技術ばかりか宇宙開発でも覇権を握り、同国の通信関連大手ファーウェイ(華為技術)で5G(第5世代移動通信システム)の市場を制覇する、といった中長期の計画を考えている。トランプ氏との違いは習近平主席の目が来年ではなく、数十年先まで注がれていることだ。もう少し厳密にいえば、ポスト・トランプ時代も計算に入れていることだ。

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    中国のキリスト信者たち(バチカン・ニュースのHPから)

     共産主義の計画経済は「5カ年計画」を中心に、予算や投資を国家が事前に計画して進めていく。興味深い点は、中国共産党政権は国民経済だけではなく、宗教分野でも「5カ年計画」を立て、推進させているのだ。正式には「宗教の中国化推進5カ年構想」(2018年から2022年)だ。誤解しないでほしい。「宗教の促進」5カ年計画ではなく、「宗教の中国化」推進5カ年計画だ。

     共産主義イデオロギーでは「宗教はアヘン」であり、無神論主義を国是とする。その「宗教」を中国共産党政権が撲滅するというのならば理解できるが、「宗教」の中国化を推進させるというのだ。「宗教」を完全には否定せず、その中国化を進める、という意味に受け取れるわけだ。

     中国共産党政権は「宗教」を撲滅することはできないことを知っている。共産党員の党員数が急減する一方、なんらかの宗教を有する国民の数はもはや共産党員数の数倍といわれる。すなわち、一党独裁を主張する中国共産党員は中国社会では文字通り少数派グループに過ぎないのだ。中国社会の多数派は宗教人だ。中国共産党は、多数派の宗教人と正面衝突をすれば一時的に勝利したとしても最終的には敗北する危険性があると歴史を通じて学んでいる(「中国共産党員の85%が宗教を信仰」2017年8月6日参考)。

     ソ連・東欧の共産党政権は1980年から90年にかけ、次々と崩壊し、消滅していったが、その改革の原動力の一つは宗教運動だった。ポーランドでもヨハネ・パウロ2世の出現で共産党政権は守勢に追いやれ、スロバキアでは「信教の自由」を求める民主運動が共産党政権を崩壊に導いたことは周知の事実だ(大国・ソ連の復興を夢見るロシアのプーチン大統領はロシア正教と連携して国民の掌握に乗り出している)。

     中国でも気功集団の法輪功運動の拡大に直面した江沢民(当時)国家主席は1999年6月、法輪功メンバーの取り締まりを目的とした通称「610公室」という組織を設立し、弾圧していったが、法輪功は消滅するどころか、さらに拡大している(「中国の610公室」2006年12月19日参考)。

     それでは、「宗教の中国化」とは具体的に何か。中国の憲法では「信教の自由」は明記されているが、キリスト教会は壊され、礼拝参加者は拘束されている。一方、中国共産党の官製聖職者組織「愛国協会」に所属しない聖職者は聖職活動ができないだけではなく、生命の危険すらある。

     海外中国メディア「大紀元」日本語版(3月18日)によると、中国で唯一活動が許されているプロテスタント教会は三自愛国運動だが、その徐暁紅委員長は今月11日、北京で開かれていた中国人民政治協商会議で「教会は西側ではなく中国(共産党)の元で動かなければならない」「社会の安定に影響を及ぼし、政権転覆を企てる反中国勢力の行動は失敗するだろう」と述べている。

     中国共産党政権は昨年、ローマ・カトリック教会総本山バチカンと司教任命権で合意したが、その内容は愛国協会が任命した司教をバチカンが承認するというものだった。だから、香港カトリック教会の最高指導者を2009年に離任した陳日君枢機卿は「バチカンは中国共産党に騙された」と警告を発したわけだ。中国のキリスト信者を保護するという名目でバチカン側が中国共産党政権に大きく譲歩した合意といえる。

     一方、宗教に脅威を感じる中国共産党政権は現在、新疆ウイグル自治区で激しい弾圧と同化政策を行っている。「宗教の中国化推進5カ年計画」は目下、新疆ウイグル自治区で最も具体的に実行されているのだ。中国共産党政権はウイグル自治区の宗教(イスラム教)を壊滅できないとしても、中国化はできると信じているわけだ。

     習近平主席は、「宗教者は共産党政権の指令に忠実であるべきだ」と警告を発する一方、「共産党員は不屈のマルクス主義無神論者でなけれならない。外部からの影響を退けなければならない」と強調したことがある。

     中国は国内の多数派の宗教国民に対し、中国への愛国主義(中国ファースト)を義務付けることで、「宗教の中国化推進5カ年計画」を進める一方、自由主義国や国内の資本家、知識人、宗教指導者を味方の陣営に引き込み、同じ戦線に立たせる「統一戦線工作」を推進させているわけだ(「『中国共産党』と『中国』は全く別だ」2018年9月9日参考)。

     中国共産党が党是としている共産主義思想はどこかキリスト教に似ている。共産主義は共産党を救世主、労働者を選民とみなしているからだ。その観点からいうと「宗教の中国化推進5カ年計画」とは、中国共産党という偽宗教が他の宗派に対して宗教戦争を仕掛けたもの、と受け取れるわけだ。

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