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    中村 仁
    元全国紙経済記者
    石平
    石平
    評論家

    なぜ中国の言いなりに資金を出すか

     在ウィーンの北野充日本政府代表部大使は中国出身の国連工業開発機関(UNIDO)の李勇事務局長とはよほど相性がいいのだろう。北野大使は2016年3月、アフリカ・中東諸国を対象としたプロジェクトのキックオフ式典に参加し、UNIDOが担当するプロジェクト7件のために総額740万ドルを支援すると発表した。あれから3年後の今年3月11日、同じくUNIDOが推進する9件のプロジェクトのために総額580万ドルを拠出すると発表し、李勇事務局長を大喜びさせたばかりだ。

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    2016年3月の式典風景、北野大使(左)と李勇事務局長(右)(UNIDO公式サイトから)

     米英仏など先進主要国がUNIDOから次々と脱退した今日、日本はUNIDOの数少ない貴重なドナー国だ。不思議なことは、李勇事務局長がUNIDOのトップに就任して以来、北野大使は積極的にUNIDOに資金を提供してきている。だから、ウィーンの国連関係者からは、「李勇事務局長の言いなりに日本は資金を提供している」といわれるほど。北野大使に何があったのだろうか。

     日本政府が2016年、UNIDOを通じて支援した国はイラク、モロッコ、レバノン、ソマリア、ヨルダン、エジプト、スーダンの7カ国だ。北野大使は当時、「日本、UNIDO、そして支援を受ける国の3者関係は重要だ。日本政府の貢献が支援国の恩恵、特に若者や女性にとって支援となることを願っている」と述べている。今回はエチオピア、ガボン、イラン、イラク、レバノン、リビア、南スーダン、パレスチナ、シリアの9カ国だ。そして北野大使は「受益国、ドナー国、そして民間分野を連結させるUNIDOの役割を評価する。9件のプロジェクトは『持続的発展目標アジェンダ2030年』に貢献するものであり、人間の安全と人間性開発を結びつける重要なコンセプトを具現化するものだ」と称賛している。

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    2019年3月11日の式典風景、北野大使と李勇事務局長(UNIDO公式サイトから)

     先の国連関係者は、「日本が今回支援する国にイランが加わっている。米国が対イラン制裁を強化している時だけに、トランプ大統領のイラン政策を無視するようなものだ。日本が米国側の怒りを買っても不思議ではない」と解説する。ちなみに、イランのプロジェクトはイラン南東部スィースターンバルーチェスターン州のチャーバハール群都の漁業と関連産業の統合促進のためのもの。プロジェクト自体は軍事分野も核開発とも全く関係がないが、イランを支援するということ自体が米国の神経を苛立たせるというわけ。

     問題は、日本政府がアフリカや中東支援を真剣に考えるのならば、開発途上国支援で実績があり、高い評価を受けている国際協力機構(JICA)をなぜ利用しないのか。経済支援では国際機関経由ではなく、2カ国間支援が主流だ。日本の国益にも合致する。UNIDOのプロジェクトの場合、70%以上のプロジェクト資金が人件費、旅費で消え、現地に投入できる支援は少ないのが実情だ。

     中国人の李勇事務局長は就任直後からUNIDOを中国の開発途上国への経済戦力拠点として利用してきた。すなわち、国連専門機関を中国の国益拡大の戦略的基地化とすることだ。中国にとって、欧米諸国がUNIDOから次々と脱退してもどうでもいいのだ。同事務局長は中国から多くの通商コンサルタントと呼ばれる専門家を呼んでいる。その一方、北野大使と関係を深め、日本からプロジェクトの資金を拠出させている。今月14、15日の両日、東京と大阪でキューバへの投資促進のためのビジネス会合が開催されているが、そのスポンサーはUNIDOだ。李勇事務局長は米国が敵視するキューバやイランへの支援を日本経由で秘かに進めているわけだ。

     李勇事務局長は昨年4月、中国メディアとのインタビューで、「UNIDOは中国共産党と連携し、習近平国家主席が提唱した『一帯一路』プロジェクトを推進させてきた」と述べている。李勇事務局長(元中国財務次官)からは「UNIDOがその大プロジェクトの推進役だ」という自負心すら感じる。

     その李勇事務局長を資金面で支援しているのが日本政府、具体的には北野大使だ。日本政府は中国の新シルクロードと呼ばれる『一帯一路』を支援していない。というより、距離を置いてきた。その「一帯一路」を推進させることに使命感をもつ李勇事務局長を支援するということは、北野大使がそのプロジェクトを間接的とはいえ、支援していることになる。ここに厄介な問題が生じる。日本外務省は中国の国家戦略プロジェクト「一帯一路」を応援する駐UNIDO担当の北野大使の言動を公認しているのか、という問題だ。

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