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    宮本 惇夫
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    中村 仁
    元全国紙経済記者
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    石平
    評論家

    日本教会にもあった聖職者「性犯罪」

     ローマ・カトリック教会最高指導者ローマ法王フランシスコが今年11月に訪日することになった段階で、このコラム欄でも数回予測していたことだが、日本のローマ・カトリック教会でも過去、聖職者による性犯罪が起きていた。月刊誌「文藝春秋」3月号の中でルポ・ライターの広野真嗣氏が「“バチカンの悪夢”が日本でもあった! カトリック神父<小児性的虐待>を実名告発する」という記事を掲載している。児童養護施設「東京サレジオ学園」でトマス・マンハルド神父から繰り返し性的虐待を受けた被害者が著者に答える内容は非常に生々しい。この記事内容は、日本の教会も例外ではなかったことを実証している(「法王訪日前に聖職者の性犯罪公表を」2018年12月28日参考)。

     フランシスコ法王が招集してバチカンで今月21日から「世界司教会議議長会議」が開催される。そこでのテーマは聖職者の未成年者への性的虐待問題だ。日本からも司教会議議長らが参加するが、フランシスコ法王は参加者に「会議に参加する前に聖職者の性犯罪の犠牲となった人と会い、その内容を聞いてくるように」と要請していた。日本教会関係者も犠牲者と会い、その内容に耳を傾けることが大切なわけだ。今回の記事を通じて、過去の忌まわしい内容が明らかになることを期待したい。沈黙してきた犠牲者の数は多いはずだ。

     このコラム欄でも報告したが、神父たちに性的暴行を受けた元修道女の話を紹介した。彼女はその直後、「もはや過去の自分はなくなった」とその当時の思いを告白している。鬱になり、生きる力も失った。その彼女は自身が所属していたカトリック教会を批判することには抵抗があったという。なぜならば、「教会は自分のハイマート(故郷)だったからだ。誰が自分の故郷を批判できるだろうか」という思いだ(「枢機卿の『告白』と元修道女の『証言』」2019年2月9日参考)。

     聖職者の性犯罪の犠牲者がなぜその蛮行をすぐに訴えたり、告白できないか、理解できるだろう。恥ずかしく、悔しいという思いの一方、自身が信じてきた教会で考えられないようなことが起きたのだ。自身の信仰だけではなく、世界観も崩れ落ちていくのを感じただろう。その一方、幼い時から所属してきた故郷を批判することに抵抗を覚える犠牲者が多いのだ。教会側はそれをいいことに聖職者の性犯罪を組織的に隠ぺいしてきたのだ。

     このような不祥事が「イエスの愛」を唱える教会で起きているのだ。残念ながら、教会の歴史はその教えとは一致しない多くの不祥事が起きてきたことを物語っている。例えば、ルネサンス期の代表的世俗法王、アレキサンデル6世(在位1492~1503年)は50人の売春婦を抱えるほど好色家で強欲、脅迫と殺人を繰り返した。同6世の息子の1人チェーザレは17歳で枢機卿に就任する、といった具合だ。

     カトリック教会の歴史の中で汚点の一つは、アフリカからの奴隷貿易に深く関わってきたという事実だろう。食料栽培や銀鉱山の労働者には南米では主に原住民インディオが担ぎ出されたが、体力的に強靭なアフリカから奴隷を連れてくることを進言したのはカトリック教会聖職者だった。

     ピウス9世(在位1846~78年)は1866年、「奴隷を保有することは決して神の御心に反しない」と豪語した。奴隷貿易に批判の声が上がるのは1965年の第2バチカン公会議まで待たねばならなかった。

     自身も若い時、神父に性的接触された経験を有するオーストリアのローマ・カトリック教会最高指導者・シェーンボルン枢機卿はバイエルン放送の番組の中で、「性的不祥事が起きやすい教会の組織とシステムが基本的な問題だ」と述べている。具体的には、「神父は神聖な存在であり、介入できない存在という神父像が出来上がれば、神父は全てを許され、決定できるといった権威主義が自然に生まれてくる」と説明していた。

     ローマ・カトリック教会は今月21日から始まる「世界司教会議議長会議」で教会組織の抜本的な改革を実行しない限り、失った教会の信頼性を回復できないだろう。教会にとっても、フランシスコ法王にとっても、この会議は最後のチャンスだ。もちろん、日本のカトリック教会もフランシスコ法王訪日前に聖職者の性犯罪に関する詳細な報告書を作成し、公表すべきだ。

    (ウィーン在住)

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