ワシントン・タイムズ・ジャパン

素人による疑惑の医療情報サイト「WELQ」の全記事非公開

 ITの大手企業、DeNAが運営する医療情報サイト「WELQ(ウェルク)」が、11月29日にすべての記事を非公開にすると発表。理由は、信憑性のない誤った情報を数多く発信していたことが明らかになったからでした。それに対してDeNAは、「多大なご迷惑をおかけしたことを深くおわびします」とのコメントを出し、専門家による監修を依頼。記事のチェック体制を見直した上で、再開を目指しているようです。

勝手な改変による誤った医療情報が大量発生

 医療に関することは、素人が誤った知識で措置をすると、悪化してしまう恐ろしさがあります。実際に、東京都でクリニックを開業している桑満おさむ医師のもとに、WELQの記事から得た情報で措置をした患者が来院しました。海外旅行でひどい日焼けをしたその患者は、患部に濡れタオルを直接当てて自ら措置をしていたのですが、タオルが皮膚と癒着し、悪化していたのでした。なぜ濡れタオルを当てたのか桑満医師が尋ねると、「先生のブログに書いてあったじゃん」と言われたそうです。しかし、桑満医師は日焼けの措置について書いてはいたものの、濡れタオルで冷やすとは一言も書いていなかったのです。

 なぜこの患者はそんなことを言ったのか、それが分かったのは11月半ばでした。たまたまWELQで興味のある記事を見つけ、サイト内を調べていたら、桑満医師のブログへのリンクが約200本も添付されており、自分ではブログに書いていない対処法がリンク部分に書かれていたことが分かりました。DeNAに問い合わせ、現状を伝えると、今回のような対応がとられたのでした。しかし桑満医師は、「すぐにすべての記事を非公開にする必要はない。それだと読者には元の記事のどこがどう間違っていたのか分からないまま。元の記事に線を引いて、ここがこう間違っていたと分かるようにすべきだ」と話しています。

安価な報酬、事実確認一切なしの素人記事

 なぜWELQではこのような誤った情報が多数記事となって、読まれたのでしょうか。WELQは、DeNAのメディア事業「DeNAパレット」の一部で、「ココロとカラダの教科書」として医療情報を発信するサイトです。もともとはDeNAライフサイエンスが運営していた、医療と健康に関する情報を発信するサイトでした。DeNAパレットに追加されるまでは、品質や信頼性に問題のある記事を掲載するサイトではありませんでした。

 ところが、DeNAパレットに組み込まれたとたん、アクセス数を急激に伸ばし、半年で月間アクセスユーザー数が600万人にまで達したのです。その背景には、多くの読者にWELQの記事をクリックさせる仕組みが関わっていました。検索エンジンでユーザーが検索するであろうワードをいくつか選出し、執筆者にそのワードを順番通りにすべて使ってタイトルをつけたり、本文中に記載することを執筆の条件としていたのでした。そうすることで、多くの人が興味をもつ検索ワードに対して、ページの一番上、あるいは1ページ目に自社の記事がアップされるようになります。そのため、WELQのアクセス数は伸び、大量の記事が多くの人の目に留まるようになったのでした。

 それだけアクセス数が伸びていたにも関わらず、記事の内容が確認されないまま誤った情報が掲載されていたことは大きな問題です。WELQの執筆者の多くはクラウド人材サービスからの執筆者で、医療機関での就業経験や資格は必要なく、作成した記事の医療情報に関する質問や修正は一切依頼されることがなかったそうです。また、それぞれの記事は2000文字以上、1000円という報酬が執筆者に与えられていました。

 安価な報酬で、ただ記事を多く発信できればいい、そんなようなDeNAの思惑が見えてきそうです。ビジネスなので利益をより多く生む方針が良いのは当然ですが、読者のことは一切考えていない気がしてなりません。また、記事を書く執筆者に対しても、ただの記事製造機のようにしか考えていないのではないでしょうか。自社の利益のことしか考えていない記事の発信方法に読者としても、同じ執筆者側としても憤りを覚えます。

100%信じきれないネットの情報

 とはいえ、DeNAだけではなく、ネット上の情報がどれだけ信用できるものなのか、読者側としても執筆者側としてもきちんと検討する必要があると思わされる出来事でした。私的な話ですが、最近はよく妊娠、出産、育児に関する情報サイトを見る機会が増えました。特に妊娠初期は分からないことだらけで、例えば「流産になるんじゃないか」など、ちょっとした不安があるとすぐ検索エンジンで調べてサイトの情報を得ていました。これまで読んだ記事の中で惑わされたものがあるわけではありませんが、この記事の内容が本当に正しいのか疑念が沸き、妊婦検診の時に産婦人科の医師と話すまでは安心できないと思ったこともあります。

 また、執筆側としては、ある企業からサイトに掲載するための記事を書いてくれと依頼を受けた際に、ネットからの情報をもとにしていいと言われることもよくあります。完全なるコピーは避けるべきだが、参考程度ならいいという条件なのですが、誤った情報を提供するわけにはいかないという責任が執筆者にはあるということを肝に銘じながら、さまざまなサイトや、ニュース記事などを検索した上で執筆するよう心がけています。しかし、何が真実なのか不透明になる個所もあり、ネットの情報だけでは行き詰る時もあります。私は医療情報を手掛けることはありませんが、そのような記事を書く際にはやはり専門家の知識を踏まえなければ今回のような問題が起きますし、わざわざリンクをはっているのに、その情報を書き換える必要はまったくありません。ネットだけの情報だけではなく、専門家の著書なども参考にしなければ正しい情報は発信できません。執筆者側も安い報酬でのことなので、それほど記事の内容を吟味する必要性を感じていなかったのかもしれませんが、誤った情報を発信することの恐ろしさを今回の件で実感してほしいものです。そして、それは同時に自分自身にも言えることで、適当な不透明な情報を安易に書くべきではないと改めて肝に銘じさせられました。

 これからDeNAがどのような対応をしてまた情報を発信していくのか分かりませんが、自社の利益ばかりを追求して読者をなおざりにするような記事を掲載することは二度としないでほしいと願うものです。

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