ワシントン・タイムズ・ジャパン

崩れた地球規模の大気と水の循環サイクル

気候変動を考える~国際学術会議(IAP)の声明から~

 41年前に初めてインドネシアの熱帯雨林に接して、その後、加速度的に減少する熱帯雨林の状況を見ながら地球環境が危機的な状況にあることを現場で身をもって感じてきている。

熱帯雨林

インドネシア東カリマンタン州のわずかに残された熱帯雨林

 1999年6月から熱帯雨林の保護と植林による再生に取り組んでいる。「温暖化、温暖化」と伝えられているが、一番大きな問題は「地球の気候」「地球の持つエコシステム」に一番大きな影響を与えるのが熱帯雨林だからである。

 この数年、地球規模の気候変動が一層顕著になり、日常生活の中でも大なり小なり「気候の異変」を感じておられる人が増えてきているが、現在のこの状況も熱帯雨林減少の現場状況から判断すると、残念ながら“想定内の事態”である。

 年々、世界各地で気候変動による異常気象のために、洪水や干ばつ、風害などさまざまな被害がもたらされ、人類の生命や財産が被害を受けている。

 二酸化炭素やメタンによる温暖化が大きく取り上げられて伝えられているが、気温の上昇による温暖化だけではなく、「地球規模の大気と水の循環サイクル」が大きく崩れていることで異常気象を招いている。

 国際学術会議(IAP)が2009年に発表した「声明」は的を射た内容なのでご紹介をする。
※インターアカデミーパネル(InterAcademy Panel-IAP)は、世界のアカデミーのネットワークで、政府、国際機関に対する諮問・提言、人々の科学面における国際的関心に対する情報提供などについて協調して取り組むことを目的として1993年に設立された。現在、加盟機関の数は80を超えている。

熱帯雨林と気候変動についての声明の要旨から

(IAP Statement on Tropical Forests and Climate Change)(仮訳)

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 この声明で述べられている要旨は以下の通りで、一般の人々からは理解し難いかもしれないが現場を良く知る人間から見ても素晴らしい見識だと感じている。

以下、●印がIAPの声明の要旨であり、※印は現場に軸足を置いた筆者の見解である。

まず、第一に
●森林伐採問題への対応なしに気候変動問題の解決はありえない。

※二酸化炭素の排出による温暖化を中心に考えている人々には意外かもしれないし、それほど優先順位の高い対象ではないと考えられているかもしれないが、「気候変動の主因」は「森林伐採問題(減少)であると位置づけている」点が素晴らしく納得いく見解である。

●2050年までに80%二酸化炭素排出量を削減するという目標を達成するには、将来ではなく、今すぐに、熱帯雨林の伐採に対して対応を行わなければならない。

※森林減少の中でも特に「熱帯雨林の破壊、減少」を止めない限り、2050年までに80%の二酸化炭素の削減目標を達成するには、今すぐに対応しなければならない。森林減少による二酸化炭素の排出は、世界の排出量の約17%=運輸部門の排出量に匹敵する。インドネシアは森林の減少による二酸化炭素の排出量を加えると米国、中国に次いで世界第3位の排出国になる事実からも熱帯雨林の重要性が判る。

●森林は、天然の炭素回収・貯留機能を提供し、降雨パターンを調節することを通じて、気候システムにおいて重要な役割を担っている。持続可能な森林管理は、気候変動の緩和に大きく寄与することができる。

※森林を構成する樹木は、大気中の二酸化炭素を吸収し、固定、貯留している。熱帯雨林は降雨の70%を大気中に蒸散させる役割を果たすことを通じても地球の気候システムに大きく関与している。樹木による木蔭の効果一つをみても気象の緩和に大きく貢献している。

●熱帯雨林の伐採による二酸化炭素排出は、世界全体の排出量の約17%に相当する。この放出源への注目を怠ると、気候変動問題の解決に向けた地球規模での努力が大きく損なわれる。

※森林の減少による放出と森がなくなったことによる吸収、貯留機能の喪失は気候変動に大きな影響を与えている。

●自然のままの健全な森林は、食料、エネルギー、水、災害時の避難所、洪水防止等のサービスを提供することで、非都市域に住む人々の気候変動に対する脆弱性を緩和し、気候変動影響に対する適応を可能にする。

※健全な森林は、人類のみならず全ての地球生命の根源的な役割を果たしている。歴史的にも過去の文明は、森を無くして滅んでいる事実がある。

    ~森無き地球に人類の未来はない~

●既存の手段、仕組み、資金等を活用し、開発途上国が自国の森林を維持できるように資金を提供すれば、新たな富を産み貧困に終止符を打つ契機となるはずである。

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※この考えに基づいてREED+として取り組みが始まっているが、先進国と開発途上国の立場の違いから、なかなか溝が埋められずに進展のスピードが緩やかである。
 温暖化による気候変動のスピードには程遠いようである。
 それぞれの国が国益という観点を離れて「地球人類益」という価値観で取り組む必要がある。国を超えて地球市民としての解決策を探る智慧が必要である。

●「気候変動枠組条約に関する締約国会議(UNFCCC negotiations)」の中で合意されるいかなる事項も、その具体策を計画し実行する際には、森林の居住者及び森林に依存して暮らす人々の権利を尊重し、かつ森林伐採をもたらさない持続可能な開発の道筋を奨励するものであるべきである。

※貨幣経済の進展により地域的にきわめてアンバランスな状況を生み出している。このことが環境破壊につながっている現実を見極めて、基本的に全人類が生き続けるために「分かち合う」という価値観が必要である。

自然に摂理に従った解決策の為に人類の英知を発揮するのは今である。

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