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献血のすゝめ、見返りは快適空間での糖分と休息

 人通りの多い駅前やショッピングセンターの前で、献血センターのスタッフが「血清が不足しています」「○型の方はいらっしゃいませんか」と通行人に声をかける。そんな光景はそう珍しいものではない。私が通う大学内でも年に何度か献血が行われており、学生たちはお礼としてもらえる菓子やジュース目当てに、空いた時間を利用して血液を提供しに行く。
 そう、献血というシステムが成り立つ一番の要因は、この献血後のご褒美にある。

 渋谷のハチ公前に献血所があるのをご存知だろうか。ここは最も手厚い対応を施してくれる献血センターのうちのひとつだ。
 ある日曜日の午後、用事を済ませて電車で帰宅する途中、私は献血カードに記載された次回献血可能日を過ぎていることに気がつき、渋谷駅にて下車し、献血センターへ向かった。
 エレベーターを上がって部屋に入ると、視界に真っ先に飛び込んできたのは無料の自動販売機。コーヒーやお茶、ココア、レモンティー、炭酸飲料など様々な種類のドリンクが紙コップに注がれたものを人々は遠慮なく飲んでいる。自分の献血の番がくるまでの間と献血後のしばらくは、血圧をあげて血液を採りやすくするため、また採血後の貧血を防ぐため、ドリンクを好きなだけ飲ませてもらえるのだ。クッキー、煎餅、チョコレートなどのスナックもしっかり用意されており、血液を提供しに来た老若男女は、係りの人に呼ばれるまでの時間をひたすら無言で飲み食いして過ごしていた。血圧が一定値を下回ると献血ができないので、基準値すれすれだった私は血液検査をしてくれたおばちゃんに“貧血を起こすかもしれない人リスト”に認定され、半ば強引に神戸ドーナツを食べさせられた。

 数十分にわたる採血後、貧血を避けるため30分以上は安静にしているようにと言われた。献血室を出ると、壁一面に並んだ漫画と快適なソファが出迎える。「ドラゴンボール」や「ワンピース」「宇宙兄弟」などの有名どころから、ちょっぴりマイナーな漫画まで勢ぞろいで、時間をつぶすには最適の空間だ。大きな窓から渋谷のスクランブル交差点を一望しながら、リクライニングのソファにもたれて漫画を読む大人たち。その光景は、ここは本当に献血センターなのかと戸惑うほどである。30分といわず何時間でも居座っていたい人もおそらくいるのではなかろうか。
 極めつけは、去り際に手渡されるお土産のハーゲンダッツ。私を含め気の早い輩は、各々の選んだ味のハーゲンダッツを頬張りながら献血センターをあとにした。

 どんなに親切な人だとしても、何の見返りもなしに自らの時間と血液を他人に提供しようと思うと多少抵抗があるだろう。しかし、ここまで手厚くお礼をしてもらえるなら、頼まれなくたって献血しに行きたくなるというのが人の性である。
 渋谷だけでなく、新宿、秋葉原、押上などにも快適空間な献血センターは少なからず存在する。学校帰りや仕事帰り、一日の予定が終わって時間に余裕があるときには、近くの献血センターに立ち寄って、血液と引き換えに糖分と休息をとってはいかがだろう。自分もちょっと得した気分になるし、何より自分の血液が人の命を救うかもしれないのだから。

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