«
»

小池閣下、本丸突入は時期尚早では?

 東京都の予算総額は、一般会計に特別会計と公営企業会計を加えると13兆円を超え、その規模はインドネシアやフィンランドの国家予算に匹敵し、3兆円から4兆円規模の大阪府や神奈川県と比較しても群を抜いている。

 都庁の予算規模は都知事の権力の大きさを説明する際によく使われるが、莫大な予算は都知事の権力を巨大化するだけでなく、その下で働く多くの都職員に「天下り」という恩恵をもたらしている。

 その都庁役人の「天下り」問題に、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの小池百合子都知事が切り込むという報道が流れている。

 都庁に限らず霞が関も含めて日本の行政システムの闇は深く、その根底には「天下り」システムがあると、私は考えている。財政政策の中心が時代遅れの土木工事に消え、先端的な科学技術への投資額が少ないのも、パチンコという明らかに違法な私的賭博が町から消え失せないのも、欧米で認可されている最先端の薬品が日本で認可されず、救える命が救えないのも、すべては「天下り」システムと深いつながりがある。

 それゆえ、日本という国を本格的に掃除するためには、「天下り」システムを潰すしか手はない。

 しかし、「天下り」は都庁だけでなく、日本の役人達の「本丸」である。それゆえ、小池氏がこれに本気で切り込むとなると、霞が関も含めたすべての役人達を敵に回す危険性がある(霞が関からすれば、都庁は巨大と言えども「出城」に過ぎないが、火の粉が移るのを防ぐ必要がある)。

 その大戦(おおいくさ)をするだけの力が今の小池都知事にあるだろうか? 残念ながら、現段階では小池知事にそこまでの権力はない。なぜなら、彼女の人気は一時期の小泉純一郎総理や橋下徹大阪府知事のように凄まじいが、都政改革の実績が今のところ何一つないからである。

 小池知事が就任して2カ月、築地市場の豊洲移転問題を筆頭に都庁の問題点を次々と洗い出している。それは、素晴らしい政治的成果と言えるだろう。しかし、問題点の指摘だけならば、第一次安倍政権時代の民主党にでもできた。行政のトップは、問題点を改善できて初めて「実績」と言えるのではないだろうか。そして、実績の積み重ねが都民・国民の人気と相まって、小池都知事の権力を絶大なものにする。

 役人の天下りという「本丸」に切り込むのは、そうなってからでも遅くはない。

 幸か不幸か、都庁役人の身内企業やゼネコンへの天下りは、警察官僚のパチンコ業界への天下りや、厚生官僚の製薬会社への天下りのように、「黒」を「白」とするごとき甚大な被害を国民にもたらすものではない。オリンピックに絡めて問題提起するのは良いが、本格的な狼煙を上げるほど喫緊の問題とは思えないのだ。

 都知事の任期は4年ある。その間には築地問題もオリンピック施設問題も片付くだろう。その実績を引っ提げて、つまらない役人発のリークでは小池人気が揺らがない程の力を付けてから「天下り」問題に手を出しても遅くはない。

 「小池閣下、本丸突入は時期尚早でございます。まずは敵を裸城同然にしてから攻めましょう」。そう、進言する側近が小池知事にいることを期待したい。

5

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。