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ISISの戦略 日本もテロ標的の可能性

 2015年10月22日の午後、筆者は、NPO法人中東平和フォーラム主催のツアーでイスラエルのINSS(国家安全保障研究所)を訪れた。民間ではイスラエル最高のシンクタンクである。

 上級研究員ヨラム・シュバイツアー氏と準研究員エイナブ・ヨゲブ女史から2時間ほど、ISIS(Islamic State of Iraq and Syria)イスラム教スンニ派の過激派組織とメディアの情報操作等について話を聞いた。

 シュバイツアー氏は、ISISは既成体制が崩壊する中、これを好機と捉え便乗して伸びてきた。彼らが考えていることは、イスラムが生まれた時代、その後のカリフ時代の帝国を現代の戦術を使って作ることであり、テロを戦略として使い、国家を支配しようとするものだ。ISISは西側社会と共存できるような生半可な組織ではなく、西側が手を出すと「西側は侵略を行っている」と思われるので、同じ言語、同じ宗教のアラブの人達が解決しなければならない、と語った。

 ヨゲブ女史の「イスラエルは国際社会のイジメにあっている」という話は興味深かった。国際社会のメディアの情報操作によってイスラエル国民や政府に影響を受けている。戦後日本が経験したように、メディアの情報操作によって、国民が自分の国を嫌いになり、国を否定し、武器を捨てろと叫ぶようになったというのだ。「パレスチナの弱い人たちをイスラエルが差別している」「イスラエルが悪い」という情報操作で、イスラエル国民自身が、自国に不満を抱き始めた。

 国際社会は、イスラエル、パレスチナの両者が同じテーブルにつけるように協力すべきで、第三者がバイアスをもって一方を貶めるのは平和の貢献にならない。

 第63回エジンバラ国際映画祭で、イスラエル大使館から同映画祭への寄付に対するケン・ローチ監督のボイコット運動宣言が波紋を広げた。ケン監督の主張は、「イスラエルの監督の映画が上映されることではなく、非道な行いをしているイスラエルのような国から映画祭が寄付を受け取ったことへの反対」ということだった。

 これが“BDS”-Boycott(ボイコット)、Divestment(投資の撤収)、Sanctions(経済制裁)だ。アメリカの哲学者ジュディス・バトラーは“BDS”の中心人物でパレスチナ和平案として「イスラエルはヨーロッパへ帰れ」と言っている。彼らの声が波として広がっている。「イスラエルは、パレスチナを差別している」という声だ。昔、アメリカでアフリカ系の人々を差別したのと同じようだ、と言っている。それが、アメリカとイスラエルの関係を悪くしている、とヨゲブ女史は語った。

 質疑応答の時間になって、出席者の中から、「日本はISISのターゲットになりうるのか?」「2020年のオリンピックではどうか?」という質問が出た。それに対しシュバイツアー氏は、「1972年ミュンヘンオリンピックでイスラエル選手11人が殺された。オリンピックに対し、間違いなくテロリストは高い関心を持つだろう。日本だろうが関係ない。ムスリム、中国人、フランス人、イスラエル人であろうが関係ない。彼らの言う通りにする人々以外は誰でも殺す」と答えた。2020年東京オリンピックでは、日本もテロの標的になる可能性があるということだ。

 2015年9月9日、ISISはインターネット上の英字機関紙「ダビク」第11号で、ISISに対抗する国々の国民を攻撃するよう支持者に呼びかけ、具体的な攻撃対象として、インドネシアやマレーシア等に駐在する日本の外交官も挙げた。特集記事「新十字軍との戦い」の中で、米主導の有志連合に加担しているとして、日本の外交使節への攻撃を改めて呼びかけたのだ。過去、ISISのこうした指令に呼応したテロは頻発しており、単なる脅しとして侮ることはできない。

 筆者が先日4月29日、新宿を歩いていると、道のあちこちに警察官が立っているのが目についた。テロ等が発生する恐れが払拭できない中、5月に行われる伊勢志摩サミット(先進国首脳会議)に万全を期すための警戒警備なのだろう。翌日4月30日、報道によると、首都圏で過激派「革労協反主流派」でテロやゲリラ実行を担う非公然組織「革命軍」の「ゲリラ計画」が摘発されたという。今回のサミットは、2020年東京オリンピックを前に、警備の試金石と位置づけられる。今や、日本も例外ではない、全ての国がテロの脅威に晒される時代になった。2020年の東京オリンピックが成功裏に終わって欲しいと思う。

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