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フロリダの女子会

マイアミの風

 バスでサラソタに行ってきた。マイアミからグレイハウンドのバスで7時間かかるフロリダ中西部メキシコ湾に接する港町である。友人のルーシーを訪ねて一晩泊まりで行ってきた。

 ルーシーは93歳で一人住まいだ。バスで行くと伝えたら「バス停まで迎えにいくわよ。そして夜はレストランにいきましょう」。いやあ何といっても93歳ですよ。ひとりで自宅まで行き着き、レストランに行かずにすむ方法を固く心に決意して出発。グレイハウンド専用のバス停しかとまらない。そこで客を降ろし、乗せる。バス停では運転手がぼそっと一回だけバス停の名前を呼ぶだけだ。

 サラソタのバス停に着いて下りたのは私だけでしかも見渡すかぎり、家もなく歩いている人もいないチョー田舎。タクシーどころか車も通っていない。さすがにうろたえた。ここからルーシーの住む街中に何とか行き着かねばならない。

 すると何というかとっぽい感じの青年がふらりと通りかかるではないか。もうこの青年に頼るしかない。突然東洋のおばさんに呼びかけられてギョッとした風だが、意外と気のいい青年でバスの案内を引き受けてくれた。するとそこに市内バスが通りかかり、青年、バスの運転手と二人の男性に親切にしてもらった。

 青年にあなたサラソタの方?とたずねると、へー生まれも育ちもサラソタで熱い人情の持ち主でやんすと寅さんばりの挨拶がかえってきた。こういうわけでバス停まで迎えにこないようにする件はクリアできた。

 ルーシーの自宅近くのデリカテッセンでスープ、コールスローのサラダ、えび料理などを買ってレストランに行かずにすむ方法もクリア。ルーシーはロシア系ユダヤ人でオーケストラの首席バイオリニストを長く勤めたひとである。長身でエレガンシー、居間には現役時代の写真が飾られている。

 シカゴに住む娘さんが一人住まいの母親を心配してタブレットを渡していて、私に写真をみせようとするのだがなかなか時間がかかる。それを見ながらよもやまばなし。スープをあたため食べ始めると、あら、おいしいとレストランにいくことなど忘れたようで、私もほっとする。

 食事がすむと「エリコ、飲みましょう」とグラスと赤ワインを持ってきた。ふだんは飲まない私だが、彼女の楽しい様子に二人で気合をいれて「サルーテ!」と乾杯。オールドガールズの意気軒昂な女子会は続く。

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