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中国、攻めから守りに 南・東シナ海の覇権放棄か

■強まる台湾への軍事圧

 2020年までの人民解放軍海軍は、南シナ海・東シナ海で軍事演習を行っていた。人民解放軍の軍事演習は次第に縮小し、2021年になると以前のように軍事演習を宣伝しなくなる。それどころか、イギリス空母打撃群が南シナ海に到達すると、威嚇はするが軍事演習で返礼しない。

 アメリカ海軍・イギリス海軍の活動が南シナ海で活溌化すると、人民解放軍の存在は南シナ海から減少。そんな時に、中国大手企業の破綻危機が囁かれるようになると、人民解放軍の軍事的圧力が台湾に集中するようになる。

 南シナ海・東シナ海の制海権をアメリカ・イギリスに奪われ、中国国内では大企業の破綻危機で資金不足が囁かれる。比例するかのように、台湾を脅すことに奔走する。台湾を脅す裏では、中国の軍事・覇権・経済が破壊する動きが見え隠れしている。

■覇権を捨てた中国

 覇権とは言葉による指導力であり、軍事を背景にした外交。これは基地から戦場まで、軍事力を継続的に往復することで得られる。平時では軍事演習が覇権の道具に使われ、継続的に軍事演習を行うことで制空権・制海権を獲得する。

 2020年までは南シナ海における人民解放軍の存在感はあった。だが軍事演習が減少したことで、人民解放軍の存在感が低下。2021年になると、イギリス空母艦隊の往復で、南シナ海の制空権・制海権は、反中国のアメリカ・イギリスを中心とした連合軍のものになった。

 中国は南シナ海に人工島を建設し、基地群で南シナ海の制海権を得ようとした。だが3000年の戦争史では、基地を置いただけでは制海権を得られない。基地を往復する艦隊が存在するから制海権が得られる。

 最近の人民解放軍海軍は、アメリカ海軍・イギリス海軍の顔色を窺いながら行動しているように見える。つまり人民解放軍は、アメリカ海軍・イギリス海軍が居ない場所を狙い活動している。

■東シナ海を失った人民解放軍

 人民解放軍は国家の軍隊ではなく中国共産党の私兵。だから各国の軍隊のように地方分権方式ではなく、中央集権方式を採用している。地方分権方式なら、自国領土の各地に基地を配置する。それに対して人民解放軍は、有力な基地は北京周辺に限定される。地方の省は軽整備・補給ができる程度。

 中国共産党は地方の反乱を警戒し、他の省には基地を建設しない。仮に建設すれば、敵勢力の戦力になる。だから地方には基地を建設しない。仮に地方に有力な基地を置く時は、北京から直接配置する方式になっている。

 このため南シナ海には人民解放軍の人工島と基地群が存在するが、これらは東シナ海を中継しなければ、直ぐに孤立する運命を持っている。つまり南シナ海周辺の海岸線は、南シナ海の基地群を支援する能力が低い。

 このため東シナ海は、人民解放軍には生命線。同時に、アメリカ・イギリス・日本から見れば、東シナ海を獲得するだけで、人民解放軍海軍を渤海に閉じ込めることができる。人民解放軍海軍は、東シナ海を中継して南シナ海・太平洋に出入りしているが、敵に奪われたら、出撃も帰還もできない。

 このため人民解放軍は、絶対に東シナ海を手放してはいけないはず。実際は、人民解放軍の活動が東シナ海で低下している。本来なら上海から九州の方向で、継続的に空軍機・艦艇が往復するはず。

 人民解放軍に戦略があるなら、上海から九州の方向で、東シナ海の制空権・制海権を軍事演習で獲得する。そうでなければ、人民解放軍は南シナ海・太平洋への進出ルートを失う。さらに、人民解放軍は南北に分断されてしまう。それでも東シナ海で軍事演習を行わないのは、平時の段階での東シナ海の制空権・制海権を諦めた可能性が高い。つまり、中国共産党は東シナ海の覇権を放棄したことを意味する。

■南・東シナ海で存在感低下

 最近の人民解放軍は、台湾への軍事的圧力だけが目立つ。南シナ海・東シナ海では存在感が低下しているが、これは人民解放軍が、攻めから守りに変えたからだと推測する。さらに中国大手企業の破綻危機が囁かれるように、中国共産党の資金が枯渇している可能性もある。つまり残った資金を台湾に集中し、守りの方針に切り替えた。

 台湾への軍事的圧力の方向は、台湾海峡とバシー海峡に向けられている。この海域は海上交通路であり、アメリカ海軍・イギリス海軍が太平洋・南シナ海を出入りする。人民解放軍の意図は、海上交通路を遮断して仮想敵国の経済を破壊すること。さらに、アメリカ海軍・イギリス海軍の連絡線を遮断することが目的だと推測する。

 これは積極的な攻めではなく、開戦と同時にゲリラ戦で挑む守りの策。初期段階から、アメリカ海軍・イギリス海軍の攻勢を前提としており、南シナ海・太平洋の往復を妨害することで、持久戦を目論んでいる。

■台湾は面子のため

 中国共産党にとって、台湾は面子を保つ最後の砦。しかもアメリカ海軍・イギリス海軍が往復する海域が近く、人民解放軍の活動ができる海域。東シナ海の争奪戦を放棄し、台湾付近に集中すれば、武威を示すと同時に、海上交通路を遮断することもできる。

 台湾への軍事的圧力で存在感を得られるなら、南シナ海・東シナ海を失ったことを誤魔化すことが可能。各国のメディアが南シナ海・東シナ海の活動減少を忘れ、台湾有事を報道すれば、人民解放軍・中国共産党の面子が保たれる。

 もう一度覇権の意味を考えるべきだ。人民解放軍の軍事演習が南シナ海・東シナ海で減少した意味を考えるべきだ。すると人民解放軍の活動が、台湾海峡とバシー海峡を封鎖することに限定していることが分かる。

 これは人民解放軍が、攻めから守りに変えた証。台湾への軍事的圧力だけを見るべきではない。中国共産党は南シナ海・東シナ海の覇権を放棄し、守りで状況の長期化を選んだ。今度は中国共産党が守りになり、アメリカ・イギリスを中心とした連合軍の攻勢のターンになったのだ。

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