ワシントン・タイムズ・ジャパン

ファーウェイCFO・孟晩舟氏釈放の裏事情

 こんにちは、元・中国人、現・日本人の漫画家の孫向文です。

 9月25日、中国大手IT企業ファーウェイの最高財務責任者(CFO)孟晩舟氏が釈放され、カナダから中国広東省の深センに帰国しました。孟晩舟氏が深センの空港に到着すると、大勢の中国人が中国国旗を持って歓迎しました。しかも皆揃って中共を賛美する歌を歌って盛り上げました。

ファーウェイの最高財務責任者(CFO)孟晩舟氏 (Wikipediaより引用)

ファーウェイの最高財務責任者(CFO)孟晩舟氏
(Wikipediaより引用)

 しかし、日本の主要メディアが報道したのはここまで。「中国人は一致団結していて愛国心がすごいな」と感心した日本国民が多かったのでないでしょうか。今回は孟晩舟氏帰国の背後で、中国共産党が仕組んだサル芝居について解説していきます。

 実は9月25日はちょうど、iPhone13シリーズの発売日でした。中国各地のアップルストアで多くの人が行列をつくって、iPhoneを爆買いする様子がネット上に拡散されました。

 ではなぜ中国人は、孟晩舟氏の釈放と帰国を祝っていながら、ファーウェイの店頭でファーウェイ社製のスマホを買って孟晩舟氏に感謝しないのでしょうか!?
なんとも皮肉な話です。さらに、孟晩舟氏がカナダから帰国する前に、記者の前に現れた時は、フランスのブランド、セリーヌのワンピースを着ていましたが、深センの空港に着いた時には、全身真っ赤のワンピースに着替えていました。愛国心をアピールしたかったのでしょうが、実はそのワンピースはアメリカのブランド、キャロライナヘレラでした。

 次にいくつか不審な点をまとめました。

●孟晩舟氏の国籍はどこなのか?

 孟晩舟氏が深センの空港に到着した際、手に持っていたのは「黒い表紙」のパスポートでした。上部に英語で「PASSPORT」と書かれていました。どこの国のパスポートかは確認できませんでしたが、赤い(小豆色)中国パスポートでないことは明らかでした。つまり空港の「愛国者」たちが出迎える孟晩舟氏は中国国籍離脱済みであり、既に「中国人ではない」ということです。黒い表紙のパスポートは、カナダと香港のパスポートです。つまりカナダか香港のいずれかの国籍だということがわかります。本人はカナダに2棟の豪華別荘を所有しています。カナダの法律上、少なくともカナダのグリーンカード(永住権)を持っていなければ、購入はできません。

 一方、香港パスポートだとしたらどうでしょう。中国人が香港のパスポートを入手するのは簡単ではありません。その条件は:

①中国政府のスパイ
 中共は海外にスパイを派遣するため、香港パスポートを工作員に発給します。いざという時に逃げやすくするためです。孟晩舟氏が中共のスパイであれば、合点がいきます。

②富豪商人
 頻繁に海外で仕事をする人は香港パスポートを巨額で購入できます。香港は、日本などビザ免除国が多いからです。

 孟晩舟氏は元夫との間に3人の子供が、現夫との間には1人の娘がいます。4人の子供と2人の旦那はカナダ国籍です。本人だけが中国国籍を保持しているというのはありえません。

●中国の露骨な人質外交

 マスメディアは報じませんでしたが、バイデン政府が孟晩舟氏を釈放すると発表した当日、在中国カナダ大使館はすでに中国政府から、死刑判決を受けた2名のカナダ人を釈放するという知らせを受けていました。2名は麻薬密輸の罪で死罪判決だったのに、なぜこのタイミングで釈放されたのでしょうか?
つまり、2名のカナダ人は冤罪だったというわけです。

 これは中国共産党による露骨な人質外交だったのです。カナダのトルドー首相はわざわざ空港に行って、救出された2名のカナダ人を抱きしめるパフォーマンスをしました。釈放された人質の1人マイケル・スパバ氏を空港で出迎えたのは彼の家族でした。妻がすぐにマイケル・スパバ氏を抱きしめました。しかし、孟晩舟氏は元夫との間に3人の子供、現夫との間に1人の娘、大切な家族6人が全員カナダに住んでいるにもかかわらず、なぜ母親である孟晩舟氏1人だけが、中国に帰国したのでしょうか?
どう考えても本人の意思でないことは明らかです。

 そして、肝心なのは、孟晩舟氏が深センの空港に到着した際に、ファーウェイの創立者である、孟晩舟氏の父親・任正菲氏が現れなかったことです。家族を大切にする中華思想ですが、孟晩舟氏の家族の中で、帰国に際してメディアに現れた人はいませんでした。

 実は任正菲氏はかつて、「アメリカ政府とカナダ政府が、私の娘を公正に裁判すると信じています。だから心配していません」「私はアメリカのGAFA(グーグルなど米巨大IT4社)などの企業を尊敬しています。アメリカには言論の自由があり、そのため企業は円滑に活動することができます」と密かに中共と習近平の圧政に不満があることをメディアにコメントしました。

 つまり任正菲氏は今回の習近平による政治パフォーマンスが分かっていて、それに乗せられないように、メディアの前に現れなかったのです。任正菲氏は、習近平政権に大きな不満を持っています。孟晩舟氏は深センの空港で行った記者会見で、「習近平主席のおかげで無事に帰国できました」と習近平だけに謝意を表明しました。中共内の派閥闘争は激しく、今回の帰国芝居が、習近平が画策した人質外交だったのは明らかです。

 実は民主派の陳破空氏によると、中国政府は孟晩舟氏ら家族に、空港で出迎えることを要請しましたが、家族全員が拒否しました。

●中国が主導する孟晩舟氏帰国

 今回、孟晩舟氏が帰国のために乗ったのはファーウェイ社のチャーター機ではなく、中国国際航空会社が所有するボーイング777の大型旅客機でした。ボーイング777はボーイング社の航空機の中でも最大級で、安定性の高い機体です。この旅客機の往復の運賃は、なんと600万元(約1億円)、全部中国政府が支払ったと中国機関メディアが報道しました。つまりこれは、中国国民の税金の無駄遣いに他なりません。

 ここまで好待遇にしたのは、中国が「大国である姿」をアピールするためのパフォーマンスです。

 この旅客機のカナダに行く便名はBJN592で、中国に戻る際にはCA552に変更されました。いつもは中国から東京までの便です。本来は2日間に一度の飛行がありますが、調べたところ、この機体は今年の9月6日から20日間、東京に行く便から外れていました。特別な理由がない限り、こうした措置は行いません。つまりアメリカのバイデン政権は9月6日時点ですでに、孟晩舟氏を釈放することを習近平主席に伝えていた可能性が高いと言えます。そのため20日間もこの機体を整備して、孟晩舟氏を送還するミッションを準備していたと推測しました。

 孟晩舟氏の帰国で分かってきたのは、ファーウェイがさらに習近平政権に利用され、海外で情報窃盗の「スパイ機器」として強化されるだろうということです。今年は習近平がアリババやテンセントなどの大手IT企業の規制、管理を強化していくでしょう。そして、孟晩舟氏は中国国内の政治的からくりが分かり、今後のファーウェイの運命を薄々理解したことでしょう。ファーウェイは今後、習近平に対して低姿勢で、靡(なび)いてくるものと予見できます。

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