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イギリス海軍にバカにされる人民解放軍海軍

■英海軍、中国潜水艦を探知

戦争学研究家 上岡龍次氏

戦争学研究家 上岡龍次氏

 イギリス空母打撃群は2021年5月に出港。その後アジアに向かうために、道中で外国軍との合同訓練を実施。地中海・紅海・インド洋・南シナ海に至り、人民解放軍海軍はイギリス空母打撃群に軍事演習を臭わせて恫喝。だが人民解放軍海軍は、軍事演習の内容をメディアに向けて公開していない。ネットでも公開されず、脅しただけに終わっている。

 イギリス空母打撃群は人民解放軍海軍の脅しを無視し、南シナ海を堂々と航行。その後フィリピン海に至ると、イギリス空母打撃群は中国の潜水艦2隻を探知。潜水艦は探知されたら終わりなのだが、南シナ海からフィリピン海までイギリス空母打撃群に何もできないまま終わっている。

英空母「クイーン・エリザベス」、中国原子力潜水艦が追跡 6時間以内に発覚(大紀元)https://www.epochtimes.jp/p/2021/08/77098.html
■バカにする理由

 第二次世界大戦までの潜水艦は単独で作戦できた。潜水艦を集団で用いても、ドイツ海軍のUボートの様に戦果を上げた。この当時は航空機の航続距離の関係から、潜水艦探知網に穴が多かった。当時の潜水艦は、この穴を用いて活動できたのだ。

 だから第二次世界大戦までは、敵の潜水艦から自軍の潜水艦が空母を守っていた。だが第二次世界大戦後から立場が変わる。航空機の航続距離が伸びたことと、潜水艦を探知する技術が進歩した。その結果、対潜水艦哨戒機の数が揃うと、対潜水艦探知網から穴が消えた。

 こうなると原子力潜水艦だとしても活動が難しくなる。原子力潜水艦の長所は航続距離だが、探知されたら終わり。航空機は駆逐艦よりも早く移動するので探索範囲も広い。そうなると原子力潜水艦も探知されるようになる。

 その結果、潜水艦は自軍の戦闘機隊が獲得した制空権下でなければ活動が難しくなった。第二次世界大戦後の空母打撃群に組み込まれた潜水艦は、空母の戦闘機隊が獲得する制空権下で活動するように変わっている。つまり、空母が潜水艦を守る立場に変わった。

 この現実が潜水艦運用なのだが、人民解放軍海軍の潜水艦は単独でイギリス空母打撃群に挑んだ。これは第二次世界大戦後からの変化を、人民解放軍海軍が理解していない証。潜水艦を集団で投入しても、敵艦隊に探知されたら終わり。対潜水艦ヘリコプターに付き纏われ撃沈される。もしくは、駆逐艦との連携で撃沈される。

 潜水艦は戦略兵器だから、基本的には海上交通路を遮断する作戦が基本。敵艦隊の攻撃は勇ましいが、戦術兵器としては使わない。戦術兵器として使うとしても、空母打撃群との組み合わせで真価を発揮する。このことを知らないから、イギリス海軍は人民解放軍海軍をバカにした。

■難しい緊急展開

クイーン・エリザベスを中心にした英国空母打撃群(Wikipediaより)

クイーン・エリザベスを中心にした英国空母打撃群(Wikipediaより)

 さらにイギリス海軍は、暗に中国の方向性の違いをバカにしている。本来ならば駆逐艦などの水上艦を用いて威嚇する。制海権は基地から戦域まで継続的に往復することで獲得できる世界。

 人民解放軍海軍の艦隊が南シナ海で活動することで、目に見える形で人民解放軍海軍の制海権をアピールする。これが平時では、中国の覇権と見なされる。つまり人民解放軍海軍が継続的に活動すれば覇権拡大・維持ができるが、活動しなければ人民解放軍海軍の制海権は消える。これは中国の覇権縮小か消失と見なされる。

 平時では人民解放軍海軍の水上艦による艦隊運用こそが基本。艦隊が南シナ海で継続的に活動すれば、中国の覇権となる。だがイギリス空母打撃群を脅すだけで、軍事演習を行わない。

 軍事演習は指揮命令・運用・物資消費など実戦と同じ。敵が居ないだけの世界だから、各国の軍隊は練度向上・維持目的で使う。外交では覇権拡大・維持に使うのだから、戦争は政治の延長になる所以。

 さらに仮想敵国の軍事演習には軍事演習で返礼するのが基本。理由は、自軍の展開能力を示すため。軍事演習は定期的に行うが、仮想敵国の軍事演習への返礼は反撃能力が高いことを教えている。

 緊急展開は戦闘部隊だけの参加ではない。指揮・戦闘・補給・通信などの総合的な運用がワンセットになることが求められる。一つでも欠ければ緊急展開は難しい。仮に補給部隊を除き戦闘部隊だけを用いても、継続的な戦闘ができない。敵に補給部隊が居れば、敵は継続的に戦闘できる。

 アメリカ海軍・イギリス海軍は指揮・戦闘・補給・通信などをワンセットで運用するが、人民解放軍海軍はワンセットで運用していない。だからイギリス海軍は人民解放軍海軍を暗にバカにしている。

■開戦奇襲は失敗する

 人民解放軍海軍は軍事演習の映像を世界のメディアに流さなくなった。これは軍事演習が実質的に減少している証。それに対してアメリカ・イギリス海軍は、合同訓練や軍事演習を世界のメディアに公開している。それどころか、ネットを用いて積極的に映像を流している。

 これは生産・輸送・補給の後方支援能力の高さを意味し、継続的な戦闘が行えることを世界に示している。それに対して人民解放軍海軍は、後方支援能力が低いことになる。同時に継続的な戦闘ができないので、最近では軍事演習が世界に公開されない。これでは人民解放軍海軍の練度向上は難しく、練度低下は避けられない。

 これでは人民解放軍海軍による敵前逃亡。中国の生産能力が低下しているなら、戦争に必要な物資を生産できない。これで戦争するとすれば、開戦奇襲のために物資を備蓄している可能性は有る。

 人民解放軍は朝鮮半島に義勇兵として参加した。この時の参加は、アメリカ軍司令部は予想していなかったので奇襲攻撃になった。原因は戦争に必要な物資の生産と備蓄をしていなかったこと。だから国境付近で兵站基地が無い。戦闘部隊だけが突如として朝鮮半島に侵攻したのだから開戦奇襲になった。

 この様な戦例が有るから、人民解放軍海軍を用いた中国からの開戦奇襲は無視できない。だがアメリカとイギリス海軍は想定しているから、人民解放軍海軍からの開戦奇襲は失敗に終わるだろう。何故なら、中国の潜水艦が早期に発見されている。秘密が基本の潜水艦で失敗するのだから、ミサイル攻撃や艦隊戦で挑むことは自殺行為になる。

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