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中国の覇権否定した英空母

■存在感増すイギリス空母打撃群

 イギリス空母打撃群は、南シナ海からルソン海峡を使いフィリピン海に抜けた。イギリス空母打撃群は単に航行しているのではなく、地中海・インド洋などで外国軍との合同訓練を実施。イギリス海軍は、常に合同訓練の状況を公開している。これでイギリス空母打撃群の大雑把な位置だけではなく、行動内容まで教えている。

 それに対して人民解放軍海軍は、軍事演習をすると公言しても、演習内容を公開しなくなった。だから本当に軍事演習をしたのか疑問の世界。イギリス空母打撃群の存在感が日々高まる中で、人民解放軍海軍は存在感を低下させている。

■海軍のレベル示す洋上補給

 イギリス海軍は7月30日、イギリス空母打撃群の洋上補給の動画を公開。そこには、一隻の補給艦が、2隻同時に洋上補給する状況が確認できる。さらに洋上補給しながら、クイーン・エリザベス級空母から、艦載機であるF-38Bが発艦している。

HMS Queen Elizabeth
https://twitter.com/HMSQNLZ/status/1421051831321391105

 洋上補給は海軍のレベルを知る手掛かりの一つ。洋上補給の見た目は簡単でも実際は難しい。補給艦と補給を受ける艦が並走し、方向・速度・間隔を一致させる能力が求められる。どちらかが方向・速度・間隔の一つでも間違えば、洋上補給は失敗。だから海軍のレベルを知る手掛かりになる。

 公開されたイギリス空母打撃群の動画を見ると、3隻が方向・速度・間隔を一致させている。これだけでも、イギリス海軍のレベルの高さを示している。さらに言えば、補給艦が2隻同時に洋上補給できることは、戦闘を続ける能力と戦闘後の回復が速いことを示している。

 補給艦が1隻単位で洋上補給するよりも、2隻同時に洋上補給するなら2倍の速さになる。それだけ消費した物資の補給が早くなるので、敵を攻撃する火力維持と回復が速い。仮に敵の洋上補給能力が劣れば、時間経過と共に火力が低下。行き着く先は、戦闘を回避して撤退するだけ。

 それに対して人民解放軍海軍は?
軍事演習をしたなら、映像を見せることができるはず。公開しないなら能力が無い。これまでの人民解放軍海軍の軍事演習は、航空機や艦船が砲撃やミサイルを発射する映像が大半。派手な映像が大半だが、洋上補給などの地味な映像は見たことがない。

■戦闘部隊支える後方支援

 敵を攻撃する映像は派手だが、地味な後方支援の映像が実は重要。後方支援部隊が存在してこそ戦闘部隊は戦える。だから洋上補給などの能力が有れば、大軍を相手にできる世界。陸戦と海戦の違いが有るが、18世紀の七年戦争は典型例になる。

 当時のプロイセン(ドイツの前身)はオーストリアと交戦。プロイセンは国力差16倍の敵と戦争したが、7年後には辛うじて勝利した。勝利の原因は、フリードリヒ大王の功績が大きく、大王はローマ帝国の消滅と共に消えたロジスティクスを復活させた。

 当時のヨーロッパ世界の軍隊は、マガジンシステムの補給を採用。これはマガジンと呼ばれる倉庫を設置し、倉庫を拠点に軍隊を行動させる。だから戦闘半径は倉庫を中心としており、しかも物資は本国からではなく現地調達が大半だった。

 プロイセンのフリードリヒ大王は、ローマ帝国軍が採用したロジスティクスを復活。完全再現ではないが、本国からの補給を現地の戦闘部隊に行わせたので、プロイセン軍は継続的に戦闘を行えた。だから初戦ではオーストリア軍が優勢でも、時間経過と共にプロイセン軍が優勢になる。

 余談だが、フリードリヒ大王は騎兵を砲兵にした騎砲兵を採用。外国軍は馬で大砲を引かせていたが、移動は人間の足が基準になる。歩兵が馬を移動させるから、時速4kmになる。だが騎兵は馬に乗っているから、移動は馬の速度になる。すると時速16kmで大砲を移動できるので、外国軍の大砲よりも4倍の速さで移動できた。

 プロイセン軍の騎砲兵は機動力を優先したので、火力と射程は敵軍よりも劣る。だがロジスティクスと組み合わせることで、敵軍の砲兵火力が無い時に、プロイセン軍は騎砲兵を使うことができた。だから火力を活かす補給能力は重要なのだ。

■人民解放軍海軍の敗北

 8月1日になると、イギリス空母打撃群は南シナ海からルソン海峡を使い、フィリピン海に入ったことが公表された。これまでイギリス海軍は、空母打撃群の航行を人民解放軍海軍が妨害したことを公表していない。明確な妨害が無いのであれば、人民解放軍海軍が引いたことを意味する。つまり人民解放軍海軍は、イギリス空母打撃群を恐れたのだ。

Commander UK Carrier Strike Group
https://twitter.com/smrmoorhouse/status/1421809645379735563

 イギリスは空母打撃群を南シナ海で航行させたことで、中国の南シナ海における覇権を否定した。しかも悪いことに、人民解放軍海軍の明確な軍事行動が見えない。この場合は大人しくするのではなく、大規模な軍事演習で脅すのが基本。しかも世界のメディアを用いて宣伝する。そうでなければ、南シナ海における人民解放軍海軍の制海権は認知されない。同時に、中国の覇権は認知されない。

 基地から戦域まで海軍が継続的に往復するから制海権が得られる。同時に、この制海権は覇権となる。人民解放軍海軍が引いたと見なされたら、南シナ海における中国の覇権は縮小。以後は、外国軍の継続的な航行で、中国が主張する領海など霧散する。

■中国の返礼は有るのか?

 イギリス空母打撃群の南シナ海航行で、中国の覇権を否定。同時に中国の覇権が縮小したこと意味する。これを中国が否定するなら、48時間以内に大規模な軍事演習で返礼しなければならない。しかも世界のメディアを用いた宣伝が必要。しなければ中国の覇権が縮小し、人民解放軍海軍の敗北決定。

 人民解放軍海軍の軍事演習が遅れたら、それだけ中国の覇権縮小を止められない。世界のメディアに公開できない軍事演習では無意味で、東シナ海・南シナ海で存在感を示す軍事演習が求められる。実行しなければ中国の面子丸潰れ。これまで欧米に吠えた分だけ価値が低下し、眠れる獅子どころか、眠りから醒めない張子の虎だと笑われる。

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