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不妊治療、分娩費用を保険適用すれば、本当に少子化対策になるのか?

 6月1日に第一子を出産したグラビアアイドルの倉持由香さんが、12日に自身のブログに、出産費用が100万円かかったことを内訳と共に明かしていました。都内の大学病院での出産で、和痛代や個室代なども加算され、出産育児一時金を差し引いて100万円近い請求に驚いたという倉持さん。

 文末に、分娩費用、不妊治療は保険適用して欲しい、そうしたら少子化問題も改善されるのでは、と自身の考えを示していました。それに対してネット上では、都内の出産費用はそんなものだ、事前に調べるのは当然のこと、保険適用にしたら出産育児一時金がなくなるだろうから、3割負担になって余計に費用がかかるはず、など、厳しい声が上がっていました。

自身の望む出産形式・産後の入院生活に加え、費用面も加味した産院選び

 倉持さんは12日に投稿したブログ内で、和痛代、鉗子分娩、入院費の総額の明細書を掲載し、「和痛代が約18万、個室代が約17万。陣痛促進剤の地獄の痛みから逃れられたので、和痛代は私にとって有意義な18万円のはず!!!

 個室代は1番安い部屋にしても結構かかりましたね。大部屋にするか迷ったのですが、産後肉体的にも精神的にもボロボロの状態で大部屋で気を使ったりするとキツそうだな……と思ったので、必要経費……!!!!」と、自身にとって有意義で必要な費用だったと明かしています。ツイッターにも100万円近くかかったことを投稿した際、都内でも一時金以内で収まった、フレンチフルコースを食べたけど60万くらいだったというコメントがあったとして、地域差や病院差があることを知らずに病院を決めてしまったため、各病院の分娩費用をリストにして検討するのがいいのかもしれないと綴っていました。そして、「個室代は仕方ないとして、分娩費用は保険適用して欲しいなあ~と思います。不妊治療も!そうしたら少子化問題も改善されるのでは……!?」と自身の考えを述べていました。

それに対して、同じく都心で出産した女性陣から厳しいコメントが返されていました。

 「都心の大きい病院で出産したけど、事前に費用の書かれた用紙は渡されたし、タイプごとの個室追加費用も一覧になっていた。大体の費用は把握しているはず。それに退院してから後日精算なら尚更退院時に明細渡されて金額知っていたでしょ?
後日精算でいきなり100万超えの請求書を見せることはないと思うけど……」

 「病気とか怪我でもない出産に保険適用とかされないはずだけど、もしされるなら分娩費用が3割負担になるのかな?そうなると出産育児一時金たしか40万くらいはもらえなくなるから適用されない方が金銭的にはお得ですけど…」

 「アドバイスと言うか、普通は色々調べてから決めるものだと思いますけどね。ここまで無知な人も珍しい…。保険適用して欲しいとか、正直アングリしちゃいました。マタ友とかからも情報交換とかも無かったのでしょうか。勉強代だと思って忘れて育児頑張ってください」

 「出産一時金42万円は健康保険から出ています。だから保険適用時(3割負担)より自己負担が軽減されているはず。基礎疾患等がないなら大学病院で出産する意味ないし、近場の産婦人科医院で十分。相場より費用が高くなったのが気に入らないのかもしれないけど大学病院なら分娩費用54万(相場より2割ちょい高いかな程度)に関してはそんなもん。あとは自分で選んだオプション料なんだから、知らんがな」

 倉持さんの投稿に対して、出産費用が高額になるのは当然のこと、事前に説明があったはず、思ったより高かったからと言ってわざわざ投稿することではない、お金持ちアピールなのか、など、批判的な声が多かったですが、第一子ということもあり、手探りの中、産院選びの情報収集をし、自身の望む出産・産後の入院生活を送れるかという方に重きを置いて、費用のことはあまり考えずにいたのかもしれません。

 私自身、出産を2回経験していますが、産院を選んだ際は費用の面よりも(あまりにも高額な産院は省きましたが)口コミや評判を重視し、そのおかげで良い先生にも出会えました。1人目は里帰り出産だったので、実家が地方の田舎ということもあり、家から通える範囲の産院が1カ所しかなく、選ぶ余地がありませんでした。助産師さんや看護師さんが厳しかったり、古い産院で全個室とはいえ、トイレがない個室が多かったりと、多少の不便さはありました。

 ただ、費用の面で言えば、健診や出産、入院費用が安く、1人目が緊急帝王切開だったこともあり、保険適用となったので、高額療養費制度や、加入している医療保険を使って、だいぶ出費を抑えることができました。2人目は、1人目の健診に通っていた病院で帝王切開で産んだので、費用はかかりましたが、それでも保険適用で、先生や助産師さん、看護師さんも優しく、全個室ということもあり、手厚い産後の入院生活を送ることができました。

 正常分娩の場合は保険適用外なので、地域によっては出産育児一時金の42万円以内におさまったり、それよりも数万円多めに支払ったりすることもあります。また、倉持さんのように、痛みを和らげたり、無痛分娩にしたり、個室にしたりすることで、費用は変わってきます。

 正常分娩の出産費用の全国平均について、公益社団法人国民健康保険中央会が平成28年に調査した際、50万5759円ということがわかりました。そこから出産育児一時金の42万円を差し引くと、自己負担額は8万5759円になります。都道府県別に見ると、最安値は鳥取県の39万6331円で、最高値は東京都の62万1814円でした。東京都は全国平均の約12万も高く、自己負担額も大きいことがわかります。産院を選ぶ際は、自宅からの距離や、自身の望む出産ができる産院かということだけでなく、費用がどの程度かかるか事前に調べておかないと、倉持さんのように産後の請求額に驚くことになります。

 東京都は全国平均よりも高い出産費用が家計の負担になっているとして、今年から出産育児一時金42万円に、子供1人当たり10万円を電子クーポンで上乗せする方針になりました。コロナウイルスの感染拡大に加え、高額な出産費用が子供を産むことを躊躇させているのではという指摘もあり、東京都は費用面での負担を軽減することで出産しやすい環境づくりを進める狙いがあるとの見方もあります。

今後保険適用される不妊治療。果たして少子化対策となり得るのか

 出産費用も高額ですが、命を授かるための不妊治療も保険適用外なので、1人を授かるまでにかなりの額と時間を投入する必要があります。今年の3月、厚生労働省が医療機関を対象に初めて行った不妊治療の実態調査結果を公表しました。人工授精の1回の平均費用は3万円、体外受精は約50万円、男性不妊検査は4万5000円、顕微鏡を使って精子を取り出す手術は32万円という結果でした。出産費用と同じく、施設ごとの請求額に大きな差があり、100万円近いケースも複数ありました。

 不妊治療の実態調査と同時に実施した当事者調査では、体外受精を平均で3.7回受けていることが判明しました。知人に不妊治療を受けて子供を授かった夫婦がいますが、数年の年月と数百万円という高額な治療費をかけて、無事に安産で出産したそうです。しかし、2人目の不妊治療はしないという夫婦間の暗黙のルールがあるようで、2人目を望む気持ちはあるものの、欲しいと口に出せない雰囲気があるようです。

 昨年9月の自民党総裁選で、菅義偉首相は不妊治療の保険適用拡大を打ち出し、今年1月の施政方針演説でも「来年4月スタート」を言明しました。現在の保険適用の対象は不妊の原因検査や卵管閉塞の治療など、初期段階の一部に限られています。体外受精と顕微授精は国や各自治体がそれぞれ助成しており、国は今年1月、不妊治療の助成金を拡充しました。拡充前は、夫婦の所得が730万円未満の場合のみ助成金を受け取れるとなっていましたが、所得制限を撤廃しました。

 また、助成額は初回のみ30万円で以降は1回15万円でしたが、1回30万円に引き上げました。助成回数も引き上げとなり、以前は40歳未満は通算6回となっていたところを、1子ごとに6回になりました。更に、助成金の対象者を法律婚の夫婦だけでなく、事実婚を追加し、対象者の幅も拡大しました。来年の4月には不妊治療が保険適用される方針ですが、Yahooニュースのみんなの意見で、「不妊治療の保険適用、どう思う?」という調査を行った結果、賛成が60.4%、反対が26.2%という結果になりました。

 不妊治療に臨む夫婦が増えてきているということもあり、金銭的な理由で不妊治療を諦めたり、借金をしてまで授かったりして、第2子は諦めざるを得ないこともあり、早く保険適用されることを願っている人が多くいるようです。ただ、基本的には賛成でも、条件は必須とする意見も多く、特に対象者を日本人だけにする、あるいは、国内に長期間定住し納税の義務を果たしている人に限る、また、男女共に年齢制限を設けるなど、保険適用に賛成でも条件を設けないと保険制度を維持するのが難しくなるのではと懸念している人も多いようです。

 一方で、無理してまで子供を産む必要はない、国民皆保険制度を維持できるのか、仕事優先で婚期が遅れ、妊娠可能な年齢を過ぎて不妊治療は違うと思う、不妊治療だけ保険適用にしても、産後の育児の保障が整っていないと少子化対策とは言えない、むしろ20代の夫婦への手当てを増やして子供を産むことに躊躇しなくてもよい環境を整えるべきなど、不妊治療に保険制度を使うよりも、自然妊娠の夫婦がよりたくさんの子供を産んで育てることができる保障を手厚くした方が少子化対策になるとして、不妊治療の保険適用に反対の声も上がっています。

 不妊治療だけでなく、倉持さんのように、分娩費用も保険適用してほしいという声もありますが、果たして不妊治療、分娩費用を保険適用することで少子化対策に繋がるのでしょうか。育児にもお金はかかりますが、産む段階で高額な費用がかかるので、不妊治療も分娩も躊躇して、子供を作らないという選択をする夫婦も中にはいると思います。また、若い夫婦なら特に、お金がかかるのでしばらく働いてから出産に臨みたいと願い、出産の年齢が遅れて子供を1人、2人産むので精一杯という人もいるでしょう。金銭的な面で子供を作ることをためらったり、不妊治療をためらったり、諦めたりする人なら、保険適用されて今より少額で出産することを望むと思います。

 ただ、少子化の原因は金銭面だけではありません。保険適用すれば少子化が改善するかといえばそう簡単にはいかないのではないでしょうか。夫婦共働きで、夫は安定した大企業の社員で、妻は医療従事者で金銭面には全く問題のない知人がいます。30代前半で、社会的なキャリアは長く、いつ子供が生まれてもいいように思えますが、妻が同じ職場であと数年勤務しないと産休、育休がとりづらく、職場を辞めて出産してもその後復職することが難しいとして、子供を作るのはあと1、2年先になると考えています。夫の方はそろそろ子どもが欲しいそうですが、妊娠、出産をして現在の生活が一変するのは妻の方なので、妻がまだ望んでいない内は強く言えないようです。

 このように、妊娠、出産によって女性が社会的地位を失い、これまで培ってきたキャリアを捨てないといけない場合もあるので、子供を産むことを躊躇する場合もあります。少子化の主な原因が金銭面であれば保険適用をすれば対策になるかもしれませんが、仕事と出産、育児を両立できないことが主な原因であれば、金銭面だけを保障しても少子化が改善されるかは分かりません。

 少子化の原因は掘り下げていけば他にも様々あると思います。国が、少子化対策を行っていると目に見えて分かる金銭面での保障をするだけでは、パフォーマンスとしての対策となるだけで、根本的な部分では少子化が改善されないのではと懸念してしまいます。不妊治療や分娩の保険適用を望む声は多いと思いますが、保険制度を維持できるようきちんと条件を設けて実施してもらいたいと願います。

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