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習近平の悩み

■孤立する中国

 2000年代に入ると、中国の政治・経済の力は強大になった。アメリカが世界に押し付けたグローバル・スタンダードが、中国経済を豊かにする。安い人件費で作れるので、中国は世界の工場と呼ばれた。アメリカと中国の蜜月時代とも言える時代だったが、アメリカが敵を強大にさせる時代でもあった。

 2000年代までの人民解放軍は、世界から見れば数は多いが質が悪かった。原子力潜水艦を保有していても、世界から脅威とは見なされなかった。だから中国に工場を置き、技術移転しても問題視されなかった。

 だが中国は、各国から技術移転を積極的に行い、違法コピーで荒稼ぎ。さらに、技術移転を土台に人民解放軍の兵器開発に力を注いだ。人民解放軍は予想以上に質を向上させ、今では脅威になった。

 しかも財力を用いて各国に親中派を育成。これで各国に影響力を持つが、同時に欧米は中国を敵視するようになった。中国は主要メディアを支配下に置いたが、それでも各国の政治を支配することはできない。中国の厚顔無恥が、結果的に反中国に向かわせた。

 習近平の時代で中国の覇権は頂点に達したが、同時に反中国も強大化。これまで中国が積み上げた脅威を、習近平が責任を取る結果になっている。しかもアメリカ主導の中国包囲網が形成され、中国は世界から孤立する流れになっている。

■地勢の悩み

 アメリカ主導で中国包囲網が形成され、さらに日本周辺に、アメリカ・イギリス・フランス・オランダ・オーストラリアなどの軍隊が集まり始めている。インド洋・太平洋で合同軍事演習を行い、フランス軍は、定期的に日本に来ることを表明。約1万キロ離れたヨーロッパから日本に軍隊を派遣する意気込みだから、それだけ中国が世界の脅威になった。

 アメリカ主導の連合軍が日本周辺に集まるが、中国は外国の援軍が集まることは難しい。北朝鮮は中国の隣国であり味方。致命的な問題は、北朝鮮軍の戦力は時代遅れ。正面から連合軍相手に戦えない。北朝鮮軍にできることは防御戦闘。それでも、本気を出したアメリカ軍に敗北する可能性が有る。

 明確な中国の友好国は、イランとロシア。イランはペルシャ湾でアメリカ軍と対峙しており頼れる国。だがイラン軍・革命防衛隊を中国に派遣し、連合軍と戦わせることは難しい。海軍を派遣したくても、インド洋の制海権をアメリカ軍・フランス軍が握っている。

 この状態でイラン軍・革命防衛隊の海軍戦力を中国に派遣することは困難。派遣できても、開戦前の移動だけ。開戦すれば補給・整備を人民解放軍に依存し、整備できなければ戦力にならない。

 だからイランが中国に派遣できる戦力は、陸軍と空軍になる。だが実際に中国に派遣できるか怪しい。何故なら開戦した場合、イランも連合したら、アメリカ軍はイランを攻撃。そうなれば、イランはイラン軍・革命防衛隊の陸軍・空軍を必要とする。こんな状況で、中国に陸軍・空軍を派遣するのは自殺行為。

 ロシアはソ連軍と比べれば劣るが、欧米軍と戦えるロシア軍を持っている。なのだが、ロシアも中国に戦力を派遣できるのは、陸軍と空軍だけ。ロシア海軍も極東に部隊を配置しているが、中国に戦力を派遣して連合軍と戦うことは難しい。

 何故なら、在日米軍と自衛隊が日本海の制海権を握ると、ロシア海軍の援軍は孤立。整備が難しくなり戦力にならない。ロシア軍を中国に派遣したいが、派遣できるのは陸軍と空軍になる。これもイランと同じで、仮に開戦すれば、ロシア軍の主力は陸軍と空軍。ウクライナが主戦場になれば、ロシアは陸軍を中国に派遣することはできない。

 アメリカ軍は世界に基地を置いて展開している。これは強力で、アメリカ軍はインド洋・太平洋・大西洋で常に展開。だから、連合軍を自在に目的地に移動できる。それに対して中国・ロシア・イランは、お互いに離れた位置に存在する。仮に連合しても、お互いに援軍を派遣できない地勢に置かれている。

 中国・ロシア・イランが隣接国ならば連合できたが、連合するにはお互いに国が離れすぎている。この戦例は、第二次世界大戦の日本とドイツ。日本とドイツは技術交流ができたが、お互いに軍隊を派遣して連合できなかった。お互いに孤立した状態で戦争しただけで、軍事的には影響が少なかった。

 ロシアとイランは戦場が近いので、お互いに軍事的な影響を与えることはできる。だから欧米軍の脅威は、ロシアとイランの連携。だが中国は地勢的に孤立しているので、日本周辺に展開した連合軍で叩くことができる。

■内線作戦と外線作戦

 習近平の悩みは地勢だけではない。アメリカ主導の連合軍は海軍中心。これはアメリカ軍が、主戦場を海に設定している証。そうなれば、人民解放軍の陸軍は脇役。これでは上陸させて、連合軍を消耗させることはできない。

 アメリカ軍は人民解放軍海軍を撃破した後、海から大陸に火力を投射するフロム・ザ・シー構想を実行するはずだ。アメリカ軍も馬鹿ではない。中国の得意分野に飛び込むことはしない。それよりも、アメリカ軍の強みで人民解放軍を消耗させるはずだ。

 アメリカ軍が空と海から、対地ミサイルを毎日、中国内陸部に向けて撃ち込めば、人民解放軍が迎撃できたとしても全て迎撃できない。内陸部の指揮通信施設は破壊され、兵站基地・橋などが破壊される。これで人民解放軍の移動は困難になり、物資が枯渇。

 アメリカ軍は1年前後の時間を使い、空爆で内陸部の人民解放軍を消耗させるはずだ。上陸作戦を行うのはその後で、上陸する場所の第一候補は上海。上海の位置は重要で、占領すれば人民解放軍を南北に分断可能。さらに上海沖を管制できるので、人民解放軍海軍を渤海に閉じ込めることができる。

 アメリカ軍が優位に立てるのは、内線作戦を採用しているから。これは現段階で採用しており、各地に分散した戦力を一箇所に集中する方式。人民解放軍は援軍無しで戦うが、アメリカ軍は連合軍で対応。

 それに対して人民解放軍は、援軍無しの単独で戦うことになる。しかも複数方向からの攻撃が想定されるので、人民解放軍は外線作戦を強要される。外線作戦は包囲されながらの戦いであり、一部の部隊で敵を拘束し、主力部隊で敵の側面から撃破する策が用いられる。

 外線作戦は基本的に、ナポレオンの様な天才が好む。同時に、平凡な人間には成功困難な戦い方になる。人民解放軍海軍は外線作戦を強要されており、南シナ海・東シナ海で連合軍を各個撃破しなければ勝ち目無し。

 インドが連合軍として参戦すると、人民解放軍陸軍はインド軍と交戦。すると人民解放軍空軍は? 空軍をインド軍に向けるのか?
それと南シナ海・東シナ海へ向かわせるのか? こうなれば、人民解放軍は常に不利な外線作戦で戦うことになる。

■分断と各個撃破

 アメリカ軍は連合軍の中心であり、参加する国にインド洋の制海権を提供している。だからイギリス・フランス・オランダは、遠く離れた日本まで海軍を派遣できる。同時にロシア・イラン・中国を分断することになり、相互支援を難しくしている。アメリカ軍は戦う前からロシア・イラン・中国を分断しているので、連合軍は自軍が各個撃破される危険性が低下。逆に、ロシア・イラン・中国を各個撃破できる状態だから、参加する側も安心なのだ。

 アメリカ軍は、戦略で人民解放軍の外堀を埋めることをしている。これで人民解放軍は、各個撃破される立場に追い込まれている。これは習近平の権力を用いても回避不能で、遠い国の同盟国は中国を救える距離にいない。

 習近平はこの現実に悩んでいるはずだ。ロシアとイランを用いてアメリカ軍と戦争するはずが、開戦のタイミングが遅れた。これで逆にロシアとイランから、利用される立場になったのだ。この責任は習近平に有るが、中国共産党内部で問題視されているかは不明。だが結果的に、習近平の悩みは増している。

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