«
»

東京五輪で浮き彫りになった昭和世代の古い価値観

 2月、オリンピック組織委員会の森喜朗氏が、女性について不適切な発言をしたことでバッシングを受け、会長を辞任しました。あれから1月、今度はオリンピックの開閉会式の責任者である佐々木宏氏が、タレント渡辺直美さんの容姿を侮辱する発言を、グループLINE上でしたことが問題視され、辞意を表明しました。

人を豚に例える幼稚な演出案に対し「この体型で幸せです」と大人のコメント

 佐々木氏の容姿侮辱発言については、文春オンラインが報道し、各メディアやSNS上で取り沙汰され、森喜朗氏に続く東京五輪関係者の女性蔑視に対して怒りの声が上がっています。問題となったLINE上のやり取りの画像もそのまま文春オンラインが報じており、渡辺直美さんを豚に例え、「オリンピッグ」として「ブヒー ブヒー/(宇宙人家族がふりかえると、宇宙人家族が飼っている、ブタ=オリンピッグが、オリの中で興奮している。)」、「空から降り立つ、オリンピッグ=渡辺直美さん」など、容姿を蔑視するような内容の演出を提案していたことが明らかになりました。

 この提案に、同LINEグループの女性メンバーが「容姿のことをその様に例えるのが気分よくないです」、「女性目線かもしれませんが、理解できません」と、不快感を露にし、他の男性メンバーからも反対の声があがり、提案は撤回されました。

 週刊文春の取材に対して佐々木氏は、「口が滑ったように冗談で言った」、「その場で男性スタッフに叱られた、反省している」と話していました。後日、東京五輪組織委員会が、佐々木氏の謝罪文を報道各社に発表。謝罪文では、発言の詳細や、他メンバーからの批判、渡辺直美さんへの謝罪と反省の思いや、辞任の意向が示されていました。

 渡辺直美さんは、この件について自身のYouTubeチャンネルで生配信を行い、率直な思いを語っていました。一昨年末に式典のオファーを受け、オファーの1、2カ月後に行われた演出チームとの打ち合わせで披露されたプランは「かっこよくてイケていた」とし、演出に携われることを喜んでいました。ところが、今回の報道を受け、聞いていたプランではなくなること、「普通におもしろくない」演出であることを知り、もしこのプランが採用されてオファーがきたら絶対に断っていたと不快感を表しました。また、先に聞いていた良いプランの方ではなく、内輪でボツになったプランが海外にも知られてしまったことが悔しく、傷ついた人もたくさんいたことに胸を痛めていました。

 そして、「難しいけど、これがきっかけでいろいろ変わっていったらいいなと思うし、私は今まで通りポジティブに自分を表現していきたいし、みんなも表現してほしい。自分に自信を持って欲しいな。自分のことを愛してほしいし、自分のことをもっと誇っていいと思う」と、視聴者に呼びかけました。

 また、吉本興業が発表した渡辺さんのコメント内では、「表に出る立場の渡辺直美として、体が大きいと言われる事も事実ですし、見た目を揶揄されることも重々理解した上でお仕事をさせていただいております」としたうえで、「私自身はこの体型で幸せです。なので今まで通り、太っている事だけにこだわらず『渡辺直美』として表現していきたい所存でございます」と、大人のコメントをし、芸能界やSNSから称賛と応援の声が上がっています。

新しい価値観で、世界に誇れる東京五輪へ

 佐々木宏氏の演出案に対する批判の声がある一方、「内輪のLINEグループの、それも既に却下された提案が明るみになったことが怖い」、「公にならなければ渡辺直美さんも傷つかずにすんだのでは」、「世間からの叩かれ方がある意味異常。生きづらい世の中になった」など、報道番組や、SNS上でも、内輪での発言が公になったことへの不信感、ここまで騒ぐ必要があるのかという疑問を投げ掛ける声もあります。

 確かに文春オンラインが実名報道をしなければ渡辺直美さんの容姿に対する蔑視だということは明らかにならなかったかもしれませんが、そもそも内部の告発でなければグループLINE上での発言が流出しないのではないでしょうか。告発しなければならない程、女性蔑視、性差別という古く、幼稚な価値観に関係者トップが毒されていたのかもしれません。佐々木宏氏の発言はあくまで前座で、オンライン文春は、有料記事の中で、オリンピック開閉会式関係者内部の、更なる深い女性蔑視の闇を報じていました。

 開閉会式の演出チームは、2019年途中からは振付師のMIKIKO氏が実質的な責任者になっていました。MIKIKO氏は、PerfumeやBABYMETALの演出振付家で、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の恋ダンスも手掛けるなど、実力とセンスが認められています。国際オリンピック委員会(IOC)への開幕1年前プレゼンは好評だったそうですが、コロナ禍による大会の1年延期に伴い、森喜朗氏の信頼が厚かった佐々木宏氏が、オリンピックとパラリンピック両方の責任者となる形へと移行しました。文春オンラインは、「MIKIKO氏については徐々にチームから排除される動きがあり、最終的に11月に辞意を申し出るに至った」と報じています。

 これに対して佐々木宏氏は、謝罪文の中で報道の一部については事実ではないと否定しています。捉え方の違いだったり、詳細が不透明なこともあり、文春オンラインの報道がどこまで事実なのかは分かりかねますが、パラリンピックのみの責任者であった佐々木宏氏がオリンピック、パラリンピック両方の責任者となり、その過程でMIKIKO氏が辞任したことは事実です。

 渡辺直美さんへの容姿蔑視発言がポロッと出てしまった冗談のようにLINEに投稿できる軽い空気感が、演出チーム内であったのでしょうか。女性蔑視、性差別問題以前に、平和の祭典として開催するオリンピックに対して、緊張感のないふざけた日本の印象を世界に与えることになることを考えられなかったのでしょうか。そんな人が責任者であることに憤りや、先行きの不安を覚えた内部関係者が、耐えられず文春に情報を提供したのかもしれません。

 森喜朗氏に続く、佐々木宏氏の古い価値観、無責任な発言に、日本が世界に与える印象は、価値観、倫理観の発展途上国というマイナスなイメージでしょう。1年延期という異例の中、関係者内部の粗い連携や責任者の交代など、まとまりのないまま、オリンピックまでの時間だけがどんどん迫ってきます。これ以上の問題が起きないよう、関係者は今回の報道を重く捉え、世界に誇れる日本として、現代にあった新しい価値観でもって、2度めのオリンピックを成功させてもらいたいものです。

0

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。