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相次ぐ航空機マスク着用拒否騒動、悪いのは乗客だけ?

 今月に入って立て続けに航空機での騒動が起こりました。マスク着用を拒否したことがきっかけで、乗客が飛行機から降ろされるトラブルが、7日、12日にそれぞれLCC(格安航空会社)のピーチ機、JALグループの北海道コミューター航空会社HAC機において発生しました。各メディアで報じられ、SNSにおいても話題となっています。

 報道番組では渦中の乗客にリモート取材を行い、細かく当時の状況を聞いたり、主張を聞くなどしていました。ネット上のニュース記事でも乗客への取材内容と、航空会社への取材内容を掲載しています。SNS上では、渦中の乗客への賛否や、航空会社の対策への疑問の声などが上がっており、更には当事者がツイッターアカウントを開設し、航空会社への非難や持論を展開するなどしており、フォロワーが続々と増えているようです。

マスク着用拒否がきっかけで、安全阻害行為へと発展

 ひとつめの騒動は7日、釧路空港から関西空港に向かうピーチ・アビエーション機内で起きました。マスクを着用していなかった男性へ、CA(客室乗務員)がマスク着用を求めたのですが、「マスク着用は義務ではなく、お願いと言われただけだ」として、着用を拒否。他の乗客から、「何故マスクを着用しないのか」、更には「気持ち悪い」と言われ、CAにその乗客を注意してくれと頼んだものの、CAは注意できないとし、マスク着用を再三に渡って求めました。

 しかし、男性は着用を要請するなら書面を出せなどと言って拒否を続けました。その様子を見ていた他の乗客は、男性が声を荒げてCAを恫喝しているように見えたと言っていますが、本人はいたって冷静だった、機内の空調の音が大きく、耳が遠いこともあり、声が大きくなっていたのかもしれないと話しています。

 CAは男性へ、マスクを着用しないのであれば、他の乗客と一列空いている席があるのでそこに移動してほしいとお願いしたのですが、男性は「それに応じる義務はない」として席の移動を拒否したため、他の乗客が移動をすることに。これに加え、濃霧の影響もあり、約45分遅れて離陸。飛行中も男性は威圧的な姿勢を崩さなかったため、航空法の安全阻害行為に該当すると機長が判断し、新潟空港に緊急着陸して、男性に降りるよう命令書を交付しました。警察官が職員と一緒に機内に入ってきて、男性は降機に応じました。他の乗客からは拍手と歓声が上がり、男性は「バイバイ」と手を振りながら堂々と機内をあとにしている映像が公開されています。

 その後、ピーチ機は関西空港に向けて出発し、約2時間15分遅れで到着。乗客120人に影響が出ました。

 ふたつめの騒動が起きたのは12日。ひとつめの騒動が話題となっている最中の出来事でした。北海道の奥尻空港から函館空港に向かう北海道エアシステム(HAC)の機内で、ピーチ機のトラブルと同様、マスク着用を求められた男性が拒否。CAがその理由を問うも、男性客は「答えたくない」の一点張り。機長から「命令書」と書かれた赤い紙が渡され、降機を促されました。男性はマスク着用と搭乗を申し出ましたが、命令書が交付された後だったため、安全航行に協力しなかったとして、申し出は拒否され、機長の判断で機内から降ろされました。結果として、30分ほど出発が遅れ、他の乗客21人に影響が出たとされています。

 このふたつのケースはマスク着用を拒否したことがトラブルのきっかけではありますが、途中降機の要因となったのは、声を荒げたり、恫喝したり、マスク着用拒否の理由を説明せず、CAへ威圧的な姿勢をとり、コミュニケーションを取ろうとしなかったことなどにあります。それが安全阻害行為とみなされ、機長から命令書が出される結果となりました。

 メディアの取材を通して、当事者の男性たちがマスクを着用すると蕁麻疹(じんましん)などの症状が出ると持病があったことを説明し、「他の乗客がいる場所で、自分の病気について話したくなかった」と、答えなかった理由を語っています。トラブルについて主張するためのツイッターアカウントも開設し、「機長が職権を濫用して義務でないのにマスクを着用させようとした航空法151条に当たる」などとして、刑事告発する構えまで見せています。

当事者だけでなく、CAの対応にも問題があったのでは?

 このトラブルを受けてSNS上では、当事者達への批判の声や、航空会社の対応に関する疑問、ひいてはマスク着用に関する日本社会への不満や疑問の声などが上がっています。

 「ほかの乗客がいる場所で、自分の病気について話したくなかったのであれば、予めCAに聞かれることも想定の上で自身の症状について書いたメモを用意しておくなど対処ができたはず。なぜしなかったのか」

 「持病について周りの乗客の前で話すより降機することを選んだ。 賠償問題にはならないと思うけど、先に言っておけば機内でもめることもなかったのに。これからは搭乗手続きの際に十分な念押しが必要」

 「航空会社よ、最初から搭乗できませんって書いとけ。任意だからこんな事になるんだよ」

 「マスクしたら感染しない訳じゃないし、マスクしてないと感染するわけじゃない。まだ絶対的なエビデンスはない。マスクは推奨レベルに留めるべき。基礎疾患とかでマスクつけたらしんどい人、ほんとにいるから。ここまできたら民間企業もマスク警察やん」

 「こんなくだらないこといつまで続ける気でしょうか。マスクつけられない人達もいる、専門家もマスクは意味がないと言っているのに、無理やり降ろされ、賠償金問題。まるで法を犯した犯罪者扱い。ありえない」

 「マスク拒否だけでこれだけ叩かれるのは、ちょっと怖いですね。ワクチンがでたらワクチン摂取していない人も同じように叩かれる、と。人間は自分が絶対に正義だ、正しいと思っている時が、一番暴力的になる」

 当事者達の頑なな姿勢の背景に、世の中のマスク絶対主義、同調圧力に屈しないという強固な意思があるかと思いきや、メディアの取材に対して、その意思を見せるというよりも、持病のせいでマスクが着けられない、それを大勢の前で明かしたくなかったという理由を明かしていました。メディアで話す方が大勢の人に持病のことを把握されるのに、何故、狭い機内でCAに打ち明けることができなかったのか不思議です。SNSでの批判にもあるように、事前に症状をメモ書きすることもできたはずです。

 当事者が開設した「マスク未着用途中降機乗客」のアカウントを見てみると、普段からマスク着用に疑問があり、持病もあることから、どこに行くにもマスク着用はしていないそうで、様々な施設でマスク着用の要請トラブルを経験してきたとありました。そうであるなら、航空会社がマスク着用の要請をしていることは知っていたはずなので、トラブルになることは事前に分かっていたのではないでしょうか。おもてなしのプロとされるCAの対応を見たかったのか分かりませんが、他の乗客からすれば悪質な迷惑行為です。

 マスク着用は要請で、義務ではないという理由だけで、CAからの要請に答えず、ましてやマスク着用拒否の理由も言わず、マスク着用しなくても席を移動してほしいという要請にも応えないというのは、自身の主張がまかり通らないからとCAに楯突いただけのように見えます。当事者への批判が募るのも頷けます。

 一方で、当事者を擁護する声もあり、航空会社の対応に対する批判もあります。CAの業務内容は、機内サービスだけでなく、乗客の安全を守り、無事に目的地まで送り届ける保安管理も含まれます。普段から乗客のトラブルは少なくないと聞きます。そのトラブルを上手く回避するためのスキルも、乗客に快適な空の旅をしてもらうためには必要だと思います。

 ピーチ機でのトラブルではCAの対応にも問題があったと思われます。ネット上にアップされているピーチ機の男性客とCAのやりとりをみてみると、マスク着用は義務ではなく要請であるものの、CAはまるで義務かのごとく男性にマスク着用を要請し続け、威圧的に見える男性に対して低姿勢というよりは、負けじと対応しているように見えました。

 男性客の主張の中で、「マスク着用を促していることは知っていたが、あくまでもお願いの範疇で、機内に入るまでどの社員にもマスク着用を促されなかった、ましてやマスク着用しないと乗れないとは言われていない」と言っています。そうであるならCAの責任ではないものの、航空会社の責任として説明不足だったと一度頭を下げればよかったのではと思ってしまう。憶測でしかないが、大手航空会社のCAなら乗客を逆なでしないよう、まずは乗客からの批判を受け止め真摯に謝罪した上で、マスク着用要請を伝え、拒否の理由を求める際も他の乗客から離れた場所に移動して話をするなど工夫していたのではないでしょうか。 

「マスク差別」が生まれつつある日本社会

 航空会社が「要請」に留まっていることも問題だと思いますが、マスクをしない人は悪人、マスクをしない人が近くにいるせいで感染するリスクが高まるという、不確かな固定概念が染み渡っている日本社会にも問題はあると思います。マスク着用と、コロナ感染に関しては因果関係はないと科学的に主張する人も少なくありません。もちろんマスクをすることで飛沫は防げます。しかし、医療用のマスクでなければ、特に布マスクでは感染は防げないというのです。

 今はまだコロナに対して不透明な部分が多いため、感染対策としてマスク着用は“絶対”とされています。マスクによって生活が窮屈に感じられるので、早くマスク生活から抜け出したいと誰もが思っていることでしょう。しかし、そうできない現状を我慢しているため、マスクを着用していない人を見ると、「マスクは着用するべきでしょ」、「何でマスクしてないの、気持ち悪い」と思ったり、犯罪者を見るような目で見たりしてしまうのでしょう。

 「マスク差別」が生まれそうになっている日本社会の方が気持ち悪いですが、今は我慢の時と思って、義務でなくても要請されている場所に行く時は、要請に従うしかないと思います。マスク着用が嫌、または病気でできないのであれば、なるべくそういう所には行かないようにする、あるいはフェイスシールドを着けるなど、方法はあると思います。

 社会がコロナに対応できるまでは、現状の“マスク絶対主義”から逃れることは難しそうです。法律で義務化できなくとも、各施設や各企業で、それぞれの判断でマスク着用を義務づけた方がトラブルは起きないと思います。早く以前のような日常が戻ってきてくれることが何よりの願いではありますが、それが難しい現状なので、早くコロナに対応できる柔軟な日本社会へなっていくことを願います。

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