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「大変な時だからこそ保育士として支えたい」

コロナ禍の中頑張る保育士にインタビュー

 コロナ対策の自粛生活を終え、少しずつ元の生活に戻ろうとしていますが、東京を始め、各地で感染者が増加しています。我が家では今年から保育園に通い始めた3歳の長女がいるのですが、4月の入園式を終え1週間プレ保育で通ったものの、すぐに自粛を促され、約2カ月間通うことができませんでした。

 6月からようやく受け入れてもらえたのですが、風邪を引いてしまい、熱はなかったものの、鼻水と咳が出ているということで、登園しないで自宅療養して欲しいといわれ、1週間休みました。

 普段なら熱がなければ受け入れてくれるのですが、コロナ対策のため、園も敏感になっていると理解はしたものの、1週間自宅で長女をみながら仕事、家事育児をすることは容易ではありませんでした。保育園のありがたみを感じさせられた反面、風邪をひきやすい時期がくるたびに登園自粛を余儀なくされると、保育園に通える安心感がなくなるように感じました。

 保護者と園の先生との間で、「子どもを預けたい」、「なるべく少人数でリスクを抑えたい」という見えない駆け引きが繰り広げられています。コロナと上手く付き合っていく術を得るまでは当面不安定な登園になることが予想されますが、仕事があるためどうしても子供を預けないといけない保護者からすると、園の方針も理解できるものの、生活が苦しいという嘆きもあります。

 そこで、コロナ禍の中で働いている現役保育士のKさんに、園でのコロナ対策の方針や、風邪をひいている園児の対応、保護者との関わりなど、リアルな現場の様子をインタビューして聞いてみました。

「勤務中も、休みの日も、感染しないように気を付けています」

まずお聞きしたいのですが、園では、どのようなコロナ対策を行っていますか?

 園では何かしらの感染があるので、職員は以前から勤務前にアルコール消毒をしていました。保護者用にも玄関にアルコール消毒を置いていたのですが、特に保護者に勧めることはしていませんでした。でもコロナ感染防止のために「よかったらどうぞ」と声をかけるようになりました。

 また、給食準備前は手洗い、消毒は絶対。子供が手洗いの際は、泡石鹸で手を洗った後に次亜塩素酸水で消毒をしています。職員も勤務時間内は子供とおなじ次亜塩素酸水を消毒用に使っています。

 職員も朝出勤したら検温をして記入しています。以前から子供は朝起きたら検温してもらって、登園したらタブレットに熱や便の状態、元気があるかないか、お迎えの時間などを記入してもらっていたのですが、感染対策でタッチパネルを使わなくなったので、用紙に記入してもらうようになりました。タブレットに記入してもらっていた時は子供の情報がすぐ職員に伝わっていたのですが、紙に記入してもらったものを事務の先生がデータ入力しないといけないので時間がかかるようになりました。

 もちろん職員はマスク着用なので、マスクが蒸れて暑かったり、声がくぐもって子供達に聞こえにくかったりと不便はありますが、感染対策としてつけています。子供には強制していないのですが、4、5歳児の保護者の方で自分の子供につけてほしいという場合はその子にマスクをつけて園で過ごしてもらっています。

コロナ対策をしながら園児と接するうえで大変な点はありますか? 

 マスク着用が一番大変です。絵本を読む時は、子供は先生の表情の変化も見ながら楽しんでくれているのですが、マスクで表情の変化があんまり分からないので、途中で飽きてしまって絵本に集中してくれないこともあります。

 「密を避けないと」と言われていますが、小さい子は甘えたいのでギューッと1度に3人ぐらいくっついてくるので、密は避けられない状況です。

 毎年恒例の行事もできなくなったので、特に今年卒園する子供達にとっては思い出を作ってあげられない申し訳なさがあります。また、行事を通して社会性を身に着け、強い体を育てるという目標があります。普段なら運動会などの本番に向けて頑張ろうと職員もモチベーションを持って行うことができるのですが、何もないので普段の園生活で身に着けさせるのは大変だなと思います。

保育士としてご自身が気を付けていることはありますか?

 いつもより、うがい手洗いの回数を増やして、しっかりするように心がけています。ジムに通っていたのですが、今はジムをお休みしています。もしジムで感染したらという不安もあり、園での感染者第1号に絶対になりたくないという思いがあるので、休みの日の行動範囲も以前より狭めて、ジム以外にもカフェに行くのもためらいがあります。

 県外の旅行や帰省はもちろん、県内であっても遠出はしないようにしています。先生達同士で食事に行くのも自粛しています。緊急事態宣言が出されていた期間は1人でも感染者が出たら休園する方針でした。最近、兄弟が2人コロナの陽性が出た園がありました。そこは2日休園して、陽性になった子供と同じ年齢のクラスだけ2週間休んでもらい、小規模保育園だったので全員PCR検査を受けて陰性だったことが分かったそうです。

「咳き込んだだけで帰らされた時は戸惑いました」

コロナ対策で登園自粛を促していた4月から6月の間で、戸惑ったことや、普段の保育と異なる点、業務(保育)内容で変更になった点など教えてください。

 保護者の保育室内の立ち入りを禁止しました。以前までは保護者が保育室に入って来て、洋服の補充や布団のカバーをかけたり、手洗い、トイレなどをしてもらっていたのですが、今は送りに来たらすぐ「いってらっしゃい~」と見送ってなるべく保護者との接触をしないようにしています。保護者がしていた朝の支度を全部職員がするようになったので、手間が増えてちょっと大変になりましたね。

 4~6月の間は子供が少なかったので、担任の先生は交代で休んでいて、週3日程しか出勤していませんでした。交代で休むので顔を合わせることがなく、ラインでやり取りをする程度だったので、先生同士の意思疎通がとりづらかったです。「この子は昨日体調が良くなかったので注意してみてほしい」、「おうちでこんな様子だった」、「これを忘れたみたい」など、子供に対しての細かい連絡事項がたくさんあって、出勤したら連絡事項の書かれた付箋がたくさん貼ってあるという状態でした。

 交代で休んでいる先生に、お休み中にラインで伝達事項をたくさん送るのは悪いなと思ったので、付箋で伝えることが多かったです。なかなか伝達が上手くいかず、大きなトラブルは起きなかったものの、保護者に渡さないといけないものを渡し忘れたりといったことはありました。

 戸惑ったことでいえば、自粛期間中、風邪ではないのですが、痰がつまって咳き込んでいたら主任に「コロナじゃないよね?!」と心配され、金曜日だったこともあり、土日で治してほしいから今日はもう帰ってと言われ、そのまま帰らされたことがありました。保育園で咳もできないのかとちょっと戸惑いましたね。

確かにそれは戸惑いますね。園の先生もだいぶ敏感になっていた時期でしたよね。登園自粛要請がきた時、長女の通う保育園では、看護や医療福祉、スーパー勤務など、保護者が必ず自宅外で働かないといけない場合は受入れますが、自宅で仕事ができる場合はなるべく登園自粛をしてほしいという要請でした。ご自身の勤務先の保育園も同じような基準が設けられていましたか?

 私が勤務している園では、市から登園の自粛要請はきたのですが、あくまでも登園の自粛は保護者の判断に委ねるので、強要はしないでくださいという内容でした。病院で働いている保護者も多く、私が担当している1歳児クラスにIT関係の保護者の方も数名いらっしゃって、「在宅勤務になったので6月までお休みします」と言われる方もいらっしゃいました。

 私達は子供をみるのが仕事だからいいのですが、目が離せない1歳の子どもをみながら家で仕事をするのは大変じゃないかなと、他の先生とも話していました。しばらくして保護者からお電話で「先生、明日はお願いしていいですか?」、「水、金だけお願いしていいですか?」と言われ、「どうぞ、どうぞ。大変でしょう。いいですよ」というように、お子さんを受入れるようにしていました。在宅勤務の場合でも日を空けて預ける方や、両親どちらかに余裕があれば自粛期間中はずっと家でみて下さった方もいらっしゃいました。

私の場合は、在宅勤務で、祖父母とも同居していて、祖母は午後からの仕事なのでなるべく家でみてほしいと先生から言われました。また、当時は妊婦だったので、赤ちゃんにもしものことがあったら大変でしょうと言われ、結局長女は2カ月間登園自粛することになりました。心配してくれているんだろうなと思う反面、園での感染を避けたいから預かる子供の数は1人でも減らしたいからそういうのかなと思ったりもしました。

 そうですね。園に家族構成やそれぞれの仕事事情なども提出してもらっているので、それをみながら保護者の方と登園自粛のことでお話しすることもありました。勤務先の園は地元で長く続いているので、以前に卒園したお子さんが今は保護者になって、お子さんを預けている方もいらっしゃいます。長く働いている先生もいるので、家族関係などを把握していて、あの家庭はおばあちゃんが家にいらっしゃるはずだから自宅でみてもらえないかな、という話しを先生たちの間でしていました。

「なるべく自宅で子供をみてほしいけど、大変な保護者の気持ちもよく分かります」

自宅で仕事をしていても、子どもの面倒を見ながら働くことは大変なので預けたいと思う保護者も少なくないと思うのですが、自宅勤務の保護者から預かってほしいとお願いされたことはありますか? 

 ありますよ。自宅勤務の保護者でも園を休んでいてたまに登園させる方もいらっしゃって、その時には「どうぞ、大変でしょう」というように受入れていました。全然園を休めないという方や、両親も祖父母も在宅していながらも登園を続けたいという保護者の方がいらっしゃったのですが、「市からは自粛のお知らせがきているので……。集団で過ごすので、感染の危険もあるからできれば……」というようにお願いしていました。

 保護者の方も自粛した方がいいと分かっているけど、やむをえず預けてもいいですかというのが見える時は「どうぞ、どうぞ」という感じで預かっていました。なかなかいないですが、自分も余裕があるのに預けていいですか、という保護者の方には事情を聞いて、「どうしても難しいですか? お時間ないですか?」と、なるべく自宅でみてもらえないかお話をします。仕事の関係で融通がきかずどうしても預けたいという保護者の方を断ったことは1度もありません。登園自粛のお願いが市からきていることを保護者も分かった上で預かってほしいと言っているので、どうしても預かってほしいと言われたら受入れるという方針でした。

コロナ禍の中で、保護者への対応で困ったことはありましたか?

 保護者の対応で困ったことは特になかったです。遠慮がちに預かってほしいんですけど、という保護者や、自粛に協力的な方が多かったですね。子供をみながら仕事や家事は大変だろうなと職員側も分かっていたので、特に保護者との対立はありませんでした。

「風邪をひいても元気があれば通常どおり受け入れます」

現在は通常通り受け入れていると思いますが、子供は風邪をひきやすいので保育園で風邪が流行るのは致し方ないことと思われます。園ではどのような対策をとるようにしていますか?

 登園後の検温が37.4℃以上だったら保護者にお伝えして、保護者がお休みの日なら「今日はおうちでみようかな」という方もいらっしゃるのですが、仕事の日だとお子さんを預かって様子を見て、熱が上がったら連絡するというようにしています。

 熱が出た場合、平熱に下がって24時間しないと登園できないという方針なので、昨日の朝熱が出て、夜下がって、翌日の朝も熱がないから登園という場合は、解熱剤使わずに平熱になって24時間経ってから登園してくださいとお願いするようにしています。

長女が風邪をひいて1週間休んだのですが、熱はなく、1日中元気に過ごしていました。咳と鼻水がまだ少し続いているのですが、保育園を休ませると仕事にならないので登園しています。治るまで休んで欲しいとは言われませんが、先生からすると休んでほしいのかなと感じます。

 保護者としては熱がなく、コロナではないとはっきりと分かっているなら預けたいと思うのですが、保育士として風邪の園児が登園を続けることはどのように思われますか?

 勤務先の園では、鼻水や咳が出ていても元気に登園してくる子供達はいますね。軽い風邪で、病院の先生からも休まなくていいと言われていれば、注意してみておきますねと保護者に言って子供を預かるようにしています。ただ、お昼寝の時に痰がつまっていて咳が出て止まらない、息がしづらくてヒューヒュー息をしている子がいれば、保護者に連絡するようにしています。

 どうしても仕事を休めない方もいるので、大変なのは分かるのですが、園でしんどそうにしている子供をみるとかわいそうだなと思います。1日休んで家でゆっくりしていれば少しでも体調が改善します。

 保育園に来ると子供も集団生活で頑張っているので、自分のペースで過ごせません。寝たいときに寝られないし、休みたいときにご飯を食べないといけないし、外遊びの時には皆で一緒に外に出ないといけないので、無理をして周りに合わせないといけないんですよね。体調悪いのに無理をしてずっと登園している子供をみていると、1日、2日休んだらよくなるのに、とは思います。

「まずは生活が大事です! 登園自粛は促しますが、保護者の判断に委ねます」

現在、コロナ感染者がまた増えてきています。今後インフルエンザのようにコロナも日常の中の病気(風邪の延長)と捉えて上手く付き合っていくしかないと思うのですが、まだ国としても経済とコロナ対策のバランスを取れずにいます。「withコロナ」と言われていますが、感染拡大が懸念される今、難しい状況だと思います。

 保護者からすれば、我が子が保育園でコロナにかかるかもしれないという不安もありますが、再び登園自粛の要請がきた場合、仕事ができず経済的に厳しい状況になってしまう恐れもあります。コロナにかかる恐れよりも生活を優先して登園させたいと思う保護者に対してどのように思いますか? 

 また、コロナの感染者が更に増え続けていった場合、登園自粛をしてほしいと思いますか?

 生活ができなかったらしょうがないと思います。コロナにかかるか、かからないかより、まずは生活が大事というのは分かります。子供を園に預けないで、仕事ができないまま家にいて、それがいつまで続くかも分からないというのは、大変ですよね。

 自粛期間中はできれば家でみてほしいですが、難しければ園で子供を受入れるようにしています。園からは自粛をお願いしますが、その後の判断は保護者に委ねて、園から絶対に自粛してくださいということはしないですね。

クラスターが発生している保育園が東京を中心にいくつかあるようですが、勤務先の保育園でクラスターが発生する心配や不安はありますか? 

 不安はありますね。何より、自分が感染源になりたくないです。他の先生達とも自分が第1号になるのは死んでも嫌ですよね、と話しています。コロナが原因で保育園が休みになると保護者は絶対大変になるので、保護者の為にも自分がコロナに感染しないよう気を付けないと、と思います。

 それに、もしコロナに感染して園で第1号になれば、他の先生からあいつが菌を持ってきたと数年間言われそうですし(笑)。自分の行動範囲が狭くなるのは嫌ですだけど、こういう時はしょうがないですよね。

Kさんのように、コロナに感染するのではという不安を抱えている保育士は多いと思いますか?

 多いと思います。園だけで感染が広がるのではなく、自分の親や家族に広がる恐れもありますよね。勤務先の園では、結婚したら退職する先生が多く、現在の正社員は皆独身です。年配の先生の中には、親の介護をしている先生もいます。自分が感染しても重篤にはならないかもしれないけど、親に感染したら大変なことになるという不安を抱えているようです。

「子供の成長を感じられるやりがいのある仕事。これからも続けていきたいです」
 

心配や不安を抱えながらも保育園で働き続けるモチベーションは何ですか? 

 主任の先生が朝礼で、「こういう時だからこそ社会を回していかないといけない。私達はそういうときの為の縁の下の力持ちなんです」と言っていました。保育園があることで、子育てを支え、保護者が仕事をして、それが地域を支えることになるし、ひいては国を支えることになる。こういう時だからこそ頑張りましょう、と皆を勇気づけてくれました。それがモチベーションになっていますね。

そう思ってくださっていることは本当にありがたいです。コロナなどの感染症にかかりやすい職場だと思いますが、これからも保育士を続けていきたいと思いますか?

 子供もかわいいですし、そう思います。働き始めて1、2年目の時、免疫があまりなかったので、子供達からすぐに風邪をうつされ、しょっちゅう風邪をひいていました。嘔吐や下痢も流行ったらすぐに、自分も嘔吐していました。3年目を過ぎると免疫ができてきたのか、全くかからずに過ごせています。感染症はかかりやすいですが、恐れや不安よりも、仕事のやりがいを感じやすいので、これからも続けていきたいと思っています。

どのようなやりがいを感じていますか?

 子供の成長が早いところですね。去年赤ちゃんで歩けなかった子が歩けるようになったり、走ってすぐ転んでいた子が転ばずに走れるようになったり、友達のおもちゃをとってばかりいた子が貸してあげられるようになったり、しゃべられなかった子が「せんせー」としゃべってくれたり。成長がすごく早いので、子供のできるようになった姿をみられるのがこの仕事の楽しいところです。自分は保育士の仕事が好きなんだなと実感しますね。

  *   *  *

 Kさんへのインタビューを通して、保育士のありがたみを改めて感じさせられました。

 コロナ禍の中で、保護者と保育士との「預けたい」、「自粛してほしい」という駆け引きがある現実ではありますが、保育士も保護者の大変さを理解してくれていることが分かりました。協力して子育てをしてくれている保育士へ感謝の気持ちを持ちながら、自粛期間中でもどうしても預けないといけない申し訳なさを伝えれば、ギスギスした駆け引きをしないでも受け入れてくれるのだと思います。

 現在もコロナに感染しないよう職場でもプライベートでも気を付けて生活をしてくれている保育士の皆さんに、感謝しながら、子供を登園させていきたいと思います。

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