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イージス・アショアの価値と代替案の価値

■イージス・アショア配備中止

 日本はミサイル防衛システムの一つとして、秋田県と山口県で地上配備型迎撃システムのイージス・アショアを配備する予定だった。だがイージス・アショアから発射される迎撃ミサイル(SM3 Block IIA)発射で、ブースター分離が問題視される。

戦争学研究家 上岡龍次氏

戦争学研究家 上岡龍次氏

 迎撃ミサイルの発射で、切り離されたブースターが民家に落下する可能性が高い。これで日米が協議するが、問題解決までの年数と金額により計画は頓挫。防衛相は6月15日、秋田県と山口県で進めていたイージス・アショアの配備計画の停止を発表した。

■イージス・アショアの価値

 イージス・アショアは防御用の盾。仮想敵国が日本を攻撃する弾道ミサイルを監視・警戒し、発射を探知すれば迎撃する。これで日本国民の生命を守る。それだけではなく、イージス・アショアには核保有国の外交圧力を無力化する能力を持っている。

 核保有国の仮想敵国が日本を恫喝しても、イージス・アショアが存在すれば恫喝を無力化することが可能。現段階のミサイル防衛システムは上昇段階・中間段階・終末段階の3段階に分けられている。この3段階で段階的に仮想敵国の弾道ミサイルを迎撃する。現段階の技術では、発射された弾道ミサイルの100%迎撃は不可能。だが段階的に迎撃することで、30%以上の迎撃率を求めている。

 例えば上昇段階の迎撃率20%・中間段階の迎撃率20%・終末段階の迎撃率20%だとすれば、仮想敵国の弾道ミサイルを60%迎撃できるが、残り40%は弾着することになる。これは100%の弾着の被害よりも、40%の被害まで軽減する考え方。

 見た目は被害前提だが、理想と現実のバランスで得られた経験則。同時に自軍は60%の戦力は生き残るので、仮想敵国に対して反撃能力を維持することが可能。100%の損害では反撃すらできないが、60%の戦力が残れば反撃可能だ。

 仮想敵国も愚かではないから、自軍が反撃を受けるなら弾道ミサイルを用いた攻撃を躊躇する。これは冷戦期に、核戦争を前提とした状況で生まれた経験則である。自軍も反撃されるなら核攻撃しない。これはミサイル防衛システムでも生きている。

 つまりミサイル防衛システムの迎撃率が50%を超えた場合は、核保有国の恫喝を無力化できる。だからロシア・中国政府は日本のイージス・アショア配備を嫌った。

■核保有国を喜ばせた

 日本がイージス・アショア配備中止を公表したら、核保有国で反日国のロシア・中国は大喜び。核保有疑惑のある反日国の北朝鮮も大喜び。これらの国は、核弾頭を用いた恫喝外交の効力が維持される。ならば、核弾頭の恐怖で日本政府を脅すことは容易。しかも反日メディア・反日知識人を動員し、「日本は文句を言わずに従うべきだ」等の運動を活発化させる。

 メディアを用いた国民の誘導を行えば、日本への恫喝外交は効力を持つ。だからこそ、ロシア・中国・北朝鮮は喜ぶのだ。日本政府がイージス・アショアの意味を理解し、国民に説明していれば、この様なことは回避できたかもしれない。

■日本政府の代替案

 日本政府はイージス・アショア配備を中止し、代替案として巡航ミサイルを用いた敵基地攻撃能力(の検討)を公表。国防の必要性からイージス・アショアの代替ならば、国産の巡航ミサイルではないだろう。ならば信頼性のあるアメリカ製巡航ミサイル・トマホークだと思われる。

 結論から言えば、ミサイルが目標から10m以内に弾着するなら核弾頭は不要。核弾頭の核威力は命中率の悪さを補うことが目的。冷戦期の核弾頭は、目標から3000m離れて弾着しても威力があるよう計算されていた。だから当時はメガトン級の核威力が求められた。

誤差 3000m:メガトン級の核威力
誤差  300m:300から400キロトンの核威力
誤差  10m:通常弾頭

 実際に巡航ミサイルは核弾頭使用が前提だったが、命中率が目標から10m以内になると、通常弾頭の使用が基本になった。それだけ命中率が10m以内になることは、弾道ミサイルも通常弾頭で先制攻撃と報復攻撃が可能になることを意味している。

 今の日本ならば、アメリカ製巡航ミサイルの購入だと短期間で実戦配備が可能。次に航空機・潜水艦発射型を改修するなどしてミサイルを保有すれば、日本は核兵器を要さずに先制攻撃・報復攻撃可能な国になる。

 これは反日国の核保有国には迷惑で、日本を脅しても恫喝外交の効力が低下する。それに日本の潜水艦から巡航ミサイルが発射可能になれば、日本を攻撃しても報復攻撃を受ける。これだけで日本への核攻撃のハードルを高くできる。この点で専守防衛を成立させることになる。

■日本が持つ底力

 防衛省は2019年に射程400kmを超える空対艦ミサイルの開発を発表した。空対艦ミサイルの射程延長は敵艦の防空ミサイルに対応するため。だが飛行速度マッハ3で射程距離400kmを超えることは、空対地ミサイルとして発展させる可能性を持っている。

 仮想敵国の防空システムを突破し目標に突入するなら、日本は先制攻撃と報復攻撃の能力を世界に示す。これだけで核保有国が嫌がる能力だから、日本の巡航ミサイルを用いた敵基地攻撃能力と高速ミサイルの保有は有益なのだ。

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