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中国の新型コロナウィルス問題に対処する3つの視点

 中国の新型コロナウィルスによる感染拡大問題は、我々が中国という国家を眺める際に幾つかの重要な示唆を与えるものであった。そこで、下記に3つほどポイントをまとめたいと思う。

(1)中国の危機管理能力とその限界について

 12月8日に武漢で発生したコロナウィルスの感染問題について、早期に情報公開及び対処ができなかった理由として、中央政府と地方政府の双方の責任に言及する意見が出ている。省政府が重要会議の日程のために隠蔽した or 中央の許可がなければ情報公開できなかった、などの憶測と擦り付け合いが起きている。

 筆者はそれらの憶測情報や擦り付け合いに興味はない。重要なことは中国政府は現状ではそれほど致死性も高くない感染症に対する封じ込め対応を適切に行うことが困難であったということだけだ。

 1月中旬に大規模な対応が一気になされており、武漢をはじめとした幾つかの大都市の都市機能が停止し、上海ら他の大都市にも影響を及ぼす状況となっている。これは仮に同時に複数の同様の感染症が発生した場合、中国は未曽有の混乱状況に陥ることを意味している。一部の衛生環境が悪い地域からそのような悪性のウィルスが連続的に発生する可能性も十分にある。

 中国の危機管理能力とその限界について、今回の事案への対応は明確な示唆を関係各国に与えることになったものと思う。

(2)中国を国際社会に開かれたものにする機会として

 今回の感染症拡大は人の移動が大規模に発生する現代において、他国にとっても他人事とは言えない。特に中国からのインバウンドが盛んな米国や日本のような国は真剣に対応するべきものだ。

 更に重要なことは今回の機会が中国を国際社会に開かれた体制に少しでも近づけるために有効なものになるかもしれないということだ。中国は米国からの支援を拒絶しているが、そのような態度を国際社会が一丸となって改めさせる必要がある。

 そして、同国の防疫体制について積極的な情報公開を行う体制を構築するべきである。一部報道にあるようなWHO(世界保健機関)に中国政府が圧力をかけるようなことがあってはならない。同国には今回のケジメを取らせる形で国際社会との協力関係構築を更にコミットさせるべきだ。

(3)日本における過剰反応に対する冷静な議論の必要性

 日本の国会議員や有識者とされる人の中には、これを機会にインバウンドによる観光産業振興を見直すべき旨を述べる人々が存在している。筆者にはこれらの人々は中国人に対する国家的・民族的なヘイト意識を背景として、もっともらしい意見を述べているようにしか見えない。

 危機管理と観光振興は当然であるが両立するものだ。世界的な経済成長を背景とし、観光事業は期待される成長産業である。そのため、これらの産業を健全に成長させ続けるためにイザという時の危機管理体制の整備を行うことは当然だと言える。

 インバウンド需要増加は公衆衛生にとって危険である、という主張は、「憲法を改正して自衛隊を国軍にすると戦争が起きる」という主張と同様である。日本各地で観光産業は重要な産業の柱であり、危機管理の不足を棚に上げて飯のタネを潰す愚行をしてはならない。

 以上の3点は、今回のコロナウィルスによる感染症を通じ、筆者が重要と感じたポイントである。むろん、日本政府の国内対応について思うところは別にあるが、安倍政権は対外的には米国と歩調を合わせながら中国の政治改革に結びつける努力をしていくべきだろう。

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