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習近平訪日に関する人類史的展望

 習近平が国賓として訪日することが決まった。これに関しては色々な考え方があるだろう。中国と日本の経済的ないし歴史的、文化的繋がりの深さと、トランプ政権の安全保障的に世界から撤退していく傾向だけではなく、グローバルな貿易等に批判的な経済政策を見ると、トランプのアメリカを牽制するためには、望ましい方針であるという考え方もあるかも知れない。

 しかし本当に、そうだろうか?この問題に関して人類史の観点から長期的な展望で考えてみたい。

 まず安全保障の側面だが、今は中国が日米双方にとって重大な軍事的脅威になっている。そこでトランプ政権はロシアと協力して中国を封じ込める政策に出たいのだが、国内に反対も多く進捗していない。そしてトランプ、プーチン両氏と良好な関係にあるのは、なんと言っても安倍総理である。

 それを考えるとプーチンを招待した方が現状では望ましかったように思う。

 これは中期的な見方である。長期的には中国が日米にとって脅威でなくなり、ロシアが再び重大な脅威になることも、全くあり得ないことではない。そのときには80年代と同様、再び日米中でロシアを包囲する政策に出れば良い。

 ジョージ・オーウエルの小説『1984』の世界であるが、外交や安全保障とは、そのようなものなのである。

 もっと超長期的な奥の深い問題がある。

 グローバルな貿易で経済を発展させることが、本当に良いことなのだろうか?その結果として、そのようなビジネスが出来るエリートだけが良くなり、そうではない人々の生活が苦しくなる、いわゆる格差社会問題が起こった。トランプ氏もジョンソン英首相も、それと闘っているのである。

 日本も同様にした方が現段階では良いのではないか?

 経済が発展しなければ、若者の雇用が増えないし、すると高齢者に対する介護や年金の問題も解決できないという考え方がある。しかし日米欧ではドルが変動相場制になり、経済がグローバル化した70年代以来、少子化が何れにしても進行している。最近では韓国や中国でさえ少子化が起こっている。ベトナムで起こるのも時間の問題という説もある。

 このようにグローバル経済が進行すればするほど、そのようなグローバル貿易等に関係できるエリート以外の人々の生活が苦しくなって子供を作りにくくなり、エリートの人々も子供を同じようなエリートに育てるために掛かる教育費を考えると子供を産むのを控えるようになる。

 さらには同じ70年代くらいから始まったハイテク化―今なら人工知能の発達である。そのため人工知能の開発や運用が出来るエリート以外の人々の雇用が人工知能やロボットに奪われて行く。科学技術の発達もグローバルな(科学的)情報の遣り取り等により促進されるものである。これも少子化の大きな原因になっていると思う。

 これは必然的に起こる現象だと思う。インドやアフリカでさえ、数十年以内には起こるに違いない。

 つまりグローバル経済の中で経済的に強い国になれば、必然的に少子化は起こるのである。

 そこで移民を入れるという発想が出て来る。それを実行した欧米諸国が今どれほど社会的に混乱しているか?それもトランプ、ジョンソン両氏登場の重大な要因である。

 グローバル貿易や人工知能の開発が出来るようなエリートの人材を選んで少数だけ入れるのは仕方がないかも知れない。実際、トランプ、ジョンソン両氏も、そのような方針である。

 だが、それ以上のことを行うと、社会の混乱の原因になることは先にも触れた。

 ハーフの人が増えれば遺伝学的にも優秀な人材が増えるという考え方もある。最近の特にスポーツ界における、外見が非日本人の日本国籍者の活躍は、確かに良い例だろう。だが中学の理科の時間にも教えているメンデルの法則からしても、これは一代限りのものであり、3世、4世になれば祖先と変わらなくなってしまう。

 それを考えると社会の安定性を守ることの方が重要なのではないか?そのためには多少の移民の受け入れが仕方がないと考えるとしても、できるだけ日本と文化が近い国に絞って考えた方が良い。トランプのアメリカも実態として白人キリスト教系の移民を優先する傾向にある。

 これは外交、安全保障の問題とも密接に関係して来るが、日本は実は儒教文明の国ではない。男子男系相続に捉われず、必要なら女系相続を積極的に行って来た。それが社会全体の適材適所を実現し、古代においては日本よりも優れていた儒教文明を追い越すことに成功した。

 これは実は欧米や東南アジアの一部も良く似ているのである。

 それは海を通じて発展するしかない地理的条件の影響も大きいかも知れない。男性が海上で、貿易、戦争、漁業等のリスクの高い仕事をしている間、家を守るのが女性だからだろうか?

 このような社会の在り方は、いわゆる民主主義に肯定的な体質にもなる。

 儒教文明の国やロシアは、なかなか民主主義にならない。私見だがベトナムが民主主義国家になるのには、ロシアや儒教文明の国々よりは早いのではないか?

 こう考えると移民の受け入れだけではない。安全保障や貿易協力の面でも、日本は米英と東南アジアを中心に考えるべきだろう。

 そのような貿易協力は、グローバル経済を促進させてしまう。というか今はトランプ氏等が格差拡大にブレーキを掛けるためにグローバル経済を部分的にでも疎外する政策を行ってくれていて、それは間違っていない。

 しかしグローバル経済というものは、最終的には押し留めることは出来ないものなのではないだろうか?人工知能の発達も同様である。

 そうすると全世界的に少子化が進行することになる。移民政策を積極的に推し進めるとしても、移民を送り出してくれる国自体が無くなって行く。

 そう考えると若者が少ない社会での高齢者の介護や年金の問題の解決には、今までと異なる発想の転換が必要になる。

 例えば現時点では相対的に自国より若者が多く経済的に従来型の成長をしている国で資金を運用する。それを考えると郵貯や公的年金の運用民営化は、やはり間違った政策ではなかった。これはエリートになれなかった若者等に対する、いわゆるベーシックインカム的なものの実現にも応用可能だと思う。

 生産拠点を労働賃金の安い外国に移転させたり、ロボットや人工知能を使って人間の雇用を減らして利潤を増やした企業には、少し大目に税金を掛ける。ロボットや人工知能の保有に、自動車と同じ保有税を掛ける。

 色々な考え方があると思う。

 もっと大きな問題があると思う。いま米国では遺伝子操作等で、人間の老化を遅らせるような研究が進んでいる。

 100歳になっても30代の時と余り変わらない健康状態で働けるのなら、年金や介護は余り問題で無くなる。少子化が進行しても、移民を入れなくても、社会の生産人口は、減らないか、むしろ増える。

 やがてグローバル貿易や人工知能、生命科学等に携わるエリートの子供しか生まれて来ないように、遺伝子操作を使ってすることも出来るようになるのではないか?

 まさにジョージ・オーウエルの『1984』の世界である。あの世界を実現する以外に、もう人類には残された道がないのかも知れない。

 あの小説の中では最初に書いたように、米中露三国が、常に同盟相手を変えて抗争をし続けている。海を通じて発展するしかない国と内陸の国。内陸でも長大な国境を接している国同士。それらが真の友好関係になることは、歴史の終わる日まで来ないのではないか?

 もしベーシック・インカム的なものが実現できても、人間は労働以外のところで、どれくらい生きる喜びを見つけられるだろうか?まして少なくとも完璧なベーシック・インカムは、おそらく実現不可能だろう。そうするとエリートになれなかった人によるテロ等は、これから悪化する一方になる。

 それが悪いことなのだろうか?

 21世紀後半の人類の社会は、グローバル貿易や人工知能、生命科学等に携われるエリート以外は、生きて行けない社会になる可能性が極めて高い。それまでに、そうなれない人々の人口を減らす必要がある。

 もちろん悲惨な戦争やテロによる大量殺人は、できるだけ望ましくない。それを考えても少子化は良いことだし、移民の受け入れは望ましくないのである。

 このように考えてみると、移民問題を含む中国との関係による従来型の経済発展に拘ることは、やはり望ましくないように思われる。既に決まってしまった習近平訪日をキャンセルする必要はないが、この文章の中で述べたような長期的かつ新しい考え方を日本人も、するべき時が来ているように思う。

「GII REPORT」より転載
https://ameblo.jp/gii-report

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