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国内型テロとサイコ型テロ

 8月最初の週末、テキサス州エルパソとオハイオ州デイトンで銃撃事件が起こり、21人と9人が、それぞれ死亡した。少なくともエルパソの事件の犯人は白人優越主義者で移民を狙った犯行だった。

 これを以って“トランプ大統領の移民政策等が米国社会の分断と憎悪を深めている”というお定まりの批判が多い。

ところがFOXが8月7日に配信した“Trump complains of double standard in shooting response, cites apparent liberal views of Ohio gunman”によれば、トランプ大統領は“デイトンの犯人が極左を支持し、民主党の大統領候補候補であるバーニー・サンダース上院議員とエリザベス・ウォーレンを支持していたと語った。

AP通信は、犯人と思われるTwitterが、ドナルド・トランプ大統領の(補足:移民管理を強化しようとする)選挙を嘆き、ウォレンを支援し、移民拘留センターのフェンスを切るよう人々を奨励するつぶやきを「左翼」と表示するツイートを示したと報告した。

(中略)

トランプとは関係ありませんが、誰もそれについて言及していない“

 このようにトランプ大統領を一方的に“悪魔化”する卑劣な報道が大統領選挙中から繰り返されており、私は心底からの怒りを禁じ得ない。トランプ氏は実に優れた人物なのである。その証拠にFOX前掲記事では、

“彼はサンダースもウォーレンも責めない代わりに、犯人は「病気の人」だと言った”という。実にものの分かった人物ではないか!

何れにしても、このような「病気」は、どうして発生するのだろうか?WSJが8月5日に配信した“The Killers in Our Midst”から引用してみよう。

「 エルパソの容疑者の男は、事件発生前に匿名掲示板サイト「8chan」に投稿された声明の筆者だとみられている。その中で男は、クライストチャーチ乱射事件の犯人の人種問題絡みの動機に共感を示すとともに、ヒスパニック系移民を非難していた。しかし同時に、移民を支持し、国土を汚染している「やりたい放題の企業」への怒りも示していた。

 これは、帰属意識を感じることができず、理解することもできない社会に対する怒りの奔出である。また、孤立傾向にあり、ネット空間で吸収した思考に浸り切っている若い男の殺人犯の多くに極めて典型的に見られる傾向でもある。彼らは、家族や近隣の人々、教会、職場の仲間とのつながりがないことが多い。ネット空間以外の全てとのつながりがないのだ。

 これらの男たちは、ネット上で互いに刺激し合っているため、すべてのやりとりと共通の接点を捜査する必要がある。米連邦捜査局(FBI)は、過去9カ月間で国内テロに関連して100人を逮捕したとしている。」(WSJ日本語版より引用)

このような状況に対しワシントン・タイムスが8月6日に配信した“Mass shootings spur call for proactive ‘domestic terrorism’ charges”によれば、トランプ大統領その他の有力政治家等が「国内型テロ」という言葉を使い始めているらしい。その理由は、イスラムのテロと同様に、事前防止のための通信傍受や令状の取得が、やり易くなることがあるのではないかと同記事は伝えている。

この「国内型テロ」とは、私が2018年に近代消防社から出版した『サイコ型テロへの処方箋』の中で書いた「サイコ型テロ」と同じものと考えて良いように思う。そのため以下の文章の内容は『サイコ型テロへの処方箋』の内容と木霊し、その後日談的なものにもなっていると思う。ご興味のある方は『サイコ型テロへの処方箋』も読んで頂ければ幸いと思う。

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それは兎も角、同じワシントン・タイムスが8月7日に配信した“Trump ‘all in favor’ of expanded background checks after mass shootings”によれば、トランプ氏は銃購入時のバックグラウンドチェックにも力を入れる方針らしい。更に同時にThe Hillが8月5日に配信した“Trump suggests tying background checks to immigration reform legislation after deadly shootings”によれば、トランプ氏は移民法改正により移民のバックグラウンドチェックにも力を入れる方針らしい。

この記事の中では例によって“移民が必ず犯罪を犯すわけではない”と批判的な書き方になっている。だが私見では移民―特に不法移民が増えたことが、アメリカ社会の分断と憎悪の原因の、少なくとも一つになっていると思う。やはりトランプ氏は当然のことを言っているだけだと思う。

ところでワシントン・タイムス8月7日配信前掲記事によれば、トランプ氏はバックグラウンドチェックの延長上で“高リスクまたは精神障害とみなされる人々の手から銃を締め出す「レッドフラッグ」法に焦点を当てた。”という。

「レッドフラッグ」法とは何か?National Reviewが8月5日に配信した“Donald Trump Is Right to Call for Red-Flag Laws”によれば、これは刑法のギャップを模索する人々が、法の隙間をメンタルヘルスに関する問題で埋めて、いわゆる一時的な発作により銃の所有者が脅迫的な行動を示していると認められる証拠を提示できる場合、適切に作成された法律によって、個人の自由を保護しながら、人命を救うことができる“もので、適切に作成された「レッドフラッグ法」の要素として以下の条件を挙げている。

1. 申立人は被申立人と直接やり取りする狭い定義の人々(近親者、家族、雇用主、教育者)に限定する必要がある。

2. 申立人は、被申立人が自分自身または他者にとって重大な危険であるという明確で説得力のある、容認できる証拠を提出する必要がある。

3. 被申立人には請求に異議を申し立てる機会を与えるべき。

4. 緊急事態が発生した場合には、 特別請求を争うことができる。完全な公聴会は、好ましくは72時間以内に、迅速にスケジュールされなければならない。

5. 申立人が被申立人は所定の位置に留まるべきであるという明確で説得力のある証拠を提出できる場合を除き、規定の期間が経過すると命令は失効する。

これなら人権上の心配なく危険な「病気の人」を取り敢えず隔離できるわけである。そしてワシントン・ポストが8月7日に配信した“White House invites tech companies to discussion of violent online extremism”によれば、“ホワイトハウスは、9日にネットによる暴力の台頭について議論するためにトップのハイテク企業を招待し、テキサスでの集団射殺により22人が死亡した後のトランプ政権の最初の主要な関与とする。”

“5日のトランプはソーシャルメディアを広く狙い、司法省に「地元の州および連邦政府機関、ソーシャルメディア企業と協力して、大量攻撃者を攻撃する前に検出できるツールを開発する」ように命じた。”

“Facebook、Google、Reddit、および8chanはコメントのリクエストに応じなかった。Twitterはコメントを拒否した。”

“トランプの批判者の何人かは、長年の(補足:イスラム過激派によるものを含む)ネットによる憎悪と暴力の増大に連邦政府の資源を集中するように促し、(中略)代わりに、大統領は、Facebook、Google、Twitterなどのハイテク大手の想定される政治的傾向に注意を向けており、問題のあるコンテンツをレビューして削除するポリシーは保守派の検閲につながると主張している。”という。

逆にWSJが8月6日に配信した“”によれば、エルパソの犯人が犯行声明を書き込んだ「8chan」は事件後にオフラインにされていて、それに対して社長のワトキンス氏は強く抗議しているという。この「8chan」は文字通り日本の「2ちゃんねる」と殆ど同じもので、匿名かつ制約のない“言論の要塞”であるという。そのため今までも大量殺人事件等の声明や犯人同士の連絡に使われた疑いがあるという。しかし一方的にオフラインにされたりすることは、言論の自由に対する抑圧であると、ワトキンス氏は主張しているという。

しかし日本の「2ちゃんねる」でも何度も同様のことが起こったが、日本の「2ちゃんねる」は、その度にIPアドレス等を利用して、犯人逮捕のために警察に協力して来た。それも内容が具体的なものならば、声明を出しただけで実行する前の容疑者でも、IPアドレスや住所を警察に提供して来た。そのため今までも活動停止状態に追い込まれたことはない。

日本の「2ちゃんねる」にできることが、アメリカの「8chan」に出来ないのか?それを「8chan」がやれば、Facebook、Google、Twitter等もやらざるを得なくなるかも知れない。日米の法体系の違いもあるかも知れないが、日本ではネット事業者協会のようなところの申し合わせもある。それを米国に参考にしてもらっても良いのではないか?

何れにしてもトランプ大統領が司法省に命じた“大量攻撃者を攻撃する前に検出できるツールを開発”に成功すれば、このような事件を、かなり事前に探知できると思う。もし、そのようなものが開発されたら、ぜひ日本も導入するべきだと思う。

そして「レッドフラッグ法」である。これがあれば探知された犯人を事件を起こす前に身柄拘束することも出来る。しかも人権上の配慮も十分と思う。

アメリカでも「レッドフラッグ法」は、これから作られるようである。しかし登戸事件や京都アニメの事件を思う時、銃のない日本だからこそ、より精密化された「レッドフラッグ法」の制定は、急務と思われる。

以上の諸件が実現できれば、登戸事件や京都アニメの事件のような悲劇を、少なくとも減らすことが出来る。そのようなことの一刻も早い実現を一日本人として願って止まない。


「GII REPORT」より転載
https://ameblo.jp/gii-report

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