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  • 乾 一宇
    乾 一宇
    元防衛研究所研究室長
    茅原 郁生
    茅原 郁生
    中国安全保障
    濱口 和久
    濱口 和久
    防衛レーダー
    高永喆
    高永喆
    拓殖大学客員研究員
    新田 容子
    新田 容子
    サイバー安全保障
    岡田 真理
    岡田 真理
    フリーライター
    杉山 蕃
    杉山 蕃
    元統幕議長
    竹田 五郎
    竹田 五郎
    元統幕議長
    田村 重信
    田村 重信
    元自民党政務調査会審議役
    吉川 圭一
    吉川 圭一
    グローバル・イッシューズ総合研究所代表

    世界は香港デモを見捨てる

    ■長期化する香港デモ

     香港市民は民主化を求めており、中国本土に飲み込まれることを拒んでいる。中国共産党は2047年まで「一国二制度」を約束したが、現実は日々中国共産党の支配が進んでいる。そんな時に香港で、犯罪者を中国本土に引き渡す条例がデモの引き金になった。

     初期段階は香港デモ派が優勢だった。デモ隊は平和的な行進を行う非暴力。デモ隊は民主化を求めるので世界からの印象も良かった。だがデモが長期化するとデモ隊の一部が政府施設を破壊し侵入。これでデモから暴徒に印象が変わる。

     これ以降は香港特別行政区政府が優勢になり、治安部隊を投入した強制排除が普遍化する。しかも世界は治安部隊による強制排除や逮捕を黙認している。

    ■7月1日から変化

     7月1日に香港デモが行われたが、この日から状況が変化している。この日の香港デモは一部が暴徒化し、政府施設がある立法会の建物内部に突入。デモ隊は一時的に建物を占拠するまで行動が拡大した。政府施設に侵入し占拠する行為はデモではない。香港デモはこの日から暴徒になった。

     立法会を警備していたはずの警官隊は抵抗していない。暴徒が入り口のガラスを破壊しているならば、催涙スプレーを用いて排除することが可能。さらに立法会のガラスを破壊した段階で、外で待機している警官隊が排除することも出来たはず。

     だが立法会を警備する警官隊は粛々と後退。その後は暴徒化した者達が立法会を占拠する映像が流された。さらに警官隊が立法会を占拠する暴徒を排除する映像になった。まるで意図的に立法会に侵入させた様に感じさせる。

    ■白服の集団

     7月21日の香港デモは元朗で新たな変化が生まれた。この日は白服の集団がデモ隊を襲撃。白服の集団の襲撃で45人が病院に搬送された。白服の集団の背後には中国共産党が居ると推測されるが、世界は香港デモに冷淡。

     7月1日の立法会占拠により、民主化デモではなく暴徒の印象が生まれている。この日以後の香港特別行政区政府は、治安部隊を用いたデモ隊の強制排除を積極的に実行させている。だが世界はデモ隊の強制排除を批判していない。さらに香港特別行政区政府は、民主派と思われる者達を逮捕している。これでも世界は黙認している。

     白服の集団がデモ隊を襲撃し負傷者が出ても世界は黙認。白服の集団の黒幕が中国共産党だとすれば、中国共産党はデモ隊鎮圧の策を増やしたことになる。人民解放軍を用いた武力鎮圧は世界から批判される。だが中国本土派の市民とデモ隊の対立構造ならば、世界は黙認することになる。

    ■人民解放軍による武力鎮圧の可能性

     7月24日になると、中国共産党は「香港政府の要請があれば中国人民解放軍の現地部隊の出動が可能」と公言。これは第2の天安門事件を臭わせるが、世界はこの発言を批判しない。これは何を意味するのか?

     1989年の天安門事件は、民主化を求める市民を人民解放軍が武力鎮圧。世界は中国を批判したが、天安門事件は中国を孤立させなかった。それどころか中国は、世界の工場として世界から求められる有望な市場と見なされた。

     中国は天安門事件が発生しても経済的発展を続けた。人民解放軍による武力鎮圧が知られていても、世界は経済的発展を遂げる中国経済に魅力を感じた。世界が選んだのは人権ではなく経済的利益だった。

     香港デモは長期化し、デモ隊の一部は政府施設を破壊。これはデモではなく暴徒。さらに中国は人民解放軍を用いた武力鎮圧を臭わせても世界は批判しない。この状況で香港デモを武力鎮圧しても、世界は中国を一時的に批判するだけ。そして香港・中国への経済制裁も行わないだろう。

     何故なら香港は有力な自由貿易地域であり、世界有数の金融センター。世界が得る利益は大きい。香港に対する経済制裁は世界経済の混乱。これでは経済制裁をした国の経済も混乱させる。天安門事件と同様に、香港デモを武力鎮圧しても、世界は人権よりも経済的利益を優先する可能性が有る。

    ■覇権か経済か?

     中国と対立し覇権を求める国ならば、チベット・ウイグル・香港などを用い、人権問題で中国を批判する。何故ならチベット・ウイグル・香港などは中国の弱点。中国は宗教・人権を否定しているから、覇権で対立する国には最適な攻撃材料になる。

     だがアメリカでさえ、チベット・ウイグル・香港を用いて中国を追い詰めない。アメリカは宗教・人権問題で一定の批判はするが、経済制裁の理由にはしていない。これは覇権ではなく経済的利益を優先しているからだ。

     今の中国経済は天安門事件当時よりも巨大。中国企業は世界企業になった。中国企業は欧米の経済に根を下ろしたから、世界は人権よりも経済を選ぶだろう。ならば香港デモは世界から見捨てられる。

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