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  • 長谷山 崇彦
    長谷山 崇彦
    農学博士
    乾 一宇
    乾 一宇
    元防衛研究所研究室長
    加瀬 みき
    加瀬 みき
    米政策研究所
    茅原 郁生
    茅原 郁生
    中国安全保障
    濱口 和久
    濱口 和久
    防衛レーダー
    菊池 英博
    菊池 英博
    日本金融財政研究所所長
    小松 正之
    小松 正之
    東京財団上席研究員
    高永喆
    高永喆
    拓殖大学客員研究員
    新田 容子
    新田 容子
    サイバー安全保障
    岡田 真理
    岡田 真理
    フリーライター
    杉山 蕃
    杉山 蕃
    元統幕議長
    竹田 五郎
    竹田 五郎
    元統幕議長
    田村 重信
    田村 重信
    元自民党政務調査会審議役
    上岡 龍次
    上岡 龍次
    戦争学研究家
    呂 永茂
    呂 永茂
    南北戦略研究所所長

    国防長官交代とイラン攻撃そして日米安保破棄(?)

     ワシントン・ポストが6月21日に配信した“After calling off strikes on Iran, Trump suggests patience”によれば、トランプ大統領は同日、イランへの空爆命令を10分前に取り消したという。そもそも空爆自体が、アメリカの無人偵察機が国際空域でイランによって撃墜されたためであったが、それは逆に見ると人命の犠牲がなかったことを意味する。だが大統領が攻撃30分前に受けた状況説明では、150人のイラン人が死亡する可能性が高いと分かった。そこで相互の受けた被害のバランスを考えたトランプ氏は、攻撃命令を取消したという。これが本当なら大統領の耳に早めに入っていなければならない情報が、土壇場まで入っていなかったことになる。

     CNNが5月23日に配信した“Tensions rise between Pompeo and Bolton”によれば、ボルトン大統領補佐官とポンペオ国務長官の間に溝があるという。両者ともイランや北朝鮮等に関して超タカ派であることに変わりはないが、ポンペオ氏が外交官的な協調性を重視しているのに対し、ボルトン氏は声高に自らの理想を叫び続けるタイプ。そこでボルトン氏は、ポンペオ氏を含む高官が出席しない専門家会議を開催することが多い。それは決定の迅速化にも繋がり、トランプ氏の好む行き方でもある。しかし同時に、トランプ大統領の耳に入る情報が、事前にボルトン氏の好むものに厳選されてしまう危険性もある。私見だが6月21日の状況も、これが何か影響していた可能性もあるように思う。何れにしても同記事の最後は“彼らの関係の真の試練は、中東でもベネズエラの状況でも、国際的な危機が発生した場合に起こり得る”と結んでいる。

    そしてNewsweekが6月14日に配信した“U.S.-IRAN CRISIS: WHAT AND WHO’S BEHIND TRUMP’S ‘MAXIMUM PRESSURE’ AMID GULF ATTACKS”によれば、シャナハン国防長官代行は、ボルトン氏寄りの“イエスマン”だったという。

    VOXが6月21日に配信した“Trump plans to nominate Mark Esper, a former combat veteran and lobbyist, as Pentagon boss”によれば、そのシャナハン氏は無人機撃墜の数日前に、家族を巡る複雑な問題により上院での正式な国防長官承認を辞退して辞任し、その代わりにトランプ大統領は元陸軍軍人で、トランプ政権になってから陸軍長官だったエスパー氏を次期国防長官に指名した。エスパー氏はポンペオ国務長官の陸軍士官学校の同級生であり、ポンペオ氏はボルトン氏との関係における協力者を得たとも報じている。

    これも私見だが、6月21日に土壇場でトランプ大統領の耳に正確な情報が入ったことも、この問題と関係あるかも知れない。

    但しForeign Policyが6月21日に配信した“Trump Nominates Army Secretary as Pentagon Chief”によれば、エスパー氏はブッシュ二世政権時代まで陸軍高官だった関係上、同政権で国務省高官だったボルトン氏とも旧知の仲で、これで米国の国家安全保障の政策は安定するだろうとも述べられている。

    しかし同記事の中でもトランプ大統領はエスパー氏の正式承認を急ぐだろうと述べられている。それはワシントン・ポストが6月21日に配信した“A perilous time to have temps running the Pentagon”によれば、シャナハン氏が余りに長く“代行”の地位に居たため、いろいろな法律や規則により、エスパー氏は6週間程度しか“代行”では居られない可能性があるからだろう。この記事によれば、今までの大統領が有力閣僚等を“代行”のままで居させたケースは25%程度なのに対し、トランプ政権では50%近いという。それは上院で共和党が過半数ギリギリしか持っていないため、承認公聴会等を乗り切るのが難しいためだと、この記事では述べられている。

    しかし、それだけだろうか?私見だがトランプ氏の登場と歴史的役割とは、ワシントン既成勢力による硬直化した政治から、真に新しい状況に適った政治を行うことにあると思う。そうだからこそ軍部出身のマティス国防長官を更迭して、民間企業の航空機会社重役だったシャナハン氏を国防長官にしようとしたのである。そのお陰で今までは既存の陸海空軍の予算競争等によって中国にまで遅れを取っていた米国宇宙軍創設も軌道に乗って来ていたのである。それを考えると“代行”が多いことが悪いことか?逆に既存の陸軍高官だったエスパー氏が国防長官になることが本当に良いことか?

    Space Newsが6月19日に配信した“New acting Pentagon chief Esper a ‘good choice’”によれば、シャナハン氏が国防省内に創設した宇宙開発庁の予算獲得等に対し、やはりエスパー氏は既存の軍部の立場から積極的とは言えないらしい。但し今は陸軍の装備の70%も宇宙からの支援がなければ使えない。宇宙開発庁の目指しているシステムは複雑すぎて実戦的ではないのではないか?―というのが既存の軍人の考え方のようだが、しかし前記の現代的陸軍装備の問題を考えると、エスパー氏が少なくとも宇宙軍創設に積極的になる可能性は低い訳では決してない。

    ましてVOX前掲記事によれば、エスパー氏は対中強硬派であり、また米国が中国に軍事的優位を失っている現状を憂いていて、軍事予算は増やす方向で考える可能性が高いという。

    そのように考えると対中国ということだけを考える時、今回の人事は決して少なくとも日本に取って悪い人事ではない。またシャナハン氏はボーイングの重役だったが、Foreign Policy前掲記事によれば、エスパー氏も軍を引退してからトランプ政権の陸軍長官になるまで、ボーイング同様アメリカ最大のハイテク軍事会社レイテオンの副社長だった(そのため国防長官になってもレイテオン社関係の業務には携われないという)。彼に代わって陸軍長官になるマッカーシ氏も元軍人だが2011年からは、やはり軍事産業大手ロッキード・マーチンで働いていた。

    こうして見ると多くの“代行”がいることもあり、トランプ大統領が今までのワシントンの官僚政治とは違う、ビジネスの感覚に基づいた政治を行う余地は、まだまだあると思われる。

    特にトランプ氏は大統領になる前から、アフガン等に展開する米国正規軍を民間軍事会社に交代させることで、アメリカの軍事負担軽減を考えていた。しかし元国防長官マティス氏を含む既存の軍官僚が、自分達の利権を脅かされることを恐れて反対していた。そこでシャナハン氏が代わって任命された経緯がある。それを考えても元制服軍人のエスパー氏が今後(トランプ氏が再選されたとして)6年間ずっと国防長官でいる可能性は高くないと私見では思う。トランプ氏が再選された辺りでシャナハン氏同様の民間出身の人物に国防長官交代はあるのではないか?

    何れにしてもワシントン・ポストの前掲記事によれば、エスパー氏は“初仕事”(?)としてイラン問題に関して話し合うために6月24日にNATO本部を訪問する。こうして同盟国との協力関係を高めることこそが、イランの脅威を低めるために重要であると同紙は専門家の言葉を引用して主張している。

    そしてWSJが6月21日に配信した“Trump Wanted a More Docile Iran but Got the Opposite”によれば、国務省でイラン問題を担当するフック氏も同じ頃から欧州諸国を歴訪し、アメリカへの協力を求める予定である。しかし同記事によれば、フック氏もトランプ政権のイランへの圧力政策こそが、イランの脅威除去のためには最も効果的であると確信しているという。

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    (引用元: https://video.foxnews.com/v/6050714714001/#sp=show-clips )

     そしてFOXが6月21日に配信した“Scarborough on Iran strikes being called off: Trump loves to ‘insult, bully and threaten’ and then pull back”でも専門家の言葉として、トランプ氏の軍事攻撃を思いとどまったことを情報開示して相手を威嚇するような交渉術こそが、むしろ今の混乱した中東情勢等には適しているのではないかと述べている。いわゆるトランプ氏の“混沌戦略”である。

    そのためかワシントン・タイムスが6月24日に配信した“Trump slaps fresh sanctions on Iran after drone attack”によれば、この日トランプ大統領はイランの最高指導者達の在米資産を凍結するといった新しいイラン制裁を発表すると同時に、ポンペオ国務長官も中東を歴訪させ、ポンペオ氏は同日、既にサウジとUAEの指導者との間で、ペルシャ湾での航海の自由を守るための協力に関して合意したという。やはりイランを封じ込めて核開発や国際テロ支援を断念させるには、アメリカの力だけでは十分ではないのである。

    私見だが、これらの国際的団結が何らかの形で強化されたとしたら、イラン戦争が起こる可能性もあると思う。アメリカの目的は実はイランから核を取り上げるだけではなく、国際テロ支援をやめさせることにあり、そのためには今のイラン政府の打倒までが必要な可能性は低くない。テロ支援は核開発よりも安価なので経済制裁だけでは難しい。

    特にイランと地理的に近くイランのテロ支援に悩まされているサウジとの連携は非常に重要だろう。拙著『救世主トランプー“世界の終末”は起こるか?』(近代消防社刊)で予測したように。

    そしてワシントン・タイムス同記事では、トランプ大統領は米国は中東石油に依存していないにも関わらず、日本を含む幾つかの国は、ペルシャ湾経由の石油に6割から9割も依存していて、しかもペルシャ湾の航行の自由は、アメリカが全て引き受けている。これは問題あるので、これらの国々は自国の船は自国で守るようにするべきだとツイッターで発言したという。これはNATO諸国に軍事費GDP比2%条項を守らせようとするのと同じ発想である。

    どうやら日本が、いわゆる“安保タダ乗り”が出来る時代は、終わりつつあるようだ。ペルシャ湾でのタンカー防衛も、サウジ等と協力して行わなければならなくなるかも知れない。そして私見だがトランプ氏が再選されれば(されると思うが)2期目には日米安保の破棄とは言わないまでも大幅な見直しが要求される可能性があるように思う。これも従来のワシントンの官僚政治では、アメリカ側も対処が難しい状況かも知れない。

    それを考えても今後もトランプ政権では頻繁な閣僚交代がある可能性があるが、それは悪いことではない。その時の状況に適した人材を使いこなすトランプ流の政治なのである。シャナハン氏がボルトン寄り過ぎてNSC内のバランスが崩れたらエスパー氏と交代させ、しかし宇宙軍創設は続けさせたように。

    これは硬直した既存の官僚型政治より複雑化した現代世界にマッチしていることは確かなように私見では思う。そして仮に日米安保見直し論が本格的に出て来るようなら、日本も見習った方が良い行き方ではないかと思う。特に日米安保見直しを担当しそうな民間出身の人物に国防長官が交代することがあれば、その時が日本も覚悟を決めるタイミングなのではないだろうか?

    追記:以上の文章を投稿した直後にブルームバーグが報道した”Trump Muses Privately About Ending Postwar Japan Defense Pact”によれば、トランプ大統領は日米安保の所謂「片務性」に関して不満であり、日米安保を解消することを検討していると私的な側近に話したそうである。同記事によれば、ブッシュ一世が2002年に国会議員の同意なしに対弾道ミサイル条約から撤退した例を上げて、アメリカ大統領は一存で議会の承認なく条約等を破棄できる可能性に言及している。そして基地移転に関する更なる日本側の負担や、安倍総理の指導力によって増強された自衛隊の武力を考えてもNATO諸国と同じGDP2%の軍事費を、日本に要求するべきと、トランプ氏は私的に発言したらしい。アメリカが日米安保を完全に放棄した場合、南アジアから中東そしてアフリカ大陸東岸にまで及ぶ米軍のロジスティックに支障を来す。従って私も旧知のヘリテージ財団主任研究員ジム・カラファーノによっても、この”日米安保”は、アメリカのアジア戦略の「礎」なのである。

     しかし上記のようなペルシャ湾情勢に関するトランプ氏の発言を見ても、そして彼の2016年予備選挙中の発言を見ても、トランプ氏の日米安保見直しの意向は、とても深く固いものなのではないかとも思われる。単なる私的雑談ではない。2020年から2024年までの間に、アメリカが日米安保の見直しに本気で取り組んで来ることを、われわれ日本人は覚悟するべきだろう。その前後に憲法を改正して強大な軍事力を持つことが出来なければ、われわれ日本人は世界の中で生きて行けなくなると考えるべきだろう。

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