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10歳ユーチュ―バーの「自由登校」が大炎上

自由の意味をはき違えていませんか?

 ここ最近ネット上を賑わせている話題があります。渦中の人物は、10歳のユーチュ―バー「少年革命家 ゆたぽん」こと中村逞珂さん。琉球新報の新聞に掲載され、Yahooニュースにも転載されたことで、ネット上では逞珂さんの発言や、それに賛同する著名人のツイートについて賛否両論意見が飛び交い、大きな話題を呼んでいます。

ロボットになりたくない、だから学校には行かないという選択

 逞珂さんは大阪生まれで、現在は沖縄に在住しており、不登校の子や親を励ますメッセ―ジを込めて、ユーチューブで動画を配信しています。小学校3年生の時から不登校になった逞珂さん。宿題提出を拒否した際、放課後や休み時間にさせられ、担任の言うことに従う同級生がロボットに見えてしまい、このままでは自分までロボットになってしまうと思ったことがきっかけでした。そこから学校に通わないことを決意し、現在は学校には行きたい時に行っているということです。

 ユーチューバーとして活動している逞珂さんのもとへ、不登校だったり、大きな悩みを抱えている子供達から相談が寄せられることもあるといいます。中には「死にたい」という相談ごともあり、そういう時には「死ぬことも苦しむこともない、学校へ行かなくても良い」と言って、寄り添っているようです。ユーチュ―バーとしてだけでなく、インターネットラジオ「ゆめのたね放送局」の最年少パーソナリティーにも就任し、苦しんでいる子供達に向けて、メッセージを発信しています。

 不登校になる子供は現代では珍しくありませんが、前向きに捉え、ユーチュ―バーとして活動している子供は逞珂さんぐらいではないでしょうか。それほど親が不登校を肯定的に捉えているということなのでしょう。実際、逞珂さんの父親は、逞珂さんの自由登校がわがままだという批判の声に対して、「これが本当にわがままなのか。自分の気持ちに従って生きる事の何がいけないのか。誰にも迷惑をかけていないじゃないか」と自身のブログで反論の声を上げています。

 また、宿題はするべき、宿題をしないとロクな大人にならないという批判に対して、「その人がそう思い込んでいるだけで何の根拠もありません。実はアメリカの調査結果でも『宿題は学力向上に効果なし』という衝撃的な結果が出ています。もちろんこれも『宿題をしたい』と言う子にはさせてあげればいいと思います。でも宿題をしたくない子どもに強要する権利が学校や親にあるのでしょうか?」と反論し、続けて自身の考えを綴っています。

 「与えられた課題をこなすだけじゃなく、自分で何を学ぶかを自分で選ぶ事の方が大切だと僕は思う。だから僕は学校に行かなくても子どもたちの可能性に目を向ければ、子どもたちは自ら学ぶべき事を学ぶべきタイミングで自ら学んでいくと信じています」

 父親として子供が自ら学べる環境としてユーチュ―ブを勧め、応援しているということなのでしょう。一見親として理解があるように見えますが、ネット上では、親が子供を金儲けに利用しているだけだ、子供は親の操り人形になっているだけじゃないかという意見もあります。逞珂さん自身が親の言う通りにやっているとは言っていないので真偽は定かではありません。ただの邪推であり、誹謗中傷とも捉えられますが、世間の目としてはそのように見えてしまうこともあるでしょう。

ネット上の擁護と批判の嵐。義務教育は選択可能か?

 ネット上では逞珂さんの自由登校について、様々な意見が飛び交っています。以下のように逞珂さんの選択を肯定し、ユーチュ―バーとしての活躍を応援している擁護の声も上がっています。

 「正直、私は自分の子が不登校になった経験があるので、この子凄いなとは思う。ただの現実逃避か天下の鬼才か今は誰にも解らない」

 「義務教育の『子供に教育を受けさせる義務』は、『子供を学校に行かせる義務』じゃない」

 「賢い子だ。頑張れ、10歳のユーチュ―バー。自分の意見を堂々と表明し、行動・発信できる力は、社畜の才能よりはるかに優れる」

 「あなたは あなたの自由に生きればいい ただ なにかに挫折 失敗した時 他人のせいには けしてしないで下さい あなたが選んだ道なら尚更」

 「私は、個性的な彼しかできない活動を、ぜひ頑張ってほしいと思います。 新しい価値観を作ってくれるかもしれません。 もし、長い人生の中で『あの時勉強しておけば』と思う時は、たくさんの必要な学び直しをするかもしれません。でも、宿題はきっちりした方が良いと思うけど」

 一方で、義務教育の必要性や、同年代とコミュニケーションを取る必要性を訴え、将来苦労するかもしれないという心配の声が上がっています。

 「宿題が嫌で小学校から不登校?子供に教育を受けさせるのは国民の義務です」

 「『学校に行かないのも自由』と言いたいのでしょうけど、それって『ただ嫌な事から逃げてるだけ』では? 『幸せかどうか』と『学ぶ事をするかしないか』は別問題」

 「そりゃ愛しかない家庭にいれば幸せだよね。私も仕事行きたくないけど、学校には毎日行くもんだって学んだから。社会人になったら苦労するだろうな」

 「学校に行って横並びの友達と築いて行く事から学ぶことの方が子供にとっては重要だと思う。仲間達と笑いながら馬鹿をやる事の大切さ。世代の違う人とのコミュニケーションではどれ程生まれるのか? 学校というコミュニティから築いた基礎は大切」

責任のない自由は、本当の自由ではない

 逞珂さんの記事や賛否の意見を見ていくと、そもそも義務教育とは何か、自由とは何かという考え方の違いが根本にあることが分かります。逞珂さんが不登校になった原因は、いじめでも、担任や親など周囲の大人からの圧力でもありません。宿題をなぜしなければいけないのか。その疑問にぶつかり、十分な回答が得られないまま、担任に宿題を押し付けられ、意味が分からないことをただ言われるままにやることはロボットと同じだ、自分はそうなりたくないという意思から、学校に行かないことを決めたと言います。

 それをただ肯定する親、宿題の意味や、義務教育の意味を逞珂さんが理解できるまで向き合って教えなかった担任に大きな責任があると思います。「なぜ」と疑問に思うことは、人が成長していく過程では必要なことです。その時に大人がきちんと教えてあげないと、よく理解できないことを無理して理解しなくてもいい、やりたくないことはやらなくてもいいと、深く考えることができなくなります。大人が一から十まで教えてあげる必要はありません。子供が自ら考えるよう誘導して、自ら答えを導くことが大切だと思います。逞珂さんはもしかしたら、自ら考え、その結果、宿題はしなくてもいい、学校に通わなくてもユーチュ―バーとしてもっと広い世間で学べばいいという結論に至ったかもしれません。周囲の大人がその結論を尊重して、学校に行かなくても良い、自由に登校すればいいと何の批判もなく肯定するのは、子供の成長にとって良いことではないでしょう。

 小学校中学年、高学年になると、ひとりの人間として自ら考え、自分は他人とは違うという「自我」を確立させる年齢です。私も覚えがあります。学校や世間はちょっとでもルールや常識とずれたことをする人間には厳しい目を向け、皆と同じ枠内に押しとどめようとします。理由も分からずそれに従うのは苦しく、従えないことを責められると、自我を全否定されたように感じられ、皆と同じ空間にいるのが耐えられなくなり、不登校になったり、あるいは皆と違う行動を取って、自我を保とうとしたりします。そうして自我を確立させていくので、人間の成長にとっては欠かせない過程だと思います。その時に、親や教師がその子の自我を、自らの狭い価値観を押し付け、抑圧してしまうのは成長の妨げとなります。子供の意思をまず尊重することは大切です。しかし、ただ尊重するだけでは、自由の意味をはき違えることになりかねません。

 逞珂さんの場合、自由登校、不登校は自由な選択のひとつだとしていますが、本来の自由は責任やある程度のルールがある上で成り立つものです。憲法でも国民の自由は守られていますが、憲法というルールがなければ、何をしても良いということになり、人を傷つけても、殺しても罰せられず、平和な国には程遠いものになります。逞珂さんは、子どもだけが乗れるピースボートで世界中に友達をつくり、戦争をなくすことが夢だとしていますが、義務教育というルールを守らず、学校は行かなくても良い、宿題はしなくてもいいと独自の自由を貫き、自由の本来の意味を知らないままではその夢を成すことは難しいでしょう。

 また、同じく不登校の子供達の相談に対して学校に行かなくても良いと伝えているようですが、学校での経験なく社会に出て行くのは相当な気力と勇気が必要です。まだ10歳の子供には分からない社会の厳しさは、学校経験のある人より何倍も大変に感じることでしょう。目の前の辛いことから逃げることも必要なことだと思います。しかし、逃げた先のことも考えて選択しなければ、学校に行かないことが幸せにつながるとは言い切れません。苦しまないでいい、一度逃げてしまえばいいと伝えることは良いと思いますが、ただ逃げないでその後の人生をしっかり考えて行動してほしいとも伝えてもらいたいものです。10歳とはいえ、安易に不登校を肯定する発言は危ういものがあります。自身の発言に責任が持てるのか、本人だけでなく、親や周囲の大人も一緒に考えてほしいです。

 何故、宿題をするのか、何故、学校に通うのか、疑問に思ったことは素晴らしいと思います。そこから自ら考え、答えを見つけ、自身の将来についてもしっかり考慮した上で、自由登校の是非を判断してもらいたいです。親も自身の苦い経験や、社会の生きにくさなど、ネガティブな方面の話を子供に伝え、このままユーチュ―バーとしてどのように生き抜いていくのか、将来のことについて話し合って答えを出してほしいと思います。

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