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  • 乾 一宇
    乾 一宇
    元防衛研究所研究室長
    茅原 郁生
    茅原 郁生
    中国安全保障
    濱口 和久
    濱口 和久
    防衛レーダー
    高永喆
    高永喆
    拓殖大学客員研究員
    新田 容子
    新田 容子
    サイバー安全保障
    岡田 真理
    岡田 真理
    フリーライター
    杉山 蕃
    杉山 蕃
    元統幕議長
    竹田 五郎
    竹田 五郎
    元統幕議長
    田村 重信
    田村 重信
    元自民党政務調査会審議役
    吉川 圭一
    吉川 圭一
    グローバル・イッシューズ総合研究所代表

    核戦争は発生しない

    ■核兵器で脅す

     ロシアはアメリカのミサイル防衛システムを突破する超音速兵器を宣伝。さらに海中を原子力推進で敵国の港湾に接近して、核爆発で破壊する兵器の存在も宣伝した。ロシアは明らかに核兵器でアメリカを脅したのだが、脅されたアメリカはロシアを無視している。

     北朝鮮・中国も核攻撃を示唆するがアメリカの反応は鈍い。これは冷戦期とは異なり、核兵器の価値が低下していることを示している。 

    ■核兵器の区分

     核兵器には戦略核・戦域核・戦術核に区分されている。これは攻撃目標に合わせており、運用から核弾頭の核威力や射程距離が選ばれている。

    核兵器の区分
    戦略核:敵国本土・核基地と市民が目標
    戦域核:戦域・軍事基地が目標
    戦術核:戦場・軍隊が目標

     冷戦期の核保有国は戦争で核兵器を使うことを前提としていた。だが核兵器の破壊力よりも残留放射能が問題視された。戦争では土地を占領してこそ勝利が得られるので、放射能で汚染された土地を占領するのは困難。仮に占領しても放射能で汚染された土地の利用は難しい。

     そこで核威力を小さくして汚染地帯を限定すれば、核兵器を戦争で使えると考えた。その結果として核兵器の区分が生まれている。初期段階は戦略核だけだったが、技術の進歩で戦術核が生まれた。政治の取引材料として生まれたのが戦域核だが、冷戦期の核保有国は試行錯誤の末、無意味なことをしていた。

    ■使えない兵器

     冷戦期の核保有国は敵国本土攻撃と敵軍撃破を目的としていた。だが研究を続けると両軍が使えない土地を作るだけだと気付く。

     「核爆発を受けた戦場は大規模な破壊・火災と残留放射能による障害地帯になる。この戦場で戦闘を続けるには地形踏破機動力と放射能防護力が不可欠である。それに欠ければ戦術核は使えない」(トルーマン論文/英ブラッセイ年鑑)

     核威力の小さい戦術核を用いても汚染地帯は発生する。戦車・装甲車は走破性も高く汚染地帯でも走行可能。問題なのは補給を行うトラック。輸送用トラックには放射能に対する防護装置が付いておらず、しかも瓦礫の山では走行が困難。

     戦闘部隊は移動できても補給部隊は移動できなかった。補給部隊に走破性を与え、放射能対策をすることもできた。問題なのは予算。実行可能でも装備を与えれば予算不足になる。その結果、核保有国は戦闘部隊が核戦争でも戦闘可能だと宣伝した。これは威勢良く見せ付けて、実際は戦闘不能であることを隠すためだった。

    ■戦争に使えない

     通常兵器を用いた攻撃では海外に展開する軍隊・基地への攻撃は、敵国本土への攻撃と同じ価値になる。通常兵器を用いた攻撃でも敵国と交戦することは変わらない。理由は海外に展開する軍隊・基地は国家主権そのもの。だから軍隊・基地への攻撃は国家主権への攻撃になっている。

     この概念が核兵器にも適用されるのは自然の流れ。核兵器は戦略核・戦域核・戦術核に区分された。だが海外に展開する基地を核攻撃すると、結果的に敵国本土を核攻撃することになる。仮に中国・北朝鮮などが在日米軍基地を核攻撃すれば、それはアメリカ本土への核攻撃と見なされる。

     戦術核でアメリカ軍を攻撃すれば、戦略核でアメリカの首都を攻撃する価値と同じ。戦域核で在日米軍基地を攻撃すれば、戦略核でアメリカの首都を攻撃する価値と同じ。戦術核だとしても結果的には戦略核と同じ価値になる。これでは自国も核兵器で報復を受けるので、戦争は勝利のない共倒れの戦争になる。

    ■冷戦の結果

     冷戦期は、戦術核は戦争に使えると思われた。だから何としても戦術核を戦争に使う目的で研究が行われた。だが核保有国は戦術核と戦域核の分離ができなかった。通常兵器を用いた攻撃でも、敵軍・基地を攻撃すれば敵国本土への攻撃と同じ意味になる。ならば戦術核も敵国本土への攻撃と同じ。

     この現実が国際社会だから、戦術核と戦略核を分離することは無意味だった。核保有国が研究して行き着いた先は、「核兵器は戦争で使えない兵器」。冷戦後の核兵器は、戦争用ではなく政治用の恫喝兵器が役割になっている。

    ■ロシアも同じ

     ロシアは原子力推進の魚雷型核兵器を宣伝した。原子力推進だからアメリカの海岸部を全て攻撃可能。しかも撃沈が困難だからアメリカ軍は不利のはず。だがアメリカは危機感を持っていない。

     原子力推進の巨大な魚雷だとしても、日々のメンテナンスは必要。このメンテナンスは経済的な負担で、核保有国は核弾道ミサイル・原子力推進のメンテナンスに苦しんだ。ロシア海軍が実戦配備して数を増やすことは、自ら経済苦を選ぶことになる。

     戦争で使うまで待機状態でもメンテナンスで金を消費する。これが核兵器の現実だから、容易には実戦配備できないのが現実。だからロシアは、政治的な恫喝として見せ付けているだけ。

     それに仮にアメリカ沿岸部を攻撃すれば、それはアメリカ本土への攻撃を意味する。そうなればアメリカの報復があるので、ロシアは自殺覚悟でなければ使えない。

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