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芸能人逮捕、ただ“お蔵入り・カット”すればいいのだろうか

 芸能界をはじめとして公人の薬物使用で逮捕されるニュースが近年過熱報道される傾向にあります。最近では、ミュージシャンで俳優のピエール瀧容疑者がコカインを使用したとして逮捕され、各局のニュースや報道番組で連日取り上げられました。薬物を使用して逮捕されたことを受け、同容疑者が出演していた映画やドラマがお蔵入りになったり、現在出演している放送中のドラマでは本人が映っているシーンがカットされたりしています。必要以上にメディアが過敏になっているような気がするのは私だけではないようで、ネット上では賛否両論意見が上がっています。

やりすぎな自粛に賛否両論

 ピエール瀧容疑者は過去にNHKの朝ドラや大河ドラマにも数多く出演しており、NHKはオンデマンドで、出演作の配信を当面停止すると発表しました。現在放送中の「いだてん」では、出演シーンをカットして放送し、代役を立てて放送が続けられることに。このような自粛の対応を受け、過去の出演作品を見られなくする必要があるのかという疑問の声がNHKにも多く寄せられたとか。NHKとしては、反社会的な行為を容認する取り扱いはしないと定めた国内番組基準に沿って、容疑の内容や視聴者に与える影響などを判断した結果だと答えていました。公共放送としての立場上ということなので、ルールに従わざるを得ないことは理解できます。しかし、NHKだけではなく、民放でも同じくネットの動画配信サービスで過去の出演作品を配信停止にしています。民放もルールで縛られているからなのか、あるいは視聴者からのクレームが入るのを恐れてか、画面に映すのを悪と捉えているような印象を受けます。

 また、ピエール瀧容疑者が所属しているバンド「電気グルーヴ」に関連した商品が出荷停止状態になったことに対して、音楽家の坂本龍一さんがツイッターで苦言を呈していました。「ドラッグを使用した人間の作った音楽は聴きたくないという人は、ただ聴かなければいいだけなんだから。音楽に罪はない」という坂本さんの意見に対しても賛否両論あります。薬物に手を出した本人以外にも多大な迷惑がかかるということを示すためのこととも捉えられますが、本人以外の関係者たちからすれば営業妨害であり、ファンからすればすでに販売されている商品にまで手を出すなと憤りたくもなるでしょう。

 マルチに活躍していただけに打撃や波紋は大きく、ピエール瀧容疑者に関する大抵の作品は自粛されています。ネット上では「作品の放送、配信自粛には反対」という声と、「作品の放送、配信自粛をするべき」という声が上がっています。

 前者の意見としては、

 「脇役の俳優が逮捕されるたびに、作品自体をお蔵入りするのはおかしい」
 「作品に罪はないので、テレビでの放送はともかく、個人が映画館で出演作品を観たり、DVDで視聴したりすることまで規制する必要はない」
 「音楽に罪はない。何のための自粛なのか分からない」
 「犯罪は良くないが、『電気グルーヴ』の曲を聞いた人が薬物したくなるわけではない」
 「直接的な被害者がいないのにここまで自粛するのはやりすぎだ」

など、作品に罪はないのに自粛するのはおかしい、作品に触れる自由を奪ってほしくないという声がありました。

 一方、後者の意見としては、

 「作品にその俳優が出演していると、どうしても事件のことを考えてしまう」
 「どうしても作品を放送することが無理な場合もあるから理解できる」
 「罪を犯して逮捕されたのであれば倫理的に考えて放送中止、販売中止にするのは当然のことだ」
 「逮捕された俳優の出演している作品を見るのは抵抗があるから賛成」

など、容疑者となって逮捕された人の出演作を自粛するのは当然のことだから理解できるという声が上がっています。

ファンの声を無視してまで、やるべきことなのか

 犯罪者としての印象は良くないことは当然なので、印象を第一にしているCMから下ろされ、放送中止になるのは理解できます。CMはスポンサーのものなのでスポンサーの自由にしてもいい領域でしょう。しかし、出演作品や、所属している音楽グループの曲などは制作側だけのものではありません。既に販売、配信されている作品は観る側、聴く側のためのものではないのでしょうか。倫理的に受け入れられない、事件の事を思い出してしまう人もいるかもしれませんが、今回の場合は被害者のいない犯罪で、公には誰か傷つけられた人がいたことは明かされていません。消費者側に配慮して自粛する必要はそれほど感じられません。自粛の背景には制作側の体面や、犯罪に対する姿勢を見せるためのパフォーマンスがあるように感じられます。特に今回の件はそれが顕著なせいか、消費者側がやりすぎだと感じているのでしょう。

 薬物に対してメディアの反応はとても敏感だと近年感じさせられます。確かに薬物は軽い罪ではないので、公人として活躍している人が逮捕されれば大きな波紋を呼びます。公人でなくとも先日、中学3年生の女子が大麻所持の疑いで逮捕されていたことが明らかになったというニュースが発表されました。未成年が手軽に薬物を手に入れられる時代で、薬物は身近に潜んでいることを改めて実感させられました。

 電気グルーヴの作品の配信停止、在庫回収に対しては、方針撤回を求めるオンライン署名が行われています。ファンの気持ちよりも制作、販売側のとりあえず自粛しておこうという安易な姿勢をファンは見抜いており、誰のためにもならない不毛なことはやめてほしいとして署名活動は広まっています。

 ファンも多く、多才だったが故にピエール瀧容疑者の逮捕は残念でなりませんが、坂本龍一さんの言うように作品に罪はありません。また、その作品は罪を犯した人のものではありません。倫理的な姿勢を見せて、臭い物に蓋をするように過去の作品を扱ったところで薬物に対する意識が変わるわけではありません。薬物に手を出したことは批判されても、その人が出演していた作品まで同じ扱いを受けるのは不当に思えます。今後、集まった署名によってどのように変化していくのか分かりませんが、ファンの声を無視してまで続けることに意義があるのか考えてもらいたいものです。

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