ワシントン・タイムズ・ジャパン
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「それぞれの家庭が、小さな世界だな」

 近藤麻理恵さんは「KONMARI」という愛称で、今や世界中の人々をかなり夢中にさせているようです。

 近藤さんは自称「片づけコンサルタント」。2010年に出版された『人生がときめく片づけの魔法』がミリオンセラーになったので、ご存知の方も多いでしょう。

 私が最近になって改めて「KONMARI」の名前を聞くようになったのは、世界的定額映像配信サービス(「NETFLIX」)が彼女を採用して片づけのリアルドラマを配信し始めたからです。

 舞台はアメリカ。取り敢えずシーズン1は8話。色々な家庭を近藤さんが訪ねて、片づけの指導をする。

 リアルドラマですから、シナリオはない。ところが、家庭ごとに独特のドラマが生まれるのです。これがなかなか面白い。

 アメリカの家庭は(今や日本もさほど劣らないかも知れない)家の中に大量の「モノ」が溢れています。

 近藤さんは訪ねるとまず、「家に挨拶しましょう」と言って、家族の人と一緒に跪いて黙想する。

 これだけで家族の気持ちは、神妙なものになります。その後、家じゅうの「モノ」を全部出して集めさせる。ある家庭では、服だけで人の背丈を超える砂山ほどの塊になる。

 「私の家にはこれほどのものが詰まっていたのか」と言う事実を、目の当たりにさせるのが目的です。

 そして、その山の一つ一つを選別させる。

 選別の最優先基準が「ときめくか、ときめかないか」というものです。

 大体、6週間から2カ月くらいかけて、食堂から居間からガレージまで、片づけの指導をする。プロが指導するのですから、大抵は見違えるようにすっきりする。

 しかしこれはまあ当然のことですから、ドラマにはならない。本当のドラマは、片づけのプロセスで起こる家族それぞれの内面的な変化なのです。

 ある夫婦は、お互いの気持ちがやや冷めていた。ところが、家じゅうのものを片づけるために、お互いの考えを確かめ合い、相談するうちに、とても気持ちが近づくのです。家の中がきれいになっていくと、気分も変わり、夫の態度がとても柔らかくなる。その夫から、妻は昔のような愛情を感じる。

 「家の中をきれいにしようと思っていただけなのに、この変化は一体何なの?」という、思いもかけない驚きと喜びが生まれる。

 こういうドラマが、リアルであるだけに面白いのです。

 いくつもの家庭を観ながら、「それぞれの家庭が、小さな世界だな」と思いました。

 数名の人によって作られる家庭は、世界に数十億とあるでしょうが、その一つ一つが世界のミニチュアです。小さな世界の中は、片づけきれない「モノ」で溢れている。雑然として無秩序状態なのです。

 ところが、その一つの家庭を一念発起して片づける。それは取るに足りない小さなことのように見えながら、その実、世界全体の雑然と無秩序を解決しているという、実に大きな仕事ではないか。そういう感慨が湧いてくるのです。

 例えば、自分が住む町を一望するだけでも、そこには即座には数えきれないほどの家やビルが立ち並んでいます。遠目には見えないが、細かに観察すれば、それぞれの家には母屋もあれば庭もある。

 母屋の中はどのように「モノ」が秩序正しく整理され、大切に扱われているか。庭には季節の花々、優しく剪定された庭木などが、家族の目を楽しませてくれているか。その一つ一つが整っているのか、雑然としているのかは、集まって、この町の、そして最終的にこの世界の美しさと秩序を形成する。

 我々が家族となって、一つの家を持ち、その中で多種多様の「モノ」と一緒に暮らすということは、とても意味の深い存在のあり方だと、改めて気づかされるのです。

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