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  • 堂本かおる
    堂本かおる
    ニューヨーク在住フリーランスライター
    菊田 均
    菊田 均
    文芸評論家
    松本 健一
    松本 健一
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    小名木 善行
    小名木 善行
    国史啓蒙家
    大島 直行
    大島 直行
    伊達市噴火湾文化研究所長
    時広 真吾
    時広 真吾
    舞台演出家
    渡辺 久義
    渡辺 久義
    京都大学名誉教授

    「介護ができて、とても嬉しい」

     還暦を過ぎた古い友人が時々集まって話すと、最近は決まって介護の話が出る。父母はどこも80代以上、仕方のないことでもあり、お互いに苦労話の競い合いのようになったりするのです。

     今年の正月も集まって、「お正月はどうでしたか?」と水を向けると、一人の婦人が、「大変だった。目が回るほど忙しかった」と、その大変さを話し始める。

     彼女は1年ほど前から実母の介護を続けている。それだけでも大変なのに、正月には4人の子どもたちが順番に帰ってきた。帰ってくるのは嬉しいが、食器も洗わず、布団も上げない。

     「全部自分がやる羽目になったんです」
     そう言いながらも、やはり一番大変なのは母の介護なのです。

     小柄な母ではあっても、自分にも力がないし、腰も悪い。目の前に食事があると勝手に食べ始めて、何度も食器を倒してこぼしたりする。

     「どうして、もう少しきちんと食べてくれないのよ!」
    と言いたくなるし、実際、口に出して言うこともある。

     「母の挙動を見ていると、こちらはイライラしてしようがないんです」
    それでつい、母の扱い方がぞんざいになったりもするというのです。

     その話を聞きながら、私はいつか観たテレビ番組を思い出して、その話をしました。

     ドラマの中で、介護ロボットが出て来るのです。トラックで運搬中に紐が緩んだのか、そのロボットが落ちてしまって、トンネルの中にぽつねんと鎮座しているところへ、おばあさんと若者の2人連れが通りかかる。

     「あんたは何者なのよ?」と聞くと、「私は介護ロボット」と答える。

     介護ロボットが自分で動けず、じっと座っているのが合点がいかず、更に尋ねると、「私は、介護してもらうのが専門の介護ロボットです」と言うのです。

     介護ロボットといえば、普通に考えて、介護の仕事をするためのロボットでしょう。ところが、そのロボットは、「介護してもらうために作られたロボットだ」と言うのですから、これはあまりにもおかしい。

     そんなロボットが何の役に立つのか。ただでさえ、要介護の人が多くて困っているのに、そんなロボットを誰が一体使いたいのか。

     そう思う一方、そのロボットがマツコ・デラックスにそっくりなために(名前が「マツコロイド」)、妙に印象に残ったのです。

     介護の問題を考えると、介護する側の大変さに関心が多く集まるのが普通でしょう。しかし、介護される側の人の気持はどんなものだろうか。それを考えると、介護ロボットの可愛げのない態度が妙にリアルに感じられるのです。

     ロボットなら、介護する人がどんなに大変だろうが、気にもならないでしょう。「私は介護されるために作られたロボットだから、介護してもらって当然」と思っても不思議ではない。

     しかし、人間であれば、そうはいかない。「介護してもらって当然」とは、普通の人の気持ちとしては思えないでしょう。思えないが、現実には体が動かないので、介護してもらうより他にない。

     このような相反する2つの要素に、人間の心は苦しむのです。ロボットならざる人間の要介護者が、ロボットのように「私は介護してもらって当然」と思えるようになれば気が楽でしょうが、そのためには、

    ① 要介護者が介護ロボットのような精神構造になる
    ② 介護者が「私は介護ができてとても嬉しい」と思いながら介護に当たる

    の2つの方法が考えられる。

     こんな話をしながら、「①の方法はお母さんの問題なので、今あなたにできるとすれば②の方法しかないかな」と提案してみたのです。

     婦人は当然、「それはとても難しそうな気がする」と顔を少し曇らせながらも、「でも、私がイライラせず、特に大変だと思わずに介護している時には、お母さんもあまり反発しないような気はするわね」

     実は私の母も、身体的な介護はまだ要らないものの、認知症が日に日に進んでいて、「介護は嬉しい」というのは挑戦し甲斐のある、かなり高いハードルだと心積もりをしているのです。

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