«
»

「女性が動くと、富の運動が起こる」

 社会人類学者、レヴィ・ストロースは、『親族の基本構造』(1949年)の中で、結婚をめぐる人類学上の問題に独創的な視点を提出しています。

 「人間社会では一人の男は女を別の男から受け取るしかなく、男は別の男に女を娘または姉妹というかたちで譲渡するのである。…ほとんどの親族体系において、任意のある世代において女を譲り渡したものと女を受け取ったものの間に発生した始原の不均衡は、後続する世代において行われる反対給付 (contre-prestation) によって相殺されるしかないという事実である」

 例えば、ある世代でA親族の娘をB親族の息子に嫁がせる。すると次の世代かその次くらいには、C親族からA親族へ娘を嫁がせる。それを「反対給付」といい、こういうやり取りによってそれぞれの親族は存続しているというのです。

 「女を譲り渡す」とか「反対給付」などとは、今なら第一級のセクハラ間違いなしです。しかしストロースが、男を「譲渡の主体」、女を「譲渡の対象」と言うとき、対象の価値が主体のそれに比べてはるかに大きいと見做しているのです。しかもその価値は、もちろん金銭で計れるような価値ではなく、もっと本質的な意味を持っています。

 その本質的な意味で、
「女性が動くと、富の運動が起こる」
と表現することができます。

 結婚によって女性は移動する。?実家から嫁ぎ先へ、あるいは生まれ育った町から花婿の待つ他の町へ。その女性の移動に伴って、富の運動がおこる。目に見えるのは、花嫁がある親族から別の親族へ移動していく姿だけでありながら、そのとき社会の深部では、目に見えない何かの力が円環をつくりなす運動を起こし、それが人間の世界に喜びを生み出す。

 結婚による女性の移動が、なぜ、またどんな富を生み出し、喜びを生み出すのか。?それは、女性が単に労働者として移動するからではありません。?女性が唯一、新しい生命を生み出す性であるからです。?それまでこの世に存在しなかった生命を出現させるという離れ業は、女性にしかできません。

 女性は、神がこの天地を「無」から創造した、その立場を模す存在だとも言えます。天地創造前の神の世界を潜在、創造を始めて森羅万象が現れてきた世界を顕在と呼ぶなら、この潜在と顕在との間には、境界線があります。?

 潜在の神には何もないように見えながら、その境界線を越えて何かが顕在の世界に移動すると、無限の万物が出現する。結婚というのは、この潜在と顕在の境界の領域にあるとも言えます。男性と女性とがこの境界線で出会って、潜在の世界から顕在の世界に新しいものを生み出す。その主役が女性です。

 男性の精子という極めて微小なものをもらうだけで、あとはすべて自分の中で養分を供給し、生命体を成長させ、この世界に自律的な独立の存在として生み出す。生み出すときに、苦痛を伴う。そればかりか、時として命さえ落とす危険があります。

 しかも、生み出すだけではない。?女性は新しい生命を、自分のように愛することができる。?だからその生命を、女性はまたとてもこまやかに養育するのです。

 このようにして女性が生み出す富は増え続け、今や地球上だけでも70億以上、あの世に行った生命も含めれば兆を超えそうな膨大な富を形成しています。?資本主義が切に願う経済成長も、基本的にはこの女性が生み出す富の増大によってなされるものでしょう。
 女性が生み出すのは、富だけではない。富とともに、喜びをも生み出すのです。確かに、女性が動くところには何かの力が生まれ、それが波紋のように広がり、単なる生命的な富だけでなく、この世に「喜び」までもたらす。?本当に、神様の創造の妙味をここに見出すしかありません。

 このような女性を、人類は、というか特に男性は、これまでどれほど正当に評価し、敬ってきたのだろうか。大袈裟に思われることを承知で言えば、世界の平和も経済的繁栄も、この女性の本質的な価値を正当に評価するところにかかっているという気がするのです。

 「世界の経済危機は、実は女性が愛されている、大切に思われているということを感じていないことが、その原因なのです。女性の男性に対する恨みや憎しみの大きな『塔』が世界中に立ち始めているのが原因で、世界経済がおかしくなっているのです」
(『豊かに成功するホ・オポノポノ』イハレアカラ・ヒューレン著)

0

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。